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チワワのピカに選ばれた私たち

チワワのピカに選ばれた私たち

ピカと一緒に暮らし始めて2年になる。
15歳とも17歳とも言われる老犬は、もともとはパートナーまるちゃんの母の犬だった。
その母が突然亡くなり、主人を失ったピカの境遇ががらりと変わった。
5エーカーの土地に2軒の家を建てて暮らしていた両親だったが、母亡き後、父は小さいほうの家に移り、メインハウスには妹夫婦が越してきた。
彼らには大型犬2匹と小型犬がいて、かつてピカが暮らした家は知らない犬たちに占領

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終わらない夢: 過去と今は繋がっているのか

終わらない夢: 過去と今は繋がっているのか

小さな頃から「大人になったら外国へ行く。」「外国人と結婚するから。」と当たり前のように言っていたのを覚えている。
なぜそんな確信があったのかが不思議だけれど、私の人生はその通りの現実になっていくのだ。
28歳の誕生日にアメリカへと飛んだその日から、30年以上外国で暮らし、外国人と結婚し、子供もできて、そして離婚もした。

毎日話している英語は、20歳過ぎた頃からは独学で学んだ。
アメリカへ行く資金

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ふーちゃんとの再会

ふーちゃんとの再会

「あなたのお名前は?」
「ラストネームはなんだったかしら?」
「どこに住んでるの? お仕事は?」

何度も聞かれるよ、と友人からは聞いていた。しかし目の前に座るふーちゃんは、そりゃああの頃より歳はとっているけれど、声の張りも背すじをピンと伸ばしているのだって変わらない。
ただもう私を覚えてはいないのだ。

バークレーというコミュニティで一緒に活動していた20年ほど前にも、時々ふーちゃんの散歩につい

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切っても切れない縁というもの

切っても切れない縁というもの

最後に彼に会ったのは8年くらい前だったか。
”やっとあなたを見つけた”というテキストメッセージが来た時だった。
その前は… 25年くらい前に遡らなければならない。
一時期、人生の時間を共にした私たち。
パレスチナという国に生まれた人とアメリカで出会い、国の違いや彼が置かれていた困難な状況を一緒に見つめた時があった。
若い恋には終わりが来て、いつしか彼のことも思い出さなくなった。
私の人生は結婚、出

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人は突然いなくなるけれど、愛という光はいつまでも残る

人は突然いなくなるけれど、愛という光はいつまでも残る

胸の少し下で重ねられた手。
なめらかなブラウンの細い腕は、ハワイの太陽の下で産まれ生きた証だ。
長い指の先には、つい最近ネイルサロンで塗られたであろうワイン色の爪が綺麗に並んでいる。
そっと手に触れる。
2週間近く司法解剖のため戻ってこなかった彼女は、きっと随分と変わった姿になっているのかと心配したが、その手は冷たくも優しい柔らかさがあった。
ホッとすると同時に寂しさが溢れてきた。
もう魂はそこに

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ただきれいに

ただきれいに

ハワイもロックダウンになり、ここに住む人たちだけの島になります。
ステートパークも閉鎖されたらきっと海がきれいになるだろうと考えると、ハワイの自然にとっては
元の姿をとり戻す時間になるのでしょう。
人が動かない世界の中で、みるみるうちに汚れが消え、生き物が蘇るのだと思うことで
このできごとは無意味ではないのかもしれないと感じます。

わたしの周りの人々も、お家をきれいにしたり、時間をかけてお料理し

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記憶のフレグランス

毎日高波がが岩を叩きつける音や、鳥たちの声、南国の雨の音を聞いている。
遠くから吹く風が今、ジャングルの木を揺らして通り過ぎた。
大きく揺れる木々を見ている。
旅から戻るとただこうして座り、音を聞き続ける。
ハワイは音。
自然の音が朝も夜も止むことはない。
ここが今わたしが在る場所。

こうしていくつもの場所で、人生が創られていった。
その時々に在る場所で、一から出会ったすべてのもの。
カリフ

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腸で回復する

腸で回復する

クレンズにいらっしゃるみなさんの中には、さまざまな”症状”をお持ちの方がいます。 腸内洗浄をすることにより、それが快方へ向かうかどうかは正直わかりません。 でもわたしは、これまでクレンズをされたみなさんからの報告が、体験からの答えだと思っています。 
でもね、生き方が違うように、腸もまたそれぞれ。
誰かが治ったと言っても、それはみんなに当てはまるわけではありません。

さて、ではどんな改善報告が届

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不完全な音楽

不完全な音楽

いつもいいセンスだなぁと思う音楽を、ちょっとした動画の後ろに流している友人がいる。 その日も彼女の動画にはいい感じの曲が流れていた。
思いがけなく指が動いて、「あなたの曲はいつも素敵。どこで見つけるのかな」と聞いてみたら、彼女がいつも曲を探しているアプリケーションを教えてくれた。

彼女の選曲は、なんだかわたしの心の琴線に触れる。
聴きながらそれはなぜなのか、わたしは何が好きなのか、そんなことを考

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理解しないこと

理解しないこと

理解できないことは、理解しなくていいこと。

自分を守ってくれる存在が、出会いと別れ、そしてその意味を決めて出合わせるのだから、これもまた理解しなくていいこと。

なるほど。
今朝起きてからずっと頭の中で浮かんでいることだ。
そしてまたこの二つのことも理解しなくていいことなのだろう。
理解するということは、自分が納得するということなのだから、所詮自己満足というエゴなのだ。 
知らないことの方が

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グレイヘア

グレイヘア

長い旅を終えた時、
黒髪の根元がまっすぐな線を引いたように白く変わっていた。
自然のまま生きることが心地いいと感じていたわたしが、たった一つだけ踏み込むことのできなかった世界。
それは、グレイヘア(白髪)でいることだった。

毎月この白いラインが現れ始めると、「染めるのはもう嫌だなぁ」とつくづく思いながら結局染めの作業にかかるのだが、この日は違った。
「もうやめよう」
はっきりとそう思った途端に、

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鳥の死骸

鳥の死骸

「美しいでしょう?」
彼女が自慢げに指差す先には、鳥の死骸が横たわっていた。
「みんな気持ち悪いっていうんだけど、わたしにはとても美しいの。
見てこの色、骨のラインを。」

骨が見えて羽が取れかかっている鳥たちは、
柔らかな陽が差し込むサンルームにに、きれいに並べられていた。
ぎょっとしているわたしを尻目に、
まるで新しいアート作品を、目を細めて眺めるかのような彼女。
わたしには、何が美しいのかま

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カケラ

カケラ

" I can't see!"

少し弾みのあるわたしの声を覚えている。
傘が足元を遮っていたけど、歩けないわけじゃないのに。
新しい恋に浮き立つ心。
甘える声のカケラ。

”あなたはさよならを言うと、一度も振り返らないで行ってしまう”

最終電車の改札口で、別れ際にそう言うわたしに、
彼はちょっと驚いた顔をした。
そして改札を抜けたあと、まるでおどけたショーマンのように
両手を広げてくるりと振り

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