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台湾生活、カルチャーショックに泣いた日

「ミカやんの中国語、特に発音は下手すぎる。センスないよ。中国語の勉強は時間の無駄だから帰国したほうがいい」
突然のド直球の言葉に、私はなんと返したらいいのかわからなかった。

カルチャーショック?に泣いた日

台湾に来てから3週間、学校の授業も始まっていた。台湾の中でも特に運転の荒いと言われる高雄市民の車とバイクの群れに、自転車で突っ込んでいける勇敢さも身に付いてきた。住まいは、Airbnbで掃除やチェックインを手伝う代わりに家賃タダで住まわせてもらっている。

Airbnbのホストとの関係も良く、おすすめのお店を教えてもらったり、一緒に食事をしたりと、いろいろと気にかけてくれる。噂通り、台湾の人は親切だ。


その日、私はある単語の発音を何度やっても覚えれないでいた。日本人には馴染みのない発音方法と、四声しせいと呼ばれる言葉の音階は簡単ではない。ましてや来台3週目の私は、母を探して3千里の初期段階。つまり発音が超下手なのだ。

そうやって10回はきっちり間違えた頃、痺れを切らした台湾人のホストが言った。「中国語のセンスがない、時間の無駄」と。しかも何故かキレている。ショックな上に予想外の展開に全くついて行けない。泣きそうだった。

しかし同時に、嬉しさと変な高揚感を感じていた。ドMだから、ではなく、台湾人の特徴を目の当たりにできたから。一般的に日本人がイメージする台湾人というのは「親日」「優しい」「情に厚い」など、ポジティブなものばかり。

だが留学生や在住者の間では「日本人に比べて台湾人は発言がストレート」なことで、有名だった。実際にホストは親切だし、何かと気にかけてくれるが、発言に日本のようなオブラートさは無い。

だからド直球な発言を自分に投げられた時、「おぉっ!これが噂に聞いていた台湾人のド直球発言か!!すげぇ!ここまで言うのか!すげぇ!」とショックを受けながらも感動したのだ。*

その後、落ち着いたホストが「酷い言い方をした」と謝ってきた。私の頭はまだぐちゃぐちゃだったが、
「発音が酷いのは事実だし、実際あそこまで言えるのはすごい。私は時々、人に無関心だから、気になることがあっても言わないでほっとく。だからありがとうね」と。

なんだか優しい日本人/いいヤツを演じてしまった感もあるが、素直に感心していたので、嘘のありがとうではない。


でも、やっぱり、自室に戻り電気を消してベットに横になると、我慢していた気持ちがいっきに溢れ出た。
「無駄か、無駄じゃないかは、お前の知ったこっちゃねぇだろう。お前だって、ミニマリストの本読んでミニマリストになりたいって言ってるくせに、いまだに部屋汚ねぇじゃねぇか。ミニマムどこだよ!」*

「ありがとう」なんて言った手前、蒸し返せない。まして本人にぶつける勇気もない私は頭の中で猛反撃しながら、声を殺して泣いた。いいヤツを演じてもいいことねぇな……。

私は「優しさ」を自分が楽するための道具にしていた

「センスない、時間の無駄」事件から時が経ち、冬学期が始まった。今となってはホストに感謝している。あの言葉があったからこそ、発音の重要さを身にしみて感じ、先生や上級クラスの人にアドバイスをもらいに行ったり、予習復習もマジメにするようになった。

ホストの発言は、相変わらずド直球。でもホンネと建前文化で育った私からすれば、学ぶことは多い。ホストは確かに余計なことも言った。でも事実もきちんと伝えてくれた。

本当のことを伝えるのは、勇気がいるし、面倒くさい。
「これを言ったら相手を傷つけるかもしれない」
「相手に嫌われるかもしれない」とにかく“その後”の相手と自分の関係性を考える。

何かあっても大抵のことは「そんなもんだよね〜、人それぞれだし、これはこの人の特性だよね」と受け流してしまう。穏やかだけれど、なんだか味気ない。何より、実は相手のことを理解しようともしていないんじゃなか?と思う。

「優しさ」を、自分が楽するための道具にするのではなく、人との関係を築くために使いたい。よし、もっと正直に、はっきりと喋るようにしよう。それで誰かを傷付けたら、きちんと謝ろう。



補足

➀ 台湾人も、当たり前に色々な人がいます。怖がらないで大丈夫です。
私がお世話になっている台湾人Airbnbホストは、特にハッキリした性格なのかなと感じています。
➁ 岡山県民は、普段から「お前おめぇ」を使う人もいます。特別、恨みがあるわけではありません。怖がらないで大丈夫です。

イラスト:みかやん

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