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飲食店従事者として良かったこと、辛かったこと。そして若い人に飲食業をおすすめする理由。

日本一鮮魚を売る蕎麦屋(mikaman調べ)「ふるさと」のmikamanです。
飲食業って世間ではブラックって言われているし、印象も決して良くはないけど、この世界で27年やってきて思うところを書いてみます。

飲食店と言えば「長時間労働」

私個人としては、この魅力ある仕事を「長時間労働」という視点以外の場所から「良い仕事だよっ!」というのを若い人や子どもたちにも認めてもらいたいなと常々思っています。

昔の飲食店での労働とはどんななのか

ひたすら先輩に長時間こき使われ、最初のころは単調な仕事ばかり何年もやりつつ先輩の仕事を目で盗み、親方に「お前やってみろ」と言われる日を待つ。食事などかきこんで、味わう暇などあるわけもなし。

こんな印象でしょうか。

でも、こんなんはずっと昔の話。
私の修業時代はこれに近かったですが、昭和中期みたいに酷くはなかった。
先輩が優しかったのが救いでした。
8時~23時まで働いていましたが休憩は1時間もらっていましたからね。
休みもちゃんとあったし。
しかも親方のセンスと技術が相当なものなのは、挨拶に来る方々の顔ぶれを見れば小僧の自分でもわかりました。

次の職場が完全なブラックで、とても書けないくらいに劣悪でした。
働いている人の半数以上が「辞めたい」って言っていて、負の連鎖半端なかった。
一年も居なかったな。
覚えたことといえば、冷凍物の解凍の仕方かな笑笑
でもこの時の親方のおかげでお客さんに今の店を「従業員さんがみんな気持ちよくて良いねぇ」と年中言ってもらえるようにもなりました。
完全な反面教師です。
「絶対にこんな人間にはならん!!」ってね。

今の飲食の労働環境は

これは二分されています。
①修行を内包した飲食業従事者
②給料を稼ぐための手段としての飲食業従事者


①に関しては個人店かホテルや旅館がほとんどかと思いますので、労働時間という意味では長いはずです。ホテルでは人数多いですから料理長やナンバー2がまともでないと人間関係おかしくなります。
しかし、当然ながら自分が持っていない技術を身に付けることが出来るという「人生での超メリット」があります。
その超メリットに関してはあとで書きます。

②大手企業などの経営するチェーンなどの場合ですね。
この場合は店長はまず最初に会社に利益をもたらすことが求められます。
徹底的なコストカットの為の見直しを出来る能力だったり、スタッフの不満を聞いてあげたり、上からの圧力に耐えたり、お客様の意見を聞いて改善したりと、求められるスキルが違います。料理の技術や開発は他でやっていますから、マネジメントスキルがあればいいのです。
「会社員」って感じですよね。当然ながら上からの圧力もありストレスは強いと従事している友達が言っていました。
そこに従事する従業員さんたちも、同じ味を求めてやってくるお客さんたちのために、余計な事はせずに、決められた方法で作るだけです。
大手は「どれだけ人に調理させずに作ることができるか」を常に考えています。味の均一化と人件費の削減のためですね。
人間の加減が必要になればなるほど企業としてのリスクは増します。
これは50年前には無かった経営スタイルですね。
労働時間は管理され、個人店のような働き方をさせるとすぐ問題になります。
ただ、今の実際のところはどうなんでしょうか。
20年くらい前は社員さんは相当環境悪かったと言いますけどね。
店長さんよりパートアルバイトさんのほうが偉いってよく聞きましたね。

飲食店従事者で辛かったこと

筆頭は「友人の結婚式に参加できなかった」ですね。
当時勤めていた店に掛け合いましたが返事は「NO」
こうして人の幸せを奪わないといけないような店はあってはいけません。
当然私はこれをきっかけに、「基本何事も休んでよし」というスタイルでやっています。
子どもが急に調子悪くなれば正午だろうがなんだろうが帰って良し。
法事でも何でも同じです。日曜だろうがなんだろうが店側がどうにかすればいい。
ただ、嘘をつくのは駄目です。
バレたその場でクビになります。
仲間と仕事していますから当然です。

次が「賃金が安すぎること」です。
これは利益を上げているかどうかではなく、まぁ修行だしこんなもんだろ。って事で給料が決まっていたというところがあるかと思います。
確かに大したことは出来ません。だけどさぁ。。あそこまで安くすることなくない??笑笑
今はさすがにそこまで酷くはないと思いますが、高い賃金は望めません。
しかし、それは飲食だけの話ではないと思います。
だって世間で公表されている平均年収見ればそれは一目瞭然ですよね。

まぁ私はこの統計の半分も貰っていませんでしたけどね。

安すぎるとどんな弊害があるかといえば、遊び盛りですから遊んでいれば仕事にまつわる道具も買えないし、ちょっと高いお店に勉強に行くお金など無くなってしまいます。
じゃ遊ぶのをやめろと言われそうですが、遊びたい盛りに長時間労働ですからどこかで息抜きしないと。
20代で胃潰瘍を2度経験しています。

しかしこの2つは時代的にも改善されているかと思います。
むしろ、正直ほかの業種の方のほうが余程環境悪い会社あるだろうとか思ったりします。

辛いことといえばこの2つくらいでしょうか。
あとは若いころ労働していれば必ずなんらかの不満は生まれますが、当たり前と考えていました。

飲食店従事者で良かったこと

これはもの凄く沢山あります。
書ききれないくらいです。

まず筆頭は
・調理技術が身についた
これ、超メリット!スーパーメリットです!人生でこれほどのメリットはそうそう無いです。
このためだけに料理を志してもいいくらいです。

(今は学べる環境はいくらでもありますから、必ずしも生業にする必要はありません。ただ、環境があるというのは伸びが全く違います。)
一生死ぬまで必要とされる「食べること」に対して「自分の好みで自分で作れる」のですからこんな素敵な話はありません。
しかも旬のものを安くおいしく作れます。
外で食べれば高い料理も、家で作れば1/3の金額で済みます。
(昨日作った飛騨牛煮込みブルゴーニュ風は4人前で原価3000円でした。外で食べれば1人前3000円じゃ済まないです。)

友人を招いた時も手料理でもてなすことが出来ます。
彼女が出来たら家で手料理を作ってあげられます。
(料理で女性を落としたという男性はまわりに沢山います。)
時間が出来た時、時間をかけた料理を作って暇つぶしもできます。←片付けさえちゃんとやれば家族も喜ぶ。

我が家は私が朝食係ですが、朝起きたら朝食が出来ている事を妻は非常に喜んでくれています。夜も私が作りたいので作ってしまうのですが、やはり喜んでもらえて夫婦円満です。

こんなにたくさんの素敵なことが料理から生まれます!!

・自分の作った料理で人を喜ばせて、さらにお金までいただける

これが飲食店の醍醐味とも言えます。
世の中の仕事のうち、エンドユーザーの顔が見られる仕事はどれだけあるでしょうか。
しかも、美容のように効果を待つことなく、即店内にて喜びを知ることが出来ます。
誰だって喜ばれればうれしいに決まっています。
そして、相乗効果で「次はどうやって喜んでもらおうか」
となるわけです。
戴くお金からはITのような大きな利益は生まれません。
しかし、目的がはっきりしていますから、その対価は私にとっては値千金なんです。
私が飲食店を「魅力のある仕事」というのはこの辺りが大きいです。

・店を持つことで色々な方に出会えた

お店のファンになってくれる方々は皆さん本当に優しい。
従業員さんにも優しい。
学生さんなんかにはいい経験かなと思っています。

そして、人生にかかわるほどの生き様や経験を持つ方などに出会えたのも大きいです。言い方を変えれば「世界が広がった」でしょうか。
店を持たなかったらこんな出会いなかったよなー。
と感謝しています。

・友人と再会する場所に

社会人になってくると仕事関係のつながりの友人が主になります。
あとは趣味ですね。
正直中高の頃の友達との付き合いというのはほとんどありません。
しかし、新聞やTVなどに出ることで、中高の頃の友人が顔を出しに来てくれます。
これ、飲食店でなければ無理な話。
昔の友人に会いに理由もなしに家や会社にわざわざ行く人いないですからね。
食事に行くという名目があって成立する出会いです。
うれしい限りです。

・変わった方に会う機会が増える

飲食店オーナーというのは変わった方が多いです。
もちろん私もそのうちだということを自負しています。
変わったと書きましたが、考え方が面白いとか、突飛だとか、はちゃめちゃだとか、しかもそれを実行してしまいます。
刺激にしかなりません。
私の店でもおかしいこと色々やってきましたが、失敗してもそんなに困らないんです。小さな店ですから。
歌手に歌を歌ってもらって募金してもらったり、カレー屋にしちゃってみたり、昨対越えた売り上げ欲しいから店に来てとか言ってはちゃめちゃな値段で売ったり。

他にも、飲食をやっていたからこその楽しみというのがたくさんあります。
平日休みで色々とメリットばかりとか、食べ物というツールがあることで社会貢献がしやすいとか本当にたくさんあります。

思うところ

つらつら書いてきましたが、飲食は職場選びさえ間違えなければ絶対的におすすめの仕事です!
たくさんの幸せを作り出すことが出来る可能性を内包した仕事です!

そしてオーナーさんも、飲食がブラックって言われないように、少しでも労働環境が良くなるように努力をし続けないといけませんね。
とはいえ、全てを労基に合わせると、お客さんの幸せは綻んでしまう場合が殆どな訳なのですが。。。
その辺は加減しながらですね。
環境が良いとスタッフさん本当に楽しそうに仕事しますからね。
ホントにオーナーがやるべき事はいくらでもあります。
がんばろっと。

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