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遺言書 :3章

法務省が 2017年度(平成29年度)に55歳以上の人を対象に実施した遺言に関する調査によると 遺言を作成したことがある割合は年代別平均で 僅か6.8%という結果でした
遺言書と云うと「財産のある人だけのもの」との認識があるかもしれません
しかし それは間違いです。
遺産相続のもつれから争族となったのは 資産総額が5,000万円以下の層です
争族の割合が76%にも及ぶ現状を勘案したとき 果たして準備が不要と云えるのでしょうか

普通方式遺言の種類

遺言書には いくつかの方式があります
一般的な普通方式遺言には「自筆証言遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があります

公正証書遺言秘密証書遺言は 公証人の立会いが必要で 資産の額により異なりますが 3,000万円~5,000万円だと約3万円の費用が発生します
このため 一度作成すると簡単に内容の変更を行うのムズかしい
特に 若いうちに遺言書を作成する場合 生活環境や社会環境も大きく変化します
作成から執行するまでに期間が開くと 意図せぬ状況になる可能性も
ただし 遺言書が無効となるような状況は限りなく低いため 安心感はあります

このため 比較的若いうちに作成する場合は 費用が掛からず 環境や社会の変化に柔軟に対応できる自筆証書遺言をお勧めします
難点は 全文自筆であること
また 法的性質から厳格な要式行為が定められているため少しでも満たしていなければ 無効となってしまう場合も
かなり慎重に作成する必要はありますが 要式・要点をしっかり守りさえすれば 最も手軽なものと云えます

自分にあった方式を選択

自筆証書遺言の方式緩和

2019年1月に 自筆証書遺言の方式が緩和され 面倒だった作業の一部が改善されています
改正以前は 全文を自筆しないといけなかったのですが 別紙(資産目録等)は自筆以外でも可能となっています
また2020年7月に 法務局への保管が可能になり 安全性の向上や検認が不要になるなど これまでの自筆証書のデメリットがかなり軽減されました

メリットが向上 デメリットが減少

財産の一覧

遺産相続では 積極財産消極財産の両方すべてを相続するか すべてを放棄するかの選択となります
限定承認と云うものもありますが ここでは省略します
そして 相続放棄する場合は被相続人の死亡を知った日から3カ月以内に家庭裁判所に相続放棄申述書を出す必要があります(これを家庭裁判所が受理して初めて効力が発生)
死後の葬儀や各種手続き 法定相続人との協議など 実際には3カ月という期間は あっという間に過ぎてしまいます

被相続人を失って直ぐの時期に 短い期間ですべての財産を把握するのは かなりの労力を要します
なので 財産目録を作っておく必要があります
可能な限り項目を網羅し漏れなく記載しましょう
また 例えば証券口座を持っていない場合でも 財産目録には証券口座の項目を記載し「なし」と記載
記載がない場合 記載漏れなのか実際にないのかを 法定相続人が判断できないためです
特に ネット系の銀行や証券などは 通帳 カード 場合によっては申込書なども紙が存在しない場合もあります(すべてネット上の処理)

財産目録への記載や履歴 その存在を示すものを残しておかないと 法定相続人の誰も把握できないことになりかねません
また 暗証番号などはセキュリティーの問題との兼ね合いもありますが 何らかの形ですぐに分かるようにしておくことをお勧めします
併せて 不動産であれば 権利証や売買契約書などの書類がどこに保管しているかも一緒に記載しておくと より良いと思います

債務についても すべて記載しておきましょう
住宅ローンの団信のように 被相続人の死亡と同時に債務がなくなるのか否かなどについても 網羅しておくと便利です
この他にも 自動車 家具 貴金属 美術品
特殊なところでは 特許権や損害請求権などがあれば 可能な限り記載しておきましょう

資産と負債のすべてを網羅

想いを紡ぐ

相続の法的なものとして遺言書に触れましたが 私的なものとして 遺言書の付言事項又はエンディングノートなども作成しておきましょう
遺言書には 財産目録 相続の仕方や遺言執行者などを記載
私的なものとしては 主に次のようなものを記載しておくと良いかと
 ◆死後すぐに必要となる儀式等
 ◆死の直前(終末期)の生き方
 ◆被相続人の経歴
 ◆残される人たちへの感謝の気持ち

事務的なもの(左)と感情的なもの(右)

わたしは2006年から 自筆証書遺言で遺言書を作っています
メリットは 状況の変化を柔軟に反映できると云うこと
タイミングは 家計決算と同じく毎年元旦に内容を見直し 署名捺印

「死」を考える
一般的に「死」の話題はタブー視され 口にすることも憚られます
しかし 生あるものには必ず死がつきものであり 好むと好まざるとその時は必ずやってきます
この「死」に際し遺言書は必須ではないですが 争族を行さないためにも 日ごろ伝えられない想いを伝えるためにも 少しでも早く元気なうちに作成しておくことをお勧めします



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