水曜日の本棚♯3 余分な時間ほど美しい

本が好きなわたしは、ときどき考える。もしも残りの一生、3冊の本しか読んではいけないと言われたら、どの3冊を選ぼう?ああでもないこうでもないと考えて、ひとり楽しむ。そして本が好きだというひとに会うと同じ質問をする。ねぇねぇ、どの3冊を選ぶ?すると、大概の本好きは頭を抱える。もしくは、腕組みして唸り出す。もしくは、あさっての方向を見つめてしばしボーッとしている。苦渋の決断を経て残った、彼ら彼女らの「3冊」を聞くのも楽しい。

わたしの脳内で1年に1度は繰り広げられるこの「一生で3冊しか読めないとしたら」選抜にもう10年ほど残り続けている本が、江國香織の小説「ホリー・ガーデン」だ。静江と果歩という30歳目前のおさななじみふたりの、それぞれにしずかな日常。圧倒的な、でも時折不穏な友情。過去の、そして現在の恋人たち―。

この本になぜこんなに惹かれるのか、正直よくわからない。特別ストーリーが好きなわけでもない。主人公に共感するわけでもない。

けれど、初めてこの本を読んだ20歳前後の頃からずっと心に残っているのは何よりも「あとがき」の一節で、たぶん、これがわたしがこの本を愛する理由なのだろうと思っている。

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なぜだか昔から、余分なものが好きです。
それはたとえば誰かのことを知りたいと思ったら、その人の名前とか年齢とか職業とかではなく、その人が朝なにを食べるのか、とか、どこの歯みがきを使っているのか、とか、子どものころ理科と社会とどっちが得意だったのか、とか、喫茶店で紅茶を注文することとコーヒーを注文することとどちらが多いのか、とか、そんなことばかり興味を持ってしまうということです。
余分なこと、無駄なこと、役に立たないこと。そういうものばかりでできている小説が書きたかった。
余分な時間ほど美しい時間はないと思っています。

(江國香織「ホリーガーデン」あとがきより引用)

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果歩が紅茶を飲むときにカフェオレボウルを使っている、とか、静江のいちばん好きな食べ物がグリンピースごはんである、とか、そういう物語の筋(すじ)的には一見どうでもよさそうなことがたくさん出てくるこの本が、わたしはとっても好きなのです。

江國香織「ホリー・ガーデン」1994年・新潮社

わたしと同じように、どうでもいい余分なことを考えるのが好きな方へ

https://note.mu/mika_sudo/n/ndcf3dcc2f10f

の10の質問、よかったら考えてみてください。そしてこっそり教えてくださいね。

#コラム #本 #コンテンツ会議





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Mika Sudo

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