とある歯科医院で「わかり合えなさ」について考えた
マウスピースの型取りに訪れた初めての歯科医院で、診療台に乗った時のことだ。ちょうど視線の先にあったティッシュペーパーの箱に目が釘付けになった。厳密に言うとティッシュの箱そのものではなく、そのカバーに。久しぶりにぎょっとした。
すごいのである。すごいレースなのである。
チープな感じの、真っ白い、正体不明の花柄の刺繍(?)があしらわれているレース。
フリルが全体に三重になっていて、ティッシュが出る口の周りはフェイクのパールと、バラっぽい飾りがついている。
久しく自分の世界に登場していなかった類のもので、大いに動揺した。動揺して思った。
「これを『素敵』と思ってここに置いた人がいるくらいなんだから、他人と分かり合えないなんて当たり前だわ」
一緒にいて心地よいと思う友人に囲まれ、自分が刺激を受ける人、居心地はよくなくても(それは自分がコンフォートゾーンの外に出てしまうという意味で)憧れる人と会話をしているとどうしたって「似たような」マインドを持つ人と過ごす時間が多くなる。そして、いつの間にか「他のみんなもそうだろう」と思うようになってしまう。
危険だ、これは危険だ。
歯科衛生士さんに向かって大口を開けながら思った。
違うんだ、「わたしたちは趣味も好みも考え方もまるで違う」って前提を忘れてしまうと「え、いつの間にあの男が大統領に?」「え、あの人を支持する人そんなにいるの??」となってしまうんだ。
レースのフリフリティッシュカバーが、リマインドしてくれた。
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