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猫月

昨年、大好きなミュージシャンが初めて個展を開催した。絵を描くことも絵画を鑑賞することも私の人生では無縁な出来事だった。
緊張しながら訪れた個展で、キラキラ光る月で2匹の猫が遊んでいるような"猫月"という丸い絵に一目惚れをし、幸運なことに購入することができた。

開封するのが勿体なくこのまましばらく飾っていた図。

「これは!家宝だ!推しが書いた絵!一点物!埃や紫外線対策のために額装をしたい!私はずぼらだ!(限界オタク)」と思い、初めて"絵の額装"をしたいと思った。

そこで約50年近くお店を営んでいる近隣の額縁と額装専門店へ足を運ぶことにした。

お店の方の説明をを聞き、額縁とマットをどのように組み合わせるかによって作品の印象が大きく異なり、相性の良い額装をすることで作品の魅力を引き立てることができるということが分かった。(今、思えばなぜ事前に調べなかったのか。)

私は絵を保護したいという目的はあったものの、"どのように飾りたいか"というイメージが曖昧だった。 「君の一生の晴れ着を決めなくてはならないのに軽い気持ちでいた。自分の洋服でさえ決めかねるのに…、ごめんよ。」という思いでいっぱいになった。

しかし、これまた幸運なことに絵や額装の基本的知識が一切ない私に優しく丁寧に説明をし、一緒に悩んでくれる親子代々続く素敵なお店と巡り合うことができた。

猫月は、直径25cmの丸いキャンバスに描かれている。丸い額縁は数が少なく、真四角の額縁の中に固定して額装するフロートという方法が最適だと提案して頂いた。

そして、丸腰ノープランな私にお店の方から「予算は?どこに飾る?自宅の家具に合わせる?空に浮かぶ月として飾る?」と様々なアイディアを提案して頂いた。似合いそうな額縁をいくつか選び、実際に絵と合わせたり、パソコンでシュミレーション画像を見比べることにした。

初心者は無難に家具と合わせてナチュラルブラウンな額縁にするべきかと思ったが、絵と合わせていくうちに夜空に浮かぶ満月というコンセプト、最高!素敵!という思いに至り、ビンテージ感のある鈍めな輝きのゴールドの額縁にした。
優柔不断な私は、最後まで無難に家具の色と合わせるべきかと悩んでいたが、お店の方から額縁のデザインが月面みたいに見えるねという後押しの言葉も大きく決めることができた。

額縁が決まったので、次はマットを選ぶことに。マットは作品と額縁の余白を埋め、デザイン性を整えるとともにガラス面と作品が接触するのを防ぎ保存性を高める効果があるとのことだった。なるほど。

マットは、夜空に浮かぶというコンセプトのため黒にした。黒といっても何種類もあることに驚き 、私の脳内でアンミカさんの「白って200色あんねん。」が再生される。
様々な黒色を見比べ、ラメが入った光沢感のある黒色のマットに決めた。ギャラクシーという販売名らしい。なんだって!コンセプトとぴったり!
(マットの色や素材だけではなく、マットが作り出す余白も作品一部なんだと、、奥深い、、。)

こうしてたくさん悩みながらも私の初めての額装オーダー体験は幕を閉じたのだった。

額縁とマットの組み合わせによっては、孤高な月、静かな夜の月、輝く月にみえたりと作品の印象が大きく異なり、奥深さを感じた。
明確な正解はなく自分の"合いそう"という感覚や好みから見つけ出していく作業は、作品の世界観を壊すのではないかという不安や悩ましさもあったが、間違いなく2023年で1番 思い出深く、素晴しい体験だった。当然だが、(自己満足だけど)仕上がりには大満足している。

初めて絵を購入し、初めて額装のオーダーをした。部屋が見違えるほど素敵に感じる。

宝物が増えた。ずっと、ずっと大切にしよう。


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