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【遠藤 百笑さん】~違和感からの問い直し~

福島県郡山市出身で、現在は兵庫県の尼崎市に住み、NPO法人Co.to.,hanaでコミュニティデザイナーをされている遠藤 百笑さん。
彼女の生き方を語るうえで、避けては通れない「東日本大震災」について感じていること、そしてそこから尼崎に移り、コミュニテイーデザイナーとしてだけではなく、独自企画の「失敗展」を開催するに至ったきっかけなどをインタビューさせていただいた。

~東日本大震災で感じた違和感からコミュニティデザイン学科への進学~

『東日本大震災はあくまで出来事として捉えている』と百笑さんは話す。
そして、『違和感』を感じたともいう。

「今まで当たり前に暮らしていたまちが非難を浴びるようになる。
仲が良かった人同士がいがみ合ったり、行き場のない悲しみや悔しさがあふれていた。
しんどいのに、周りの人のことを考えると、しんどいとは口が裂けても言えなかった。」

モヤモヤとした違和感を抱えたまま、
絵が好きだったこともあり、美大進学のために通っていた画塾で面接練習していた際に、「なぜ絵を描くのか?」と聞かれたときに、率直に答えられなかったそうだ。

「絵で自己表現したいわけでもなければ、何か訴えかけたいメッセージがあるわけでもなくて。私は、私の絵で目の前の人がどんな表情をするのか。何が届くのか。どれだけ幸せにできるのか。ただ、それだけが大事なんだと気づきました。」

個性を発揮した作品を通して、誰かとつながれたり、自分の作品で誰かが笑顔になってくれたらという理由で描いていたという百笑さん。

そんなとき、デザイン系の学科に進んだほうがいいのでは?という先生からの言葉があり、山形にコミュニティデザインが学べる学校(=東北芸術工科大学)があることを知った。この大学なら、震災で感じた違和感に対する答えが見つかるかもしれないと思い、入学したとお話しされていました。

~コミュニティデザインを学び始めて~

次に、コミュニティデザインを学び始めて、震災の時に感じていた違和感を解消できたか。百笑さんに質問してみました。

「コミュニティデザイン学科に入って、違和感を言葉にしていく中で、徐々に自分が見過ごしてきた感情と再会しました。
そこから、どう向き合っていけばいいのかは分からなくって。正直めちゃくちゃしんどかったです。自分にとって「震災」とか「故郷」が、ある種トラウマのような恐怖の記憶になってしまったんです。「大丈夫だよ」と嘘をついて逃げる方がずっと楽でした。でも、そんな私と歩んでくれる仲間や、同じ傷を抱えた地域の人に出会って、少しずつ変わりました。デザインの力に、大きな希望を抱いていました。また、様々なコミュニティや土地の文化に面白さを感じていました。」

コミュニティデザインを学び始めたことで、仲間に出会い、新たな面白さや、時には課題にも直面していった百笑さん。
そんな百笑さんはある人との出会いで自身の生き方が変わったという。

福島から尼崎に移ったきっかけは、藤本 遼さんとの出会いですね。

防災教育を学びたくて、関西にはずっと月1回ペースで通っていました。その頃ずっと「藤本 遼って面白い人が尼崎にいるらしい」というのを知っていました。
でも、なかなか会えずに過ごしていたんです。
そして昨年、「生き方見本市KOBE」があって。KIITOという私がずっとお世話になってなっている場所で開催されると聞いて、私はすごく楽しみにしていたんです。でもそれが台風で延期になっちゃって。藤本さんにも会えると思っていたので、ガックリ。
そこで、それはもう突然に、藤本さんに「会いたい」とメッセージをしましたね。時間を作ってもらって、終電も忘れて、なんか色々話していたのを覚えています。笑」

藤本さんとお話ししている中で、
自身の卒業制作でやっている「失敗展」の活動についても相談していたという百笑さんは、藤本さんに、尼崎で「失敗展」を開催する機会をいただいたという。
尼崎での「失敗展」開催前夜には、尼崎の銭湯でトークイベントも開き、失敗展当日には、総勢200名近くが来てくれて、本当に楽しかったと笑顔で話されていました。

「藤本さんに、尼崎の面白い人たちや活動に繋いでいただいて、たくさんの出会いがありました。その後、いろんな出来事を経て、東京への就職を辞めて、関西で生きていこうと決意しました。仕事も決まらないまま、尼崎への移住を決めたんです。」

~東日本大震災を経験した私が伝える防災について~

東日本大震災を経験し、防災を学びたくて関西を訪れた百笑さん。

「神戸は特に、阪神淡路大震災が起きた後に、被災地支援や、心のケア、高齢者支援のためのNPO法人が多く立ち上がった。それは、「ないものは自分たちで作ろう」という関西人の気質なのかもしれません。」

続けて、関西で豪雨災害があった時に自分の無力さに気づいたという。

「災害が起きてしまってからは、現地にいなければ何もできない。だから、災害が起きる前に、自分のことを守るために、大切な人を守るために、そして、自分のことを大切にしてくれている人を守るために、防災を届けたい、伝えたいと思っています。」

百笑さんは、学生の頃にプラス・アーツという団体にも参画。
そこでは、楽しく防災を学ぶ取り組みがなされていて、防災イベントをどこでも開催できるようマニュアル化したり、防災の教材やゲーム開発をしているそう。百笑さんはそのマニュアル作成やゲーム開発に携わった。
キャンプやお祭りで多様な人を巻き込み、楽しめるような仕組みを作って、中にはそこから防災に興味を持ち防災士の資格を取る人もいるという。

「自分にとって大切な人には特に積極的に巻き込むようにしていて、最近は贈り物としてよく防災グッズを選びます。防災について学んできた私が選ぶ防災グッズ。これを贈ることで、災害が起きても、ひとまずは大丈夫だろう、と思えます。命の安全を確約してくれるものじゃないですが、この「ひとまず」がとても大事で、「誰かのため」が巡り巡って自分のためになるんです。」

防災について、「静岡」はどうだろうか。
「東海地震」が数年以内に来ると小学生のときからずっと言われ続けているが、学校で行っている防災教育や地域の防災訓練は、“防災”の役割を十分果たしているのだろうか。まだまだ防災に対する意識が低く、「災害が起きてからこうしておけばよかったと後悔することを減らしたい。そのために、自分ができることは何か?」と百笑さんのお話から考えてしまった。

~自身の違和感から開催した「失敗展」~

先ほどの藤本さんとのエピソードで出てきた、「失敗展」が開催されたきっかけやそこに込められた思いを聞いてみました。

「私、失敗することが怖かったんです。でも、完全に失敗を防ぐことは無理で。その時に、失敗を怖がるのはもったいないなと思ったんです。また、世の中でいう失敗には、女だからこうでなければいけないよね、先生だからこうしてはいけないよね、という縛りから生まれる失敗もあって、それは本当に「失敗」なのか?と考えるようになったり。
失敗ってそもそも何かって、個人や環境によって認識が異なるものなんです。
だから、まずは一人ひとりが思う「失敗」を見つめ直しながら、失敗を肯定して、価値観や体験談を共有しあえる場をつくりました。」

失敗と聞くと、多くの人がマイナス目線で考えてしまうが、失敗展ではその負の部分も含めて失敗を肯定する。
違和感から様々な事象を問い直すことに長けている百笑さんにしかできないのがこの「失敗展」なのかもしれない。

~あなたにとって、問い直すとは?問い直したいテーマは?~

最後に、百笑さんにとって、
今回の生き方見本市SHIZUOKAのテーマである「問い直す」に対するイメージは?

「私にとって、「問い直す」は、過去を今に融合していくようなイメージです。
既存のものに改めて目を向けて「当たり前」に気づく。そして今、自己と向き合い、本当に大切なもの、大切にしたいものを見つけるための行動かなと。機会や場がないと「問い直す」ってあまりしないから、その立ち止まる時間はすごく貴重なものだと思います。」

なるほど!
今、ご自身が問い直したいテーマはありますか?

「今までも、これからも、私は自分の「違和感」を問い直せる人でありたいなと思っています。震災の時に、すっかり自分の気持ちに嘘をつく癖がついちゃって。だから今度は、ちゃんと立ち止まって自分のことを考える癖をつけようかなあって。そしたらプラマイゼロで、ハッピーじゃないですか。笑
私にとって大切な人を大切にするために、私は私のためにも生きていこうと、そんな風に思っています。」

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インタビューを終えて。

「違和感」を感じたとしても、その違和感を見逃してしまう人は多いと思う。
私もこの生き方見本市に出会うまでは、その一人だった。

地域で暮らしていく中で、そして生きていく中で人は多くの違和感に出会う。
その違和感を素通しても十分生活はできると思う。
けれど、五感で感じた違和感を一度立ち止まって考えることが、”自分らしい人生”を作り上げていく一要素ではないだろうか。

私は今、組織に属して仕事をすることが否定されつつある風潮に違和感を感じている。
個人の名前で生きていくといった言葉やフリーランス(個人事業主)という職業をイベントで多く聞いてきたし、私が過去に参加したトークイベントの登壇者がすべてフリーランスだったこともある。
そこにフリーランスが嫌いという感情は全くないものの、組織に属している人間を否定されているのではないかと変な気持ちになることがあるのだ。

感じた違和感をそのままにしていても、何も進まないと痛感してきた。
「違和感」から問い直すことで、人は少しずつ自分が実現したい世界・生き方に近づくことができるのではないか。笑顔が素敵な百笑さんとのインタビューでそう強く思いました。

遠藤 百笑さんのお話をぜひ聞きたい方は、

10/19(土)の生き方見本市 SHIZUOKAへぜひいらしてください!!

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