私が彼女をレズビアンに目覚めさせたのよ、と自慢された件

リンダとロバータのカミングアウトのあとは、日々の会話の中にゲイの話がふつうに出るようになった。

よくよく聞いてみると、リンダがルームメートを募集したのは一緒に暮らしていたパートナーが出て行ってしまったからだということがわかった。パートナーだけではなく、子供たちも一緒にごっそりといなくなってしまったのだった。

リンダのパートナー、シーラは元ストレート(異性愛者)でリンダと出会ったときはすでに全夫との間の子供が2人いた。リンダは、

私の力でシーラをレズビアンに目覚めさせたのよ。

と自慢げに語った。

晴れてレズビアンとなったシーラは、当時3歳の長女と生まれたばかりの長男を連れてリンダのタウンハウスに引っ越してきた。これがきっかけでシーラが前の夫と離婚したのかどうかは聞かなかった。以来9年間、シーラとリンダと子供たちは家族として暮らしてきたのだった。

そして別れた後でも自分のシーラへの愛に変わりはないのだとリンダは言った。ひきとめるリンダをふりきってシーラは子供たち2人を連れて出て行ってしまったのだ。

別居することになった後も、子供たちはリンダのうちに来ていた。というのも子供たちを學校へ迎えにいくのは別れたあともリンダの役目。学校から家に連れてきて、宿題をみたりご飯を食べさせたり、仕事帰りのシーラが迎えに来るまで面倒を見ていた。

特に下の男の子はほぼ生まれたときからリンダと暮らしているため、ものすごくなついてた。リンダもかわいくてしかたがないという感じだった。

平日の午後はリンダが必ず2人のキッズを家に連れてきた。リンダは、ゴッドチルドレン(God Children)なのよと説明してくれた。ということはリンダは2人のキッズのゴッドマザー(God Mother)なのだ。

アメリカででは自分に子供ができると兄弟姉妹や親しい友達に自分の子供のゴッドペアレンツになってもらうことを頼む習慣がある。自分にもしも何かが起きたときにキッズのことをよろしく頼むというシステムだ。人によっては、そんな責任はとれないと辞退するくらい真剣に受け取る人もいる。友達の一人はゴッドパレンツになることを断ったために、友情を失ってしまったというケースもあった。

リンダの場合は2人のキッズをシーラとともに育ててきたので、正確にはゴッドパレンツではなく、ステップペアレンツ(義理の両親)になる。ただしシーラとリンダは同性のため法律上はキッズとまったくつながっていない。1995年当時はカリフォルニアでも同性婚は認められていなかった。そのためゴッドペアレンツになることがただ一つ子供たちとつながることができる方法だった。さもなければ、ただの知り合いのおばちゃんになってしまう。

これをきっかけに結婚するということの本当の意味や同性婚を認可することの大切さをリルタイムで学ぶことになった。


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