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当時のIT業界のご多分に漏れず、労働時間はとても長かったです。深夜残業はあたりまえで、夜中にタクシーで帰宅することもしばしばでした。週末もよく働きました。それでもイヤイヤやらされている感じはなく、仕事が好きでした。

今振り返ってみれば、仕事が好きだった理由は、会社から与えられた仕事が、当時の私の個人的な願望を叶えてくれていたからです。

具体的には、
①経済的に安定・自立すること
②自分が成長している実感が持てること
③会社から評価されることで、自分の存在意義が感じられること
がトップ3だったと思います。

20代としては、ごく当たり前で健全なものだったと思います。

「世界最新鋭のIT技術で世の中にイノベーションを起こしたい」 とか、「お客様企業をITでサポートすることで、社会に貢献したい」 というような大義名分は、全く考えておらず、きわめて自己中心的でした。(笑)

私が担当していたのは、大規模システム開発の初期フェーズでした。お客様企業に出向き、現行業務の問題点や新しいシステムに対する要望をききとって、それを文章とチャートにおこします。無理・無駄を省いて、プロセスを再構築したり、新しい機能を付け加えたり。分析と検討を繰り返しながら、新しく開発するシステムと業務の流れを決めていきます。

私がこの仕事を通して得られた最大のスキルは、ごちゃごちゃをスッキリさせることでした。誰でも名前を知っているような大企業でさえ、現場の業務というのは、実はごちゃごちゃしているのです。問題が起きる度に、今あるものにパッチワークのように新しいものを追加していくと、気がつくとごちゃごちゃの山ができあがっています。

そんなごちゃごちゃを、先入観のない第三者が聴き取って、絡み合った線をたどっていき、俯瞰してチャートに起こすことで、何が問題なのか、どこが滞っているのかがわかります。

私はこの仕事のスッキリ感が好きでした。また、チャートを作ることで、目指す未来の姿を可視化して、チーム全体で共有できることも好きでした。このスキルは、現在のコンサルティングの仕事にも、大いに役立っています。

初期フェーズが終わると、そこから先は、別のスキルをもったチームが引き継ぎます。大規模開発が多かったので、自分が関わったものが、実際にカタチになって稼働するのは数年先でした。

やっていることは好きなのに、徐々に物足りなさを感じ始めました。自分の仕事の結果が、何年も先にならないとわからないこと、社会、消費者、お客様企業で働く人に、具体的にどう役立っているのかがリアルにわからないことがもどかしかったのです。もっと直接、人とつながる仕事がしたいと思うようになり、転職を考え始めました。

そんなとき、パソコンの事業部で社内公募をしていることを知り、思い切って手を挙げ、異動しました。同じ会社内ではありましたが、コンフォートゾーンを出る選択をしたのです。


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