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ルッコラのお酒がこの世界にあるということ

先日、夫とランチしたときのことだ。ナポリピザが有名なお店で、オープン当初はランチもディナーもなかなか席が取れなかったのだが、数年経ったいまでは、思いつきで訪れても席があるくらいには人気も落ち着いたらしい(それでも店内は7割ほど埋まっていたのだけれど)。

イスキア島の地図が飾られた明るいテラス席で、彼は筍とポークのパスタ、わたしはピッツァ・マルゲリータをせっせと平らげながら、いろんな話をする。仕事のこと、最近考えていたこと、これから行ってみたい国のこと、そこで観たい絵のこと...。たわいもない、けれど、隣に子どもがいたら話そうとも思わないこと。

食後のエスプレッソを飲みながらふと隣の壁を見上げると、キュートな文字でRUCOLINOと書かれたお酒のポスターが目に入った。ルコリーノ、ルッコラのお酒???

不覚にも胸打たれてしまった。ルッコラのお酒、そんなものがこの世界に存在しているなんて!メニューにあれば必ずたのんでしまうほど、ルッコラを愛する身である。お酒になったらどんな味なのだろう。いますぐたのんでみたいような、いや、逆にいつか満を持して試したいような...。

逡巡したのち、結局、飲まずに店を出た。今度どこかであの可愛らしいボトルに出会ったなら、迷わずたのむだろう。どこで会うのかな。イタリアかな、それとも日本のどこかかな。またこのお店だったりして。だとしたら、誰と一緒にいるのかな。どんなoccasionなのかな。

–世界はまだまだ知らないことばかりだなぁ。

自分がまだ何も知らないということ、そしてこれからも未知の体験–それがたとえどんなに小さなことであれ–が待っていることを思うと、胸は高鳴り、視線は空へ向かい、いますぐにでも駆け出したい気持ちになるのだった。

#日記 #エッセイ #未知のこと

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