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ピンクの自転車

数年前わたしは、ショッキングピンクのミニベロ(小さな自転車)に乗っていた。いまでもショッキングピンクは好きな色のひとつだが、当時は個人的な「ピンク期」で、何でもかんでもピンクで固めていた。手帳、ノート、ペン、スマホケース、マグカップ、ときどきは着るものも。

(余談だけれど、この「なんか自分でもよくわからないけど、ピンクのものに手が伸びる」ピンク期、友人たち数人も同じような経験があると言っていたので、わりと珍しくないことなのかも)

あるとき、当時の同僚というか先輩たち(当時40代後半と30代前半。わたしは29-30歳くらいだった)と職場を出て「じゃあ、わたし今日、自転車なんでここで」と、停めていたそのショッキングピンクのミニベロを指したときの2人の反応をいまでも覚えている。

「えー!これ美香ちゃんの!?」

「すっごいピンクだね!!」

わたしとしては、「はぁ、そうですね」としか言いようがなかったのだが、同時にピンクの自転車にそこまでびっくりするものなのかと逆にびっくりしたのだった。

30代の女性は、2-3日後の仕事中にこう言った。

「美香ちゃんのピンクの自転車見てたらわたしも欲しくなっちゃって。いいなーってネットで色々見てたけど、わたしにはやっぱり無理だ〜ってなっちゃった」。

40代の女性も、また別の機会にこう言った。

「いいなー、ピンクの自転車」

「○○さんも乗ったらいいじゃないですか〜」

「いやー、『おばさんがこんなピンクの自転車乗って』って思われるよ」

どちらの先輩との会話でも、わたしはまたしてもびっくりした。え、何、みんなそんなこといちいち考えて持ち物選んでるの?好きな色のもの買ったらいいじゃん、誰もそんなこと思わないよ!

・・・と、思ったのが、のちのち考えた。あぁ、たぶん彼女たちは誰かの持ち物やファッションを見たとき「このひとにこんな色似合わないのに」とか「おばさんがこんな派手なもの持って」とか思ってるんだろうな。だから、いざ自分が何か買おうとしたとき、「そんな風に思われる」と思ってしまって好きな色も選べないんだ。

本人がそこまでの窮屈さを感じていないならわたしがとやかく言う必要はないけれど、わたしはそんなの自由じゃなくて嫌だなぁ、と、あのショッキングピンクのミニベロを手放したいまも、2人との会話をときどき思い出す。

#日記 #エッセイ #自転車



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