見出し画像

【サンシタズ・プライド】(【ニンジャの火事場泥棒】より)

公式ソロシナリオの二次創作を作ろう

5/5、ニンジャスレイヤー公式よりソロアドベンチャーの第四弾が発表された。今回の冒険はアナキストの襲撃を受けたトーフ工場からラオモト・チバを救い出せというもので、ツイッター上では多くのニュービー、サンシタがトーフ工場を駆け巡り、トーフエキスにまみれたチバ=サンを見て体温を上昇させるなどのタノシイ・インシデントが多発していた。

私自身も大変楽しくプレイし、リプレイ風作文行為などをしていたのだが、その途中で「この舞台ならば、何が起こってもおかしくないのではないか?」とふと考えた。

・ラオモト・チバ救出という重大ミッションのため、複数のニンジャが投入されている可能性が高い=チバを助けなかったニンジャの物語なども展開できる

・労働者やアナキスト含めて多数の死者が出ているため、その中からニンジャソウル憑依者が出てもおかしくない

・アナキストを手引きしていた黒幕がザイバツやイッキなどの敵対ニンジャ組織である可能性がある=その場合、アナキストを扇動している指揮官級のニンジャが出てきているかもしれない

・ヨロシサン系列の工場なので、バイオインゴットがあるかもしれない=それを狙ってサヴァイヴァー・ドージョーのニンジャが紛れ込んでいるかもしれない

・ソウカイニンジャの気配を察してやってきたフジキドがPOPする可能性が高い

色々と考えている内に、自分でもゲームブックめいたソロシナリオを作ってみたくなり、せっかくなのでDIYしてみた。

ソロ4の主役サンシタがチバ救出に奔走しているその裏で、任務を放り出してトーフ工場での火事場泥棒を楽しむ邪悪なサンシタをロールしよう、といったような趣旨のシナリオだ。後半に爆発四散ポイントを仕込み、適当に邪悪行為をさせて後腐れなく爆発四散させる。そんなスナック感覚で邪悪サンシタをエンジョイできるシナリオを目指したつもりだ。

何人かでも拙作で遊んでくれたらウレシイな、と考えていたところ、なんとありがたいことに多くの忍殺TRPGリプレイを手がけている三宅つの=サンが拙作シナリオをアレンジし、リプレイ小説を執筆された。物語の舞台はサカイエサン・トーフ工場。そう、まさにレイジ・アゲンスト・トーフのトーフヤ襲撃が舞台なのだ。ビホルダー=サンの扇動でトーフ工場に殴り込んだアナキストがニンジャとなり、邪悪行為の限りを尽くす。ファイアシーフ=サンの清々しいまでの外道サンシタっぷりを是非その目で確かめてほしい。

この素晴らしいワザマエのリプレイ小説に影響され、私も自作シナリオのリプレイ作文を書かざるをえんや、と決意し、作文行為に取り掛かったのだった。

気兼ねなく爆発四散させられるサンシタ

今まで私がソロシナリオで登板させたニンジャは、今ひとつ邪悪性が足りず、サンシタ感はさほどでもなかった。今回は一つ、特に理由もなくモータルを殺しては悦に入り、カネ目のものは残らず奪うような、典型的邪悪サンシタを創造してみたい。

何はともあれまずは能力を決めねばならない。例によってダイスを振ってみる。

カラテ       5    体力        5
ニューロン     6    精神力       6
ワザマエ      5    脚力        3
ジツ        0    万札        0
DKK       0    名声        0

◇装備や特記事項
◆ウィルス入りフロッピー:ハッキング難易度-1、使用後D6で3以下が出ると喪失

能力値合計:16 総サイバネ数:0

こんな時に限って出目が良い。ジツこそ無いがカラテニューロンワザマエの全てが平均以上。これでは気軽に爆発四散させるどころか普通に生き残ってしまう

そこで独自ルール「サンシタ補正」を導入することにした。「カラテ、ニューロン、ワザマエを決める時のダイスの出目が4以上であった場合、それから3を引いたものを数値とする」という独自ルールだ。要は基礎能力を強制的に3以下にすることで、文字通りのサンシタを生成するルールである。

そしてサンシタ補正後の数値がこちら

カラテ       2    体力        2
ニューロン     3    精神力       3
ワザマエ      2    脚力        1
ジツ        0    万札        0
DKK       0    名声        0

◇装備や特記事項
◆ウィルス入りフロッピー:ハッキング難易度-1、使用後D6で3以下が出ると喪失

能力値合計:7 総サイバネ数:0

一気に弱体化し、これぞサンシタというステータスになった。これならほんのちょっとしたミスやダメージでオタッシャ重点だろう。ワクワクしてきた

マイナースキル導入

今回は(爆発四散率を上げるためにも)サイバネ導入を見送り、5/22に公式より発表された「生い立ちとマイナースキル」を導入してこのサンシタのキャラクターを決定しようと思う。

>どちらかというと、このルールは長期キャンペイグンよりも、単発セッションやショートキャンペイグン用に作られている(そのため、準レギュラーニンジャのようなヒロイックな背景よりも、ヤクザ組織の末端として気兼ねなく爆発四散できるようなもののほうが多めになっている)。

まさに当ソロシナリオにうってつけ。スキルやアイテムの効果などのコアルールを適用せずとも、単純にサンシタの性格付け、フレーバー的な意味合いで導入するのもおおいにアリだろう。さっそくダイスを二回振ってこのサンシタのマイナースキルを決定しよう・・・出たのは3と2。マイナースキルはショドー十段となった。

>32『○ショドー十段』:日本社会においては達筆であると上から一目置かれ、また下位の者からは敬意を得られやすく、ソーシャル面で大きなアドバンテージを得られる。

本来ならばミッション終了後の報告書にてショドーの腕前を振るい、ダイスの出目によってはその見事なる達筆を評価されてチーム全体の評価を上げる(または誤字をしてしまい評価を下げる)スキルなのだが、今回はソロシナリオなのでそのあたりはナシ。単純にショドー十段を会得しているサンシタということになった。

ショドー十段・・・恐らく忍殺世界の一般社会においては大きなアドバンテージとなる素養なのだろう。社員の能力が同じである場合は、ハイク、チャ、そしてショドーのワザマエが優れている方が出世する世界だ。旧ザイバツならば確実に出世が見込める良スキルだろう。

だがソウカイヤにあってはどうか?確かに達筆の報告書を出せばウエの印象は良くなるだろう。だがそもそもチームも組んでいないサンシタに報告書を書くほどのミッションは回されまい。現状では宝の持ち腐れだろう。

そしてショドー十段を持ちながらチームを組まされていないということはこのサンシタの社会性や協調性に問題がある可能性が高い。恐らくショドー十段を鼻にかけて他サンシタを見下しているのだ。イヤなヤツだ。はやく爆発四散させたい

最後に名前を決める。アンダースリーだ。3の下。そのまんまである。景気よく爆発四散する願いを込めてファイアワークスとかも候補に上がったが、それだとタマヤ・ニンジャクランのソウル憑依者みたいなのでやめた。

◆アンダースリー(種別:ニンジャ)        PL:三笠屋
カラテ       2    体力        2
ニューロン     3    精神力       3
ワザマエ      2    脚力        1
ジツ        0    万札        0
DKK       0    名声        0

◇装備や特記事項
◆ウィルス入りフロッピー:ハッキング難易度-1、使用後D6で3以下が出ると喪失
○ショドー十段

能力値合計:7 総サイバネ数:0

さあ、このショドー自慢のサンシタ、アンダースリーは、アナキストやモーターヤブが闊歩するトーフ工場で火事場泥棒を働き、見事に爆発四散を遂げられるだろうか?

【サンシタズ・プライド】

ここは重金属酸性雨が降り続くアヤセ・ジャンクションの工場地帯。ソウカイヤと提携しているニルヴァーナ・トーフ社のトーフ工場が、武装アナキスト集団による攻撃を受けた。しかもソウカイヤ首領ラオモト・カンの子息が工場見学中だ。

この緊急事態を受け、出動可能なあらゆるソウカイニンジャに対してチバ救出のためトーフ工場への急行命令が下った・・・のだが・・・

「クソーッ!ツイてねぇぜ!俺はショドー十段なのに・・・!」

アナキストと労働者の死体があちこちに散らばる工場エントランス前で、特徴の無い深緑色のニンジャ装束を着たソウカイニンジャが地団駄を踏んでいた。このニンジャの名はアンダースリー。彼の視線の先にあるトーフ工場からはもうもうと黒煙が立ち上り、割れた窓からは火の手があがっている。

アンダースリーのニンジャ聴力に聞こえてくるのは悲鳴と怒声と銃声と破壊音、時たまニンジャのカラテシャウト。それも複数。周囲の死体の中にはネギトロと形状するしかないような凄惨な死体もあり、明らかにニンジャのカラテによるオーバーキルを思わせた。すでに相当数のソウカイニンジャが潜入し、チバ救出の任務にあたっているのだ。

「俺のショドー十段の才能をウエに認めさせる絶好のチャンスだったのによぉ!今からノコノコ行ったって他の連中にチバ=サン救出のキンボシを取られちまうに決まってるじゃあねぇか!」

腹いせに転がっている労働者死体をストンピングする。急行命令を受けたアンダースリーは、ヒョウタンからオハギのキンボシ・チャンスに胸をときめかせたが、運悪く現場からかなり離れた場所にいたために到着が遅れてしまったのだ。

「キンボシ・ボーナスでサイバネ入れるチャンスだったのによォー・・・」

アンダースリーはカラテ、ワザマエ、ハッキング、どれもがパッとせず、ジツも使えなければスリケンも生成できない、ただただショドー十段だけが自慢のニンジャであった。しかしソウカイヤのサンシタ、しかもチームすら組んでいないニンジャがショドー十段のスキルを発揮し評価される機会など無い。

アンダースリーは自身のスキルが評価されぬ現状に不満を持ち、サイバネによる安易なブーストで能力を底上げし、自慢のショドー十段を活かせる地位に就くことを望んでいた。だがふわふわローンでカネを借りるのは怖いので今日までくすぶっていたのだ。そんな彼にとってチバ救出のキンボシ・ボーナスは千載一遇のチャンスと言えるものだったのだが、もはや絶望的だ。

「こんなんじゃ仕方ねえ・・・ともかく工場の中入って探してるフリでもするか。すぐにでも他のヤツがチバ=サン見つけて解散になるだろ・・・」

すっかりやる気を失い、ふてくされた顔で工場へ歩き始めるアンダースリー。「ええいクソッ、ジャマで仕方ねぇな・・・!?」行く手を塞ぐように倒れている死体を腹立ち紛れに蹴飛ばしながら進んでいた彼は、不意に何かを閃いて立ち止まった。

「待てよ?今、工場の中は大混乱だろ。ニンジャがいくら暴れたって誰も気にしねぇし、何が起こってもアナキストの仕業っつーことになる・・・ってこたァ・・・オイオイオイオイ!」

アンダースリーは己の額をピシャリと叩いた。その目は貪欲に光り輝き、メンポの下の口は邪悪な笑みに歪められている。

「俺がチバ=サン探してるフリして労働者やアナキストどもを好き放題にブッ殺して万札奪ったり、金庫やUNIXからカネ目のモンを奪ったって、誰も気にしねぇし文句言われねぇってことだよなァ!?」

アンダースリーは気づいた。眼前で燃えているトーフ工場は、己の前に差し出されたトレジャーボックスだということに!

労働者とアナキストが争い、他のソウカイニンジャがチバ救出に動いている今、自分の行動に注意を払う者は誰もいない。普段の鬱憤を晴らすために面白半分でモータルをカラテ殺したところでお咎めナシだ。万札やカネ目のものをかき集めればサイバネ代の工面もつくかもしれない。これはまさしくボーナスステージだ!

「ワクワクしてきたぜ!これはショドー十段の俺にブッダが与えた大チャンスに違いねぇーッ!」

アンダースリーはモータル虐殺と金品強奪の予感に胸を躍らせながら、工場入り口へと駆けていった!ナムアミダブツ!ニンジャによる火事場泥棒の始まりである!

◆◇◆

「アイエエエ助けてーッ!私は高い学歴があり社会的貢献性が高くここで死ぬには惜しい人間なんだーッ!」「うるせぇーッ!イヤーッ!」「グワーッ!?足がーッ!」

意気揚々と工場に乗り込んだアンダースリーは、腹の立つ台詞を叫びながら労働者を突き飛ばしこちらに走ってくるサラリマンの足めがけて痛烈なローキックを放った。「アイエエエ足が!足の骨が折れた!」

足を粉砕され、泣き叫びながら床をゴロゴロと転がるサラリマンの髪を掴んで引き起こすと、アンダースリーは無慈悲に問うた。「おうオッサン、テメェのショドー段位はいくつだ?ア?」「アイエエエ!三段です!」

アンダースリーの顔が凶暴な優越感、そして嫉妬心に歪む!こいつは自分より格下だ!それなのにカチグミで、高そうなスーツを着ている!「俺の半分以下じゃねぇか!死ねーッ!」カラテパンチが顔面に炸裂!「アバーッ!」即死!

目標出目無し 【カラテ判定】2D6 [6,1]=自動成功

「ザマァ無いぜ!俺よりショドー段位が低いクセにカチグミ企業に就職しやがって!インガオホーだぜ!」

ハレバレとした邪悪な笑みを浮かべるアンダースリー!ナムアミダブツ!彼は自身のショドー・スキルに絶対の価値観を置いており、自分よりショドー段位の低い人間が自分よりカネを持っていたりいい暮らしをしていたりするのがとにかく許せなくて仕方ないのだ!

「さて・・・へへへ、お楽しみタイムといくか」顔面粉砕サラリマン死体の懐に手を入れ、財布をあらためる。「ア?」中身を見て顔をしかめる。万札が1。期待外れだ。

「ンだよ、大して入ってねぇな。これだからショドー段位が低いヤツは!」万札を懐に入れて死体を蹴り飛ばす。アナキストと警備員が銃撃戦を繰り広げている真っ只中に飛んでいったサラリマン死体は、弾幕の雨に晒されてあっという間にネギトロになった。「オッケー!次だ!ドンドン殺してドンドン奪う!」

獲得 万札:1 DKK:1
◆◇◆

「フンフンフフーン・・・」気ままな殺人ですっかり気を良くしたアンダースリーは、鼻歌を歌いながらリラックスした気分でアビ・インフェルノ・ジゴクと化したトーフ工場を歩く。周りは死と炎と破壊のケオスに覆われ、彼のちょっとしたトレジャーハンティング行為を他者の目から隠してくれていた。

「フンフーン・・・オッ、こいつぁ・・・」壁に貼られた工場見取り図を発見したアンダースリー。そこに記された「工場長室」の文字に視線が伸びる。

「工場長ってことはここの責任者だろ・・・つーことは一番カネ持ってるワケだ。部屋の金庫に万札やトロ粉末なんかのカネ目のモンを溜め込んでるに違いねぇな!」

メンポの下で舌なめずりをし、ニンジャ記憶力で見取り図を完全把握すると、アンダースリーは工場長室めがけて走り出す!

◆◇◆

「ドーモ、モーターヤブです。直ちに休憩してください」BRATATATA!「「「アババババーッ!」」」

(クソが!なんでヤブがいるんだよ!?)工場長室を目指していたアンダースリーの行く手を塞いだのは、ガトリングガンで職員やアナキストを虐殺するモーターヤブだった。

工場の警備用に配備されていたこのヤブは、アナキストの中途半端なハッキングにより暴走。動くもの全てに銃弾とサスマタを叩き込んで休憩を取らせようとする恐るべき殺戮機械と化していたのだ。

ヤブは工場長室へ向かう通路の前に陣取って動かない。どうするべきか。(いや待て、慌てんな!別に破壊する必要は無ぇんだ・・・)やり過ごして通路に飛び込めばいいだけだ。ニンジャ脚力をもってすればその程度・・・しかし、ガトリングガンのあの威力・・・もし当たれば・・・

(周りの連中も何もしやがらねぇ)アンダースリーは周囲を見回す。物陰で様子を窺いながら、数人のソウカイニンジャがヤブを取り囲んでいた。だが彼らはいずれもサンシタ、ニュービーであり、この狂ったロボニンジャに対してどうすべきか判断がつかないのだ。(お前らそれでもニンジャかよ!ショドー段位が低いヤツはニンジャになってもダメだな!)身を潜めながら、彼は他人の臆病を罵った。

「アイエエエ!ニンジャ!ニンジャナンデ!?」「ア?」背後で聞こえた悲鳴に振り返ると、そこには避難してきた労働者が腰を抜かして失禁していた。NRSを起こしたか。「よォし、いいタイミングだぜ!」アンダースリーはニヤリと笑い、労働者の襟を掴んで掴み上げた。「アイエエエ!?」

「よォ、オッサン。アンタのショドー段位はいくつだ?ア?」「アイエエエ!段位なんて持ってません!」それを聞いたアンダースリーの顔が喜悦に歪む!段位非所持者!非ショドー者の屑!自分とは比べ物にならぬ格下!迸る優越感!今にも達しそうだ!

「ハッハー!俺はショドー十段だ!スゲェだろ!」「アッハイ!スゴイ!スゴイです!」必死に首をガクガクと振る労働者を見て、アンダースリーは心底満足気に頷く。「じゃあ、スゲェ俺のために役に立て」「エッ」「イヤーッ!」労働者をヤブの前めがけて思い切り投げ飛ばす!

「アイエエエーッ!?」宙を舞う労働者!それを補足するヤブ!「休憩してください」BRATATATA!「アババババーッ!」労働者ネギトロ!「イヤーッ!」そのスキにアンダースリーは通路へ飛び込む!「見たか!ショドー十段のフーリンカザンを!」ネギトロになって床に降り注ぐ労働者に笑いかける。「非ショドー者の屑!有段者の役に立って良かったな!」

「さァて・・・オッ?」そのまま駆け出そうとするアンダースリーと入れ替わるように、錆色の装束を着た年若いニンジャが走ってきて、ヤブのガトリングガン掃射を連続側転で回避してトーフ・プレス機の陰に隠れた。

身のこなしからして、他のニュービーとは違う。ヤブを相手に戦う気だろうか?どちらにせよ自分には関係が無い。(せいぜいマジメに仕事してくれや。俺はその間にお宝ゲットと行くからよ!)アンダースリーは再び駆け出す。

獲得 DKK:3 合計4
◆◇◆

工場の奥へ奥へと進んでいくアンダースリー。プラントには「四角い存在」「凝固したアモルファス」などの製品名がショドーされている。「俺のショドーのがうまいな」優越感にほくそえみながら進んでいく。

あたりは労働者やアナキストの首や手足、内臓がそこかしこに散乱してひどい有様だ。「ニンジャだよなこれやったの。どんなサイコ野郎だよ」殺人を何ら躊躇しないアンダースリーですらも顔をしかめる惨状である。

(アイエエエ!家族!)廊下の先から悲鳴。覗いてみると、右手にマサカリを持ち、左腕から大蛇を生やした枯れ木めいた異常長身ニンジャが、泣き叫びながらモータルをゴア殺していた。「なるほど」関わらない方が良さそうだ。彼は先を急いだ。

◆◇◆

やがて細い通路にさしかかる。見取り図によればこの先に工場長室がある。そこには万札やトロ粉末、コケシなどのお宝が今か今かと自分を待っているのだ。「ウオーッ!待ちきれないぜ!」スピードアップ!

(ン?ニンジャか?)通路を走るアンダースリーは、自分の前を行くソウカイニンジャの姿を認める。(行き先が同じなのか?まさかこいつもお宝狙いじゃねぇだろな)疑念の眼差しを向けていると、ガゴンプシュー!((ヌゥーッ!?))

「アイエッ!?何だよ!?」突如として隔壁が降り、先行ニンジャが閉じ込められたのだ!「トラップか!?危ねぇ!俺がひっかからなくて何よりだ!」胸を撫で下ろす。

アンダースリーは降りた隔壁の前に立った。彼のニンジャ聴力は壁の中にゴボゴボと何か液体のようなものが注がれる音と、脱出しようと必死にもがくニンジャの呼吸を捉えた。さて、どうするか。

「まぁこりゃ自己責任だな。俺にゃ関係ねぇし」アンダースリーは肩をすくめて踵を返し、迂回するべく隣の通路へと向かう。タイムイズマネー。弱者はキリステ。ソウカイヤ首魁ラオモト・カンのモットーを思い出し、自分の行いは間違っていないと確認する。

一瞬だけ振り返り、隔壁に向かって言葉を投げる。「これまでの人生、ロクなことしてこなかったんだろ?インガオホーだぜ」いっそう強まるゴボゴボという音と苦しげな呼吸を背に、アンダースリーは隣の通路へ急いだ。

◆◇◆

工場長室の前にはアナキストが陣取っていた。手にはトゲトゲしたピッキングツール。どうやら施錠をこじ開けようと試みているらしい。

(フム・・・)アナキストはピッキングに夢中。周りには仲間らしき者もいない。暴動から抜け出してカネ目のものを漁る算段か。(他の連中が命がけでアナーキー行為してるのになんてヤロウだ。恥を知れってんだ)アンダースリーは義憤にかられつつもじっと様子を見守った。

やがてピーンという金属質な高音が鳴った。「ヤッタ!開いた!」アナキストはガッツポーズ!(よくやった!)アンダースリーもガッツポーズ!そしてアナキストの後頭部目がけスリケンを投擲!「イヤーッ!」

目標出目4 【ワザマエ判定】2D6 [3,3]=失敗

「アイエッ!?」「シマッタ!」手元が狂ったか、軌道が逸れてアナキストの顔の真横に突き刺さるスリケン!なんたるブザマ!だがアンダースリーは即座に責任を転嫁させるべく理論武装を行う!

(マトモなスリケンなら俺が外すワケがねぇ!どうせロクなショドー段位も持ってないやつが作ったスリケンだ!これだからショドー段位が低いヤツはイヤなんだよ!)

一瞬で自己正当化を完了させ己の精神を安定させると、薬物による興奮でNRSを抑え込みトゲトゲのピッキングツールで殴りかかってくるアナキストを迎え撃つ!

目標出目3 【回避(ニューロン)判定】3D6 [6,6,1]=成功

「ウオーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」アナキストによる攻撃を悠々と回避し、反撃のカラテチョップを叩き込むアンダースリー。倒れ込むアナキストの頭を踏みつけながら問う。「おい、コソ泥のアナキスト野郎。テメェのショドー段位はいくつだ?ア?」

「アイエエエ!初段です!」「ハッハー!俺は十段だ!」足を思い切り振り下ろしてカイシャク!「アバーッ!」ナムアミダブツ!

「フーッ・・・格下をブッ殺すのは気分がいいぜェー」アンダースリーはモータルを殺す時、可能な限り相手のショドー段位を聞いてから殺すようにしている。自分よりもショドー段位が低いと確認した上で命を奪うことで、彼は絶頂しそうなほどの全能感に満たされるのだ。

「おっと、浸ってもいられねェんだ」アンダースリーはドアにもたれかかるアナキスト死体を放り投げ、開錠されたドアノブをひねって悠々と工場長室へエントリーを果たした。

◆◇◆

「アイエエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」

突如として部屋に入ってきたアンダースリーを見て、極めて高級そうなスーツを着た中年サラリマンがNRSを起こして失禁した。胸には「工場長」の名札。

見れば机の上には唐草模様のバイオフロシキが広げられており、その上には万札やトロ粉末が乗っている。このままフロシキに包んで持ち出すのを待つばかりの状態だ。「オッサンご苦労!手間を省いてくれたな!」「アイエエエ!」アンダースリーの邪悪な笑みを浴びせられて工場長は再失禁し、高級絨毯に染みが広がった。

「フンフンフフーン・・・オ?」鼻歌混じりに万札を数えていると、携帯IRCにノーティスが入った。『チバ=サンを発見。保護完了につきミッション終了。救出命令を受けていたニンジャは帰還せよ』

「アァ・・・?」気分よく万札を検めていたアンダースリーの表情が険しくなる。「アイエエエ・・・」這って逃げようとしていた怒気に当てられて工場長は再々失禁!

確かにアンダースリーは早々にキンボシを諦め、火事場泥棒に狙いを切り替えた。出遅れたのでどうせ先に発見されるだろうと踏んだからだ。

だがこのタイミングでのノーティス。自分がトレジャーハントを始めてからそれなりに時間が経っている。(もしかして、マジメにチバ=サン探してりゃ俺が最初に見つけられたんじゃねぇか?)疑念!逃した魚の大きさが改めて感じられる!

だがアンダースリーはここで自分の不真面目さを悔いるようなニンジャではない。「クソが!他の連中は何やってやがんだ!?俺に妙な期待を持たせる前にさっさと見つけとけってんだ!」激憤!他ニンジャに責任転嫁!

「これだからショドー段位を持ってねぇニンジャはダメなんだよ!」テーブルに八つ当たりのカラテチョップ!「アイエエエ!」工場長再々々失禁!

「そもそもだ・・・工場長室があるのがいけねぇんだ!ここさえ無ければお宝の誘惑も無かった!チバ=サン救出に専念できたはずだ!」更なる責任転嫁!彼は決して自分の非を認めない。なぜならショドー十段だからだ。

「それをこの野郎が存在したせいで・・・許してはおけねぇぜ!」憤怒の形相で工場長を睨む!「アイエエエエ!」工場長再々々々失禁!

「テメェ!よくも俺のキンボシを台無しにしやがったな!」怒りに任せて工場長の背中を踏みつけるアンダースリー。途端にミシミシとイヤな音が響く。「アイエエエ!」激痛に悲鳴をあげる工場長に対し、彼は怒りの形相で問う。「おいこの台無し野郎!テメェのショドー段位はいくつだ!?アァッ!?」

「に、二十段ですグワーッ!」激痛を堪えながら答える工場長!「にっ・・・二十段だとォ!?」アンダースリーに衝撃!(なんてこった!俺より上じゃねぇか!)ショドー十段の誇りが揺らぐ!だが彼のニューロンはショドー十段の誇りを守るため最適化されており、これに対する理論武装が一瞬で行われた。

(俺が十段だったのはモータルの頃だ。今の俺はニンジャ。ニンジャ器用さがある!少なく見積もっても三倍のワザマエはあるはずだ・・・つまり今の俺は実質ショドー三十段!こいつより格上だ!)

ARAS!なんたる自分勝手且つ公平性を欠いた一方的見解に満ちた屁理屈か!だがアンダースリーがそう信じてしまった以上彼の中ではこれが真実になるのだ!「やっぱりテメェも格下だったじゃねぇか!死ねーッ!」頭部を踏みつけ粉砕!「アバーッ!」

「ハハァーッ!二十段のヤツを殺したのは初めてだ!スカッとしたぜ!」清々しい笑顔を浮かべ、他に何かカネ目のものは無いかと室内を見回す。壁には値打ちもののカケジクがかかっており、売ればそこそこ良い値になるだろう。「上等ォ!」アンダースリーは戦利品をまとめてフロシキに包み、ウキウキとした気分で工場長室を後にした。

獲得 DKK:1(合計5) 万札:10(合計11) トロ粉末 見事なカケジク
◆◇◆

「フンフンフフーン!フフンフンフフーン!」鼻歌を歌いながら、トーフエキスの氾濫した死体だらけの通路を機嫌よく歩くアンダースリー。今にもスキップを繰り出さんばかりだ。手に持ったフロシキから伝わるズッシリとしたカネの重みを感じる度に笑みがこぼれる。

サイバネ手術に必要な金額は確保した。戦利品を売れば当座の資金も安泰だ。サイバネで能力をブーストした自分はすぐにでもチームを組まされるだろう。そしてミッション終了後はショドー十段(実質三十段)のワザマエを存分にふるって達筆の報告書を提出してウエを唸らせ、自身の評価をグングンと上げていくのだ。輝かしい未来はすぐ目の前まで来ている!

「ヘヘッ!キンボシは惜しかったが、サイオー・ホースだぜ!」死体を蹴飛ばしながら歩いていくアンダースリー。「フンフンフフーン!フンフンフーン!」鼻歌も絶好調だ!「フンフー・・・ア?」ここで彼の歩みが止まる。何かが足にひっかかっている?怪訝そうに足元を見ると、死体の腕が彼の足を掴んで止めていた。

「エッ・・・」一瞬の硬直。続いて混乱。さらに次の瞬間に彼を襲ったのは、圧倒的なニンジャ存在感!「イ、イヤーッ!?」反射的に足を戻し、ジャンプで死体から距離を取る!もうコンマ数秒遅れていたら確実に足は奪われていただろうことを、彼のニンジャ第六感が告げていた。

死体は彼の目の前でゆっくりと起き上がる。その全身から大気を震わせるようなカラテが発せられ、トーフエキスに塗れた労働者制服が剥がれ落ちた。次の瞬間には岩肌のような装束が全身を覆い、口元も同様のメンポで隠されていた。カラテ。装束。メンポ。ニンジャだ。

(なんだよ・・・なんだよ・・・!)冷や汗が流れて止まらない。先ほどまでの気分がウソのようだ。ニンジャ。ありえないことではない。これだけ死人が出ているのだからニンジャソウル憑依の一つや二つは起こるだろう。だがしかし、目の前のコイツは・・・

「ウウ・・・ア・・・GRRRR・・・」ニンジャはくぐもった唸りを発した。メンポに隠れているが、どうもその口は人間のそれとは大分違う形状であるように思われた。メンポの下からは唾液と思しきものがボタボタと垂れ、硫黄のような凄まじい悪臭を放っている。

「GRRR・・・?」ニンジャはしきりに床を足でひっかいている。しばらくした後、今度は四つん這いになって腕で床をひっかきはじめた。土を掘るような仕草だ。(地面に潜ろうとしてんのか?)だが固いコンクリート製の床は掘れないと見え、落ち着かないように体をくねらせている。

「GRRR・・・GRRRRR!」ふと、ニンジャが顔を上げてアンダースリーを見た。「アイエ・・・」いや、正確には見ていない。その目は盛り上がった肉で覆われ、不恰好なハンダ付けをされたような有様だったからだ。耳と鼻も同様、肉で塗り潰されてその機能を失っていた。よくよく見れば装束に見えたものも、皮膚そのものが変質したものだった。

(ヘンゲヨーカイ・ジツ・・・いや、ちげェぞこりゃ)頭に浮かんだ考えは、彼のニンジャソウルがもたらすニンジャ第六感に一瞬で否定された。これはそんな小手先のジツではない。これは、こういう生き物なのだ。憑依直後に人体を作り変え、不可逆の変異をもたらすほど異質で強大な・・・レッサーやグレーターではない、恐らくは名付き、アーチ級のソウル・・・!

「GRRR・・・ドーモ・・・ハジメマシテ・・・」ニンジャは視覚聴覚嗅覚が塞がれた顔をアンダースリーに向け、口元からボタボタと唾液を垂らしながらアイサツした。「ダートドラゴン、デス・・・」

◆◇◆

「ドーモ、はじめましてダートドラゴン=サン。アンダースリーです」アイサツ直後、ダートドラゴンはアンダースリーに飛び掛った!「GRRRRR!」「イ、イヤーッ!?」咄嗟の側転で回避するアンダースリー!

回避の瞬間、メンポに覆われていたダートドラゴンの口が見えた。それはX字に切れ込みを入れて四つに開いた肉で出来た花弁のようで、内側にはアイアン・メイデンを思わせる鋭いトゲのような歯がびっしりと生えていた。

それを見たアンダースリーはニューロンの速度で理解してしまう。こいつは自分を食う気だ。ニンジャがニンジャを食うのだ。彼にとってモータルが虫ケラにしか見えないように、この強大なるアーチ級憑依者にはサンシタニンジャの自分はエサにしか見えていないのだ・・・!

「ア・・・アイエエエエエ!」まるでNRSを起こしたかのような恐怖に襲われ、アンダースリーは逃げ出した。震える手で携帯IRCを操作し、ソウカイネットに自身の位置情報と敵対ニンジャ存在、そしてアーチ級ソウル憑依者の可能性を送信。後方を振り返る。ダートドラゴンが今まさに飛び掛りの予備動作に入ったところだ!

目標出目4 連続攻撃2【回避(ニューロン)判定】
一回目:2D6 [4,4]=成功 二回目:1D6 [精神力使用]=成功
【精神力】3→2

「GRRRR!」「イヤーッ!」バック転で危うく回避!ダートドラゴンは着地後に身をくねらせて姿勢を崩したアンダースリーの首元を狙う!「GRR!」「イ、イヤーッ!」間一髪!首を傾けて回避!そのまま側転で距離を取る!

(危ねェ!だが何とかなったぞ!?)ソウル憑依直後の膨大な力に体が追いついていないのか、そのカラテは直線的で緻密さに欠ける。だが一撃でも食らえば終わりだろう。

(早いとこ救援に来いよシックスゲイツ!こういう時のための威力部門だろうが!?)

チバ救出作戦にはシックスゲイツ及びそれに準ずる組織内指折りの強豪ニンジャも駆り出されている。まだ工場内に留まっているなら救援に来るはずだ。それまで生き延びなければ!守らなければ!カネを、未来を、栄光への道を!

「畜生・・・俺はショドー十段・・・三十段だぞ!これからサイバネで強くなってのしあがって報告書でショドーの腕前を奮うんだ!テメェみてーなワケのわからねぇバケモン相手に死んでたまるかよ!」

強いて口に出し叫ぶことで己を鼓舞する!ショドー三十段の誇りで、異形アーチ級憑依者への恐怖を消し飛ばす!強大な敵を前にアンダースリーは吠えた!「テメェのショドー段位はいくつだッコラー!!」

◆◇◆

「GR・・・GRRRRR!!」二度の攻撃を回避されたダートドラゴンは不機嫌そうに唸ると、ビクリと身を震わせてその場に立ち尽くした。(何だ?)いぶかしむアンダースリーの前で、異形ニンジャは更なる変異を遂げていく。

両腕が胴体に吸い込まれるように縮んでいき、肩口にほんの少しのでっぱりを残して消滅した。頭と首がぐんぐんと太くなり、肩幅と同じほどに広がるとそのままくっついて、上半身が肉で出来た筒のようになる。口はもはやメンポが用をなさないほど大きく、肉の花弁はワニの口のように前に突き出している。人間の腰から上を巨大なワームに置き換えたかのような怪物がそこにいた。

(ふざけんなよ・・・ニンジャだってこう、生き物としての限度があるだろ・・・!?)あまりにおぞましい変形にアンダースリーは硬直する。しかし、あの口元からはさらに何か・・・不吉なアトモスフィアが発せられていた。あれをあのまま放置すれば、間違いなく自身の破滅に繋がるような予感。ヒサツ・ワザの前兆。死地に立たされた彼のニンジャ第六感は冴え渡っていた。

(逃げるか!?)背中を向けた瞬間に破滅は彼を襲い爆発四散するだろう。(避けられるか!?)不運なことにここは障害物もない狭い通路。直線的な攻撃に対してのバック転や側転ですらギリギリだった。あれより複雑な攻撃が来れば避けきれまい。(ふざけやがって・・・!)アンダースリーは覚悟を決めた!

「ナメんじゃねぇぞバケモン・・・俺を誰だと思ってやがる・・・!12歳でショドー十段!ニンジャになって三十段!アンダースリー様だッコラー!!」

全カラテを振り絞り、トビゲリを仕掛ける!ヒサツ・ワザの発動直前にカウンターを食らわせ、発動自体を阻止するしかない!

「このふざけた非ショドー者のニンジャ野郎!筆も持てねぇテメェなんぞに有段者の俺がやられるかーッ!!」アンダースリー渾身のトビゲリが、今にも破滅を吐き出そうとする醜悪な口に突き刺さり・・・

目標出目6 【カラテ判定】2D6 [2,1]=失敗

「「「「GRRRRRRR!!」」」」「ヌゥーッ!?」アンダースリー渾身のトビゲリは、しかし!ダートドラゴンの口から飛び出してきた三本の肉触手に弾かれてしまった!肉触手の先端にはダートドラゴン本体の口と同様の肉花弁と歯を供えた口が開く!なんたるおぞましき変異か!

「畜生、間に合わなかったかよ!?」弾かれた反動を用いて距離を取り、ダートドラゴンを警戒しながら通路の先へと走り出す!こうなれば回避、逃げの一手!救援到着まで持ちこたえるしかない!「GRRRRR!!」地面を這うように追ってくるダートドラゴン!三本の肉触手が牙を向いてアンダースリーに襲いかかる!

「GRRRR!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」迫る肉触手を避ける!チョップで叩く!肘で逸らす!ゴウランガ!カラテもワザマエも無いサンシタが、アーチ級憑依者の攻撃を凌ぎきっている!

「ハハハーッ!見える、見えるぜーッ!!」死地に立たされたことでニンジャアドレナリンが過剰分泌されたアンダースリーの主観時間は泥めいた遅さとなり、三方向から飛び掛ってくる肉触手の動きが苦も無く捉えられる!未だダートドラゴンの動きは直線的なものであり、フェイントや連携などの高度なカラテ技術が用いられていないのが救いとなっていた。

(なんだよ俺。ちゃんとカラテできるじゃねぇかよ)三本の肉触手の軌道を見切り、バック転し、チョップで攻撃を逸らし、(ショドー段位だけを誇ることなんか無かったんだ。きちんとカラテと向き合えば良かったんじゃねぇか)その場で小跳躍、眼前に迫った肉触手にカラテパンチを叩き込み、(サイバネでラクして強くなろうなんてバカな考えだったな。きちんと鍛えりゃ、こんなに強いんだ)「「「GRRRRR!!」」」三本の肉触手が一斉に襲いかかる!

「イィィィヤァーッ!」「「「グワーッ!!」」」ゴ、ゴウランガ!アンダースリーは右カラテパンチ、左カラテチョップ、右カラテキックを次々に繰り出して肉触手を全て撃墜!「ヘヘッどうだァ・・・ウッ!」しかし目と鼻と耳から出血!極度集中とニューロンの酷使、急激なカラテ・アクションにより心身ともに限界に近い!

「イヤーッ!」「「「GRRRR!!」」」ややフラつきながらも回避を続ける!(この通路を抜けりゃ広間に出る!そろそろ救援も来る頃だ!この先まで行けば・・・!)

あと少し、もう少し!バック転、側転、チョップ、キック、側転、パンチ、側転!(ここを必ず生き延びて、ずっと腐らせてたこのカラテをピッカピカに磨いてやる!俺のニンジャ人生はここから)

ドン、と何かにぶつかる音がした。側転を繰り出そうとしていたアンダースリーは、自分が床にブザマに倒れていることに気づいた。「エッ?」視線を動かすと、通路は隔壁によって塞がれていた。ユバ・トラップ。すでに作動した後の。あの時、放っておいた。「ア・・・」

肉触手が彼の足を捕え、無数の牙が突き立てられた。(カラテ)次に腕、次に首。(せっかく)そして肉触手に引きずられるようにして、ダートドラゴン本体が、アンダースリーを丸呑みにできるほどに大きく口を開けて迫ってきた。(ニンジャとして)

死に飲み込まれる寸前、アンダースリーは救いを求めるように隔壁を見た。頼む。死にたくない。やっとショドー十段に頼らなくて済むと思ったのに。ようやく胸を張って誇れるものができたのに。

「まぁこりゃ自己責任だな。俺にゃ関係ねぇし」無機質な白い隔壁は、どこかで聞いた言葉を彼にかけた。「これまでの人生、ロクなことしてこなかったんだろ?インガオホーだぜ」

暗闇がアンダースリーを包んだ。小さな牙が彼をゆっくりと削り取っていく。激痛と恐怖は、実際に彼が死ぬまでの時間よりもずっと長く続いた。

爆発四散
◆◇◆

その日、トコロザワ・ピラーはオマツリめいた活気で溢れていた。数時間前にチバ救出の緊急ミッションを出した時の張り詰めたアトモスフィアが嘘のようだ。

サンシタからベテラン、シックスゲイツに至るまで全てのニンジャがチバの無事を心から喜び、救出作戦が不幸な結果に終わった場合ラオモト・カンの怒りの矛先がどこに向くかという恐れが取り除かれたことに心底安堵していた。

暴動発生と鎮圧失敗の責任を追及されることを恐れたヨロシサン・フーズは、親会社であるヨロシサン製薬を通じてすぐさま莫大な金額の「誠意」をラオモトに献上した。上機嫌のラオモトはこの誠意の内のいくばくかを使い、チバ救出に従事したニンジャ全てにボーナスとして与えた。

ラオモト・カン自身ではなくチバのために働いたことでラオモト家に対する献身と忠誠を認められ、評価されたニンジャ達は喜び合い、互いの健闘を讃え、より一層の忠誠を自らの装束やメンポに記された誇りあるクロスカタナに誓った。

「「「ラオモト=サン、バンザイ!!」」」

トコロザワ・ピラーのソウカイニンジャ用スシショップで、あるいは酒場で、彼らはトーフ工場での活躍を語り合った。アナキストに叩き込んだカラテをやや誇張混じりに話し、モーターヤブに立ち向かって爆発四散した仲間のことを悼んだ。巨大なヘビの頭の上にアグラして、燃えるトーフ工場を闊歩するチバの姿を撮影した写真がニンジャからニンジャに手渡され、皆一様に目を白黒させた。

ラオモト家の子息を救うという名誉ある任務を放棄し、火事場泥棒を働き、仲間を見捨て、インガオホーの死を迎えたサンシタのことなど、誰の話題にも上るはずがない。親しくしていたニンジャもいなかったアンダースリーは、やがてソウカイニンジャの所属名簿からも抹消されると、誰一人として彼を思い出す者はいなくなった。

【サンシタズ・プライド】 終わり

狙い通り

というワケで、我がショドー自慢のサンシタ、アンダースリー=サンは狙い通りに爆発四散してくれた。邪悪なクズムーブをすればするほど後腐れなく爆発四散させられるので大変スカッとしていい気分になった。ありがとうアンダースリー=サン。無数の牙に包まれてあれ。

更なる公式シナリオ拡張可能性

まだまだソロ4の舞台にはいろいろな要素を投入できると思う。暴動に巻き込まれて今まさにディセンションしたニンジャを主役にしたり、ヨロシサンから脱走してインゴットを求めてやってきた野良バイオニンジャを主役にしたり、ソウカイニンジャ大量動員という状況を好機と見て大規模破壊兵器または広範囲ジツでイチモ・ダジーンを狙うザイバツ・ニンジャを主役にしたり・・・考えていけばキリがない。

もしこのシナリオを遊んでみて「アッ、じゃあこんな展開もあったのかな」なんて思ったなら、ソロシナリオをDIY行為してみるのもタノシイのではないだろうか。私はタノシイだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?