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「ひとりでいいや」じゃなくなった日

思い立ったときにどこにでも、どこまでも行けるのが、ひとりの醍醐味。
私は今それを、とことん味わっている。


大学4年生、初めてひとりで大宮から夜行バスに乗って名古屋に向かったときは、世の中こんなに楽しいことがあるのかと思うくらい、衝撃的だった。本当に、ほんとうに楽しかった。実家暮らしの私にとって、夜行バスで深夜2時にサービスエリアに降り立ち、コンビニに寄ってアイスを買うこと自体、悪いことをしているようでとても刺激的だったのだ。

ワクワクの時間も束の間、名古屋駅で下ろされて早朝、私の本当の冒険が幕を開ける。

熱田神宮で土砂降りの中、一本の大きな杉(杉かどうかは定かではないが、きっと杉)から得られるパワーを身体いっぱいに感じたくて、時間が許す限りずっと見上げていた。予定に組んでいなかった四軒街に行って至る所で写真を撮り、喫茶店に入り、迷路の駅地下をぐるぐる回った。一日中歩き回った足は靴下までびっしょりだったが、それでも充実感が勝った。帰りは濡れた靴下のまま、再び夜行バスに乗って帰った。

ひとり旅の良さを知ってしまった私はあれから、どこでもひとりで行くようになっていた。青森ねぶた祭、広島の尾道・宮島、山口の秋吉台、山形の加茂水族館……。今年の6月には知床を予定している。もちろんみんなで行く旅行も好きだったが、行きたいところに行くなら断然ひとりが良い。当時の彼氏に「一緒に行きたい」と言われても嫌な顔をしてしまうほどだった。


そんな私だったのに、つい最近、「誰かと行きたい」に変わった。

変わったきっかけになったのは先月、母と名古屋に行ったときのこと。
ホーユーヘアカラーミュージアムの企画展を見るために名古屋に行くことが決まったとき、母に「一緒に行きたい」と言われたのだ。

当初はひとりで行くつもりだった。その日の朝にパッと行って目的を果たして、夜は名古屋にいる友人と食事をして、その日の夜行バスでサクッと帰ろうかなと思っていた。まるで都内に出るような感覚でいたし、観光や遊びをする予定など、全くなかった。

それが母も一緒に行くことで、ただの「お出かけ」から「旅行」に変わったのだ。

母にとっては初めての名古屋だった。新幹線のチケットを取り、観光する場所を調べて、宿泊場所を予約する。おかげで私は、何度も名古屋を訪れた中でいちばん観光を楽しんだ。


今までは「ひとりでいいや」と思っていたけれど、誰かと一緒に行くことできっと違う楽しみ方もできる。それは旅行に限らず、普段する食事も、仕事も、おんなじかもしれない。

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