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ずっと見ていた

初夏といえど都内は35度を超えるような日の夜 父を駅で待っていた。本を読みながら。不意に声をかけられて顔を上げると彼がいた。 久しぶりに見た。変わらない穏やかな雰囲気。最後に会ったのはどのくらい前だろうか。 何を話そうか、声が詰まった。 どうしたの?と彼。 父を待っているの、と私 一言二言のやり取り、くるりと回って歩いて行ってしまう彼に、心の中で待って、と言った。彼は行ってしまう。追いかけたかった。でも追いかけて何を話せばいいのか、思いつかなかった。考えているうち

    • かき氷

      日曜の昼、私は常軌を逸した。 あの日のことを一生忘れないだろう。 長い時間、病気で家に閉じこもっていた私。人と出会い話し、やっと自分が生身の人間であることに気付かされた日だった。 相手はネットで知り合った10個上の男性だった。ネットで出会った人と実際に会うなんていう狂気的なことが私に出来るのだろうか、不安だった。でも、試してみたかった。親の思うような自分でい続けるのはすごく苦しくて悲しかった。 昼過ぎに表参道駅のホームで待ち合わせた。ここら辺に美味しいかき氷屋があるら

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