眠くなったら楽器を吹け

活動してから、すでに13時間経っている。

老人ホームの厨房の仕事は、朝がとんでもなく早い。6時には仕事が始まるので、朝起きるのは4時半。この時間になるともう、目をつぶれば寝てしまうくらい活動の限界なのだ。

それでも執筆はしないといけない。この仕事を選んだのも、「ライター業と両立できそうだから」という理由なのだから。6時からフルタイムで働き、家に帰るのが16時ごろ。少し寝たあと執筆を行う。きょうも、SEO記事の構成とコンペを書かないといけない。ああ終わるかな。

明日は出勤時間が遅いため、時間に少々余裕があることを生かして楽器の練習もしないといけない。私は地元のアマチュアオーケストラ楽団に入っていて、演奏会を11月に控えている。演奏時間が約1時間の交響曲を含めた3曲を吹き切る体力もつけないといけない。

とはいえ、自宅への帰り道は眠気との戦い。職場から実家までは片道40分ほどだが、2回の乗り換えが控えているためゆっくり寝られない。家に帰りながら「ああ寝たいなあ、でも帰ってすぐ寝たら絶対楽器吹かないだろうなあ」と、頭の中で睡魔と楽器を戦わせていた。

自宅に帰って、ゆっくりしたくなる気持ちをコーヒー1杯で抑えて、楽器ケースを開けた。担当楽器はファゴット。茶色くて細長い形状が特徴の大型木管楽器だ。

ファゴットは吹くまでに時間がかかる。まずは、吹くために使うリードを水に付ける作業がある。その間に楽器を組み立てるが、楽器がでかいうえに管の数も多いため他の楽器よりも時間がかかるのだ。正直めんどくさい。これが気軽に練習できないひとつのハードルになっている。

それでも、ひとたびリードを水につけてしまえば吹かざるを得ない。心を鬼にして楽器を組み立て、音を鳴らす。

まずはメトロノームをテンポ60に合わせて8拍のロングトーン。そのあとは前回の合奏で苦戦したタンギングの練習。指まわりが難しいフレーズを、テンポとリズムを変えながら何度も練習する。

疲れた……、あれ。

眠気吹っ飛んだんだけど??

楽器を吹くのは体力がいる。だから当然眠気に拍車がかかると思っていたのに。
口の疲れと反比例に、頭がすっかり冴え渡っていた。

集中して練習したからだろうか。音楽のことしか考えていなかったからかもしれない。


心を鬼にして渋々練習した結果、思わぬ発見をした。
眠くなったら楽器を吹け。今後の自分の教訓になりそうだ。

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