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いまさらだけどService Design Global Conference2017振り返り。

昨年の10月にスペイン・マドリードにて開催されたService Design Global Conferenceに行ってきました。テーマは「Service Design in Scale」。いまさらなのですが、改めて振り返ると面白いトピックスが多かったので紹介したいと思います。

EX(Employee eXperience)

◯Xシリーズって多すぎてもういいよ…という気もしますが、個人的にはこのカンファレンスで一番面白かったトピックス(自社サービスが人材領域だからっていうのもありますが)。従業員の働く体験(Employee eXperience)、つまりは組織をちゃんとサービスデザインしましょうね、という話。それが結果として提供サービスの質向上に繋がり、KPIや売上に貢献することになると。そのためには採用、総務、人事企画など、幅広い領域を横断的に推進していく必要があるので、EXに取り組むいわゆる人事の仕事はこれからもっとサービスデザイナー的になることが求められ、ますますクリエイティブになってくと思いました。日本ではAirbnbが人事のことをすでにEXチームと名付けて、仕事内容を以下のように定義しています。大企業でよくあるセクショナリズムな人事よりも随分業務内容が多岐にわたっている印象です。

社員の面倒をいろいろと見る部署です。ヘルシーでおいしい社食の献立を組むのも仕事。最新テクノロジーを揃えてやるのも仕事。ベスト&ブライテスト(超一流)な人材を引き抜くのも仕事。社屋が最高の職場環境になるよう手配するのも仕事。社員エクスペリエンスチームはAirbnbの面倒をまるごと見る総務部です。会社の健康と幸せの向上のために日夜働いてるんですが、これが結構楽しいのです。(Airbnb採用ページより)

他にもfreeeにはMember Success Team(メンバーサクセスチーム)という人事総務的な部署があるそうなのですが、ここもEXに近しい概念なんだと思います。Tシャツとか、マジ価値の取り組みなど。以下記事参考。

『freeeの企業Tシャツはなぜ社員に愛されているのか? 「社員への投資」から生まれる好循環』

『freee人事労務が取り組む「マジ価値人事業務」と「カルチャー浸透方法」とは?』

こうやって先進的にEXに取り組んでいる勢いのあるベンチャーが増えている中で、経営層がEXを重要なアジェンダとしてきちんと認知し舵をとらないと出遅れて採用難、人材流出、そしてサービスが死ぬことになる。そもそもリソース避けない中小企業においては採用格差は広がっていく。というのが私がマドリードで感じたことでした。

行政のサービスデザイン

ちなみにこれが一番初めのセッションだったので私は結構びっくりしたのですが、イギリス政府のサービスデザインの事例。日本だとまだまだサービスデザインというとビジネス領域、かつ新規事業の手法というイメージが強い気がしますが、海外では行政にインハウスでサービスデザイナーがいて、行政のサービス設計において当たり前のようにサービスデザインプロセスが推進されている。日本はかなり出遅れていますね。

社会課題のサービスデザイン

ホームレス問題という社会課題をサービスデザインで解決した事例の紹介。行政、NPOなど複雑なステークホルダーが取り巻く状況をエコマップを描くことで構造化し、貧困のループに陥る本質的な課題は何なのか?を可視化。何よりもサービスデザインプロセスを通じてセクターをまたいで対話していき協働を促していくという効果があったそう。わたしが地域で実践しようとしている地域課題×サービスデザインのプロセスにも近しいものを感じました。

まとめ

海外のサービスデザイントレンドを肌で感じて、日本よりも「サービスデザイン」の扱う領域がとにかく広いというのに圧倒されました。サービスの企画だけでなくEXのように人事、もっというと経営まで染み出しているし、ビジネスセクターに限らずパブリック、ソーシャルセクターまで広がっていて、かつもうすでに事例が生まれている。日本はトレンドからは大きく遅れてしまっていますが、これからサービスデザイナーが関与できる領域、可能性はとても広いのだという希望を得ました。

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