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【ライク・ア・カトゥーン・ニンジャ】(【ニンジャのチュートリアル】より)

公式ソロシナリオの二次創作を作ろう その2

5/5、ニンジャスレイヤー公式より「ニンジャスレイヤーTRPG入門用ソロアドベンチャー:第2シーズン1回目:トーフ工場へ急行せよ」が発表された。

私自身も大変愉快にプレイし、またこの舞台ならば他シチュエーションを想定してシナリオなども作れそうだなと考え、実際にソロシナリオDIY行為などしておおいに楽しんだ。

だがこの舞台ならばまだまだ別の物語も展開できそうだ。そうだ、「アナキスト襲撃に巻き込まれて重傷を負い、そこでディセンションしたニンジャ」の話なども面白いかもしれない。ニンジャなりたてチュートリアル的なソロシナリオだ。そう考えた私はさっそくDIY行為した。そして出来た。

チバ救出の裏側、アナキストの暴動に巻き込まれたモータルがニンジャとなり、炎上するトーフ工場から脱出するというシナリオだ。難易度と呼べるほどのものはなく、よほど運が悪いサンシタでなければ生き延びることができ、道中の選択肢で「このニンジャはどんなニンジャなのか?」というのを存分にロールできるようなシナリオにしたつもりだ。

誰か一人二人でも遊んでくれたらウレシイな、と思っていたところ、なんとありがたいことにラブサバイブ=サンプレイレポートを書き上げてくれた。ウレシイ。アリガトゴザイマス!

とても丁寧なプレイレポートで、元カネモチお嬢様・現マケグミ労働者のデッドリーチェイサー=サンのニンジャ・キャラクターが選択肢と共にドンドン形作られていくのがスゴイタノシイ。この素敵なプレイレポートに影響され、私自身もリプレイ風作文行為をせざるをえんばと思い立ったのだった。

自作サンシタのオリジン・エピソード

さてではいつものようにサンシタ生成を・・・と思ったのだが、今回は「以前生成したサンシタのオリジン」という形でやっていきたい。登場してもらうのは「ニンジャスレイヤーTRPG入門用ソロアドベンチャー:第2シーズン2回目:ツキジ・ダンジョン深部へ潜れ」で生成したサンシタ、ツーアップ=サンだ。

このツーアップ=サンは「ニルヴァーナ・トーフ工場の労働者で、武装アナキストの襲撃に巻き込まれてニンジャになった」過去を持つ、という設定になっている。今回のシナリオをプレイし作文行為することで「マケグミ労働者ヤヌマ・モニヒロがソウカイニンジャ、ツーアップになるまで」の経緯を描こうという算段だ。

すでにして未来は決まっているのだが、それに至るまでの経緯を描くことでツーアップ=サンのニンジャ・キャラクターをいくらかでも掘り下げられるかもしれず、個人的に中々興味深い試みになりそうだ。さて、トーフ工場で働くマケグミ労働者ヤヌマ・モニヒロは、いかにしてニンジャとなりソウカイヤに所属したのだろうか?

【ライク・ア・カトゥーン・ニンジャ】

その日、ヤヌマ・モニヒロはツイていなかった。目覚まし時計が故障して務め先であるトーフ工場に遅刻した彼は、上司にこっぴどく怒鳴られた上、普段のトーフプレス労働ではなく掃除を命じられた。なんでも今日はどこかのお偉いさんの子供がこの工場の見学ツアーに来るとかで、いつもは掃除しない場所をピカピカに磨かされ、午前中からクタクタになってしまった。

正午近くになって掃除もとりあえず終わり、朝食も入れていない胃袋に何か詰め込もうと食堂に向かっていると、突如警報が鳴り響いた。なんだなんだと思っていると銃やカタナで武装したアナキストの群れが入り口や窓を破って突入してきて、途端に工場内はアビ・インフェルノ・ジゴクと化した。

飛び交う弾丸。絶え間ない悲鳴。アナキストによる虐殺。警備員の反撃。死体の山。破壊される工場設備。氾濫するトーフエキス。混乱に乗じて乱入するヨタモノ。流出する可燃性有毒ケミカル物質。炎上。火災。ヤヌマの貧弱なニューロンは状況を全く理解できず、ただただ悲鳴を上げながら逃げ回るばかり。

「ドーモ、モーターヤブです。ただちに休憩してください」

そんな彼の前に現れたのが、アナキストにハッキングされて暴走し、労働者(及びアナキストとヨタモノ)を虐殺する警備用モーターヤブだった。カエル・セラピーのコトワザめいて恐怖で動けないヤヌマに、鋼鉄のロボニンジャは容赦なくマシンガンの銃口を向けた。

銃弾が吐き出される直前、そのヤブに赤くペイントされた「4」の数字がヤケにハッキリ見えた。マシンガンが吠え、ヤヌマの体にいくつもの穴を開ける。激痛。意識が薄れる中、彼は誰かの声を聞いた。

(ドーモ、ヤヌマ・モニヒロ=サン)闇の中から響いてくるような、不思議な熱を持った声のアイサツ。(我が名は・・・)そこまで聞こえたところで、彼の意識は闇に飲み込まれた。

◆◇◆

(なんだ・・・?なんか顔がヌルくて気持ち悪ィな・・・)

ヤヌマ・モニヒロは湿った不快感に目を覚ました。横向きに寝ていた彼は手を動かし、顔の下半分に感じた湿り気の正体・・・粘性の液体を指ですくい、目の前に持ってきた。トーフ・エキスだ。

(あン?なんでトーフが・・・いや、俺はどこで寝て・・・エート・・・)

ニューロンが徐々に目覚めていく。彼が寝ているのは自宅のベッドなどではなく工場の床で、そこは破壊されたタンクから漏れ出たトーフ・エキスが覆っていた。ぬるく感じたのは工場内の火災で温まっているからだ。そして自分は寝ていたのではなく、モーターヤブのマシンガンで撃たれて倒れ・・・

「アイエエエ!そうだ畜生!俺は撃たれて・・・」

慌てて上体を起こし、自身の体を確かめる。「アレ?」が、どこにも傷らしきものはないし、痛みもない。「エッ、気のせいか?」だが、作業着のあちこちには穴が空いている。まるで銃弾が貫通したような穴が。

「オイオイオイオイ?」シャツをまくり、体を確認する。数箇所が小さくへこみ、そこから流血したらしき跡が見えた。だが血は止まっている。やはり痛みもない。それどころか全身に不思議な活力が漲り、生まれ変わったかのような爽快感に満ちている。

「オイオイオイオイ・・・?」ヤヌマは混乱し、答えを求めるように体のあちこちを手で叩いた。「オッ」ポケットを叩いた手が中のコインに触れた。「こういう時は、まずコイツだぜ!」彼はそれを取り出し、指で摘んで目の前に持っていった。

これはヤヌマのジンクス。何か重要な事案や勝負事の前、そしてどう判断すればよいのかわからない事態に直面した時、彼はコイントスを行うことにより運勢を占うのだ。表なら幸運、裏なら不運。他人から稚拙なブードゥーだと笑われることもあるが、これによって彼の精神テンションは確実に上下する。良くも悪くもだが。

「さて、今日の運勢は?」

コインに向かって真剣に呟くと、彼はそれを親指で強く弾き、高々と跳ね上げた。落下してくるところを掴み取り、おそるおそる掌を広げる。

○ジンクス 判定
出目5(奇数) 失敗 【精神力】-1→【精神力】1

「クソーッ!裏かよ!まぁそうだよな畜生!今日はツイてなかったもんな!」結果を見たヤヌマは天を仰ぎ、顔を手で覆った。当然といえば当然。今日は朝から災難続きだった。この身体に起こった不思議な現象も、どうせロクなことではないのだろう。

BLAM!「アバーッ!」(ウープス!?)落ち込むヤヌマの耳に銃声と悲鳴が届く。(忘れてた!アナキストが暴れてて・・・ヤバイヤバイ!逃げねェと!)彼は急いで立ち上がって逃げようと「イヤーッ!」(エッ?)

立ち上がろうとしたヤヌマは自身でも全く意識しないままカラテじみたシャウトを発して床から飛び上がった。(オイオイオイオイ!)そのまま空中で三回転した彼は見事な着地を決め、(オイオイオイオイ!)勢いのまま三連続バク転と五連続側転を打ち、カラテ・ザンシンめいたポーズを決めた!

「オイオイオイオイ!?なんだよこれ!?」自分の意識と全く関係無いまま、まるでカンフー・ムービーのように動いた体に対して激しく動揺するヤヌマは思わず声を出した。

ヤヌマにはカラテ経験など無い。それどころか昔から運動が大の苦手である。鉄棒をすれば回転の勢いで頭から地面に激突し、タケウマをやれば倒れて後頭部を打ち、跳び箱に挑めば突き指と捻挫だ。「俺がバク転だの側転だのできるワケねぇだろ!?」だが現に今、彼の体はその運動をこともなげにやってのけた。これはまるで・・・

「アッヘ!まだ生きてるゥー!」「ウープス!?」ヤヌマが自身の身体に起こった変化に戸惑っていると、目を血走らせ、ヨダレを垂らしたモヒカンが粗悪なジャンク・チャカガンを彼に向けていた!暴動のドサクサで乱入したドラッグ中毒者だ!「生きた的ォー!」ナムサン、彼は生きた人間を撃ちたくて仕方がないのだ!

「ウェイウェイッ!待て!落ち着け!」慌てて制止するヤヌマ!だがモヒカンの耳には届かない!「撃っちゃうよォー!」モヒカンの指が引き金にかかる!

(クソーッ!やっぱりツイてねぇ!死んだかと思ったら生きてて、でもやっぱ死ぬんじゃねぇか!)ヤヌマは死を覚悟した。だがそれと同時に死ぬわけがないと確信していた。(エッ?ナンデ?銃で撃たれたら死ぬだろ?)ヤヌマの疑問に、ヤヌマ自身が答えた。(撃たれなければいい。簡単だ)

超自然の風が吹いた。工場で噴き上がる炎の発する熱が、ヤヌマの体に吸い込まれ始めた。熱は体を伝わり右腕に、掌に収束していく。(オイ・・・こりゃあ・・・)ヤヌマが呆然としていると、掌に小さな炎が生まれた。それは一瞬だけ燃え上がって消え、後に残されたのは・・・

目標出目2 【回避(カラテ)判定】4D6 [1,5,6,2]=成功

BLAM!銃弾がヤヌマを狙って吐き出される。「イヤーッ!」(オイオイオイ)彼は飛んでくる銃弾に向かって正確に右掌を突き出した。(簡単だ)ギィン!硬質な金属音が響き、銃弾は明後日の方向に弾き飛ばされ、空中で溶解して床に飛び散った。

「アッヘ?」「イヤーッ!」状況を理解できないモヒカンに向かい、ヤヌマは残像すら見える速度で右腕を打ち振った。周囲の空気が熱とカラテで歪み、掌で生成された赤熱する星が放たれた。銃弾を弾き溶かしたそれは熱と速度で宙を切り裂きながら飛び、モヒカンの持つジャンク・チャカガンに突き刺さった。「アイエッ!?」モヒカンは衝撃で銃を取り落とした。突き刺さったそれの発する熱が銃を溶かし、床に落ちて鉄の水溜りとなった。

「アイエエエ・・・」理解不可能な状況にモヒカンは失禁した。「アイエエエ・・・」その様を見て、当のヤヌマ本人も失禁しかける。今のは何だ?自分は何をした?だが考える間も無く、体が勝手に動く!「イヤーッ!」(ウェイウェイッ!待て!?何すンだよ!?)彼の体は全身にカラテを煮えたぎらせて躍動、目と口から炎を吹き上げてモヒカンに飛びかかった!

(決まっている。このクズを殺すのだ)ヤヌマは焼けた右腕を引き絞る。拳が赤銅色に赤熱し、空気が煮える。(ふざけンな!銃はダメにしたんだ、もう十分だろ!?)ヤヌマは必死に抵抗し、自分から自分の支配権を奪い返そうとする。

(殺さない理由があるか?)ヤヌマがヤヌマに問う。(言わないとダメかそれ!?)ヤヌマがヤヌマに怒鳴る。問答の最中、振り絞られた右腕は解き放たれ、赤熱した拳がモヒカンの顔面を・・・

「イ「ウオオオオオーッ!!ふざけンなってんだよーッ!!」

ギリギリでヤヌマを制したヤヌマは、右拳の軌道を顔面から逸らした。赤熱する拳が急速に勢いを減じ、モヒカンの肩をかすめる。熱風がモヒカンの肩を撫でると、血肉が沸騰して爆ぜ、骨が顔を覗かせた。「グワーッ!?」モヒカンは肩に受けた衝撃でコマめいてクルクルと回転しながら吹き飛び、壁に激突する!「グワーッ!」

「ハァーッ!ハァーッ!」ヤヌマは右拳を突き出した姿勢のまま荒い息を吐く。息には火の粉が混じった。視線を落とすと、床に突き刺さっている金属の星が見えた。先ほど自分が生成し、チャカガンを焼き溶かしたもの。「スリ・・・ケン・・・?」然り。どう見てもスリケンだ。即ち、ニンジャの武器。

「スリケンって、これじゃまるで・・・?」呟いた声が、妙にくぐもっていることに気づく。口元を触る。何かで覆われている。鏡面加工されたトーフプレス機側面に自分の姿を映す。「オイオイオイオイ」そこに映っていたのは間違いなく自分自身で、間違いなくニンジャだった。

口元はメンポで覆われ、作業帽はニンジャ頭巾に、作業着はニンジャ装束になっていた。それらは超自然の炎で編まれており、周囲の空気を煮え立てながらゆらゆらと揺れていた。「ニンジャ、ナンデ」呟きは炎となって大気を焼いた。ヤヌマ・モニヒロはニンジャとなったのだ。

「アバッ・・・アイエエエ・・・ニンジャナンデ・・・!?」壁に叩きつけられたモヒカンが、恐怖と混乱に満ちた視線でニンジャを見ていた。肩を押さえているが、命に別状は無さそうだ。ヤヌマはそれを見て自分が人を殺さず済んだことに心から安堵した。そして再びスリケンを生成した。「ふざけンなよ、オイ!」ヤヌマはニンジャにキレ、その腕からスリケンを取り落とさせた。

(なんだか知らねェが!さっきからクソーッ!焼き溶かしたり殺したりしたくてたまらねェ!そんなのはすげぇ邪悪ですげぇイヤだぜ!俺はいいヤツでいたいのに!)

ヤヌマは進んで善行をするわけではないが、かといって悪行をするわけでもない。自分の善性が試されるインシデントに極力出会わぬことを願いながら暮らし、いざ出会ってしまったら可能な限りローコストで自分のカルマが穢れぬような結果になるよう努力する、消極的な善人であった。必要もなく人を殺して自ら善性を損なおうなど、考えたこともない。だが。

「アイエエエ・・・」へたりこみ、失禁するモヒカンを見ると、残虐な殺人衝動が湧いてくる。邪悪を行使する欲求に突き動かされる。己の力を存分にふるい、無礼で無力な非ニンジャのクズを殺したい。赤熱する指を額にめり込ませ、脳を煮込んでやりたい。

(自分はニンジャなのだ。半神の怪物。人間ではない)ニンジャの目が残虐な炎に燃える。(故に、もはや善人でいる必要は無い。矮小なモータルの作ったバカげた倫理観に従う必要など無いのだ)。指先が熱を「バカハドッチダーッ!グワーッ!」

ヤヌマの左拳が、ニンジャの頬に叩き込まれる!「痛ェぞ畜生!やっぱ今日はツイてねェなァ!」ヤヌマ涙目!その顔から炎のメンポが剥がれ落ちる!

「ニンジャになったからってなぁ!そう簡単に・・・なんかこう・・・クソーッ!とにかくふざけンなよ畜生!俺は!」不服げに焼ける右腕を睨み、叫ぶ!「いいヤツで!いてェんだよ!」

ヤヌマはもう一度トーフプレス機側面に映った自分の姿を見る。炎の装束をまとい、赤熱する腕で全てを焼き溶かす、半神にも等しい邪悪な怪物がそこに映っている。「ふざけンなよ、オイ」ヤヌマはニンジャに向かって言った。「ニンジャってのは、そうじゃねェだろ」

「ハァーッ・・・!」ヤヌマは目を閉じ、ニンジャを想像する。彼が知るニンジャを。半神の怪物ではなく、カトゥーンや映画に登場する荒唐無稽なキャラクターを。(どうせニンジャになったってンならよォ・・・)カトゥーンのニンジャは悪役の場合が多かったが、探偵やスパイとして活躍するニンジャヒーローも存在した。(俺がなるのはこっちだぜ!)

目を開き、カラテを構える!(イヤーッ!)飛び出そうとするカラテシャウトを歯を食いしばってこらえ、カトゥーン・ニンジャめいた間の抜けたシャウトを搾り出す!「アーポウッ!」そのままカラテ演舞!体と魂を死に物狂いで制御し、殺戮の機能美に研ぎ澄まされた真のカラテを抑えこみ、カトゥーンや映画で見たデタラメなカラテを見よう見まねで宙に繰り出す!「アーポウ!アーポウ!アーポーウッ!!」

デタラメなカラテパンチを宙に放つたびに、ヤヌマの体から熱とカラテが失われ、装束や頭巾が剥がれ落ちていく!「ニンポだ!ニンポを使うぞ!」抵抗する右腕を無理やり動かし、デタラメなミスティック・サインを繰り出す!

やがて、ヤヌマの中に潜む邪悪な熱がぶすぶすと不満気な音を立てて魂の底に沈み込んでいった。完全には消えない。もはやそれはヤヌマの魂と同一化しているからだ。だが制御することはできた。カトゥーンめいたニンジャだと自身を定義することで!

「ハァーッ・・・ハァーッ・・・どうだ、畜生」息を吐く。火の粉は混じらない。改めて自身の姿を映す。何の変哲も無い作業着に作業帽。シケたマケグミ労働者だ。「ヘッ、ザマみろってんだ」ヤヌマは自身の魂にキツネ・サインを向けて笑い、自分に相応しいニンジャ装束を纏い始めた。

タオルを取り出し、鼻から下を覆う。帽子を後ろ向きに被り直す。上着を脱ぎ、腰の部分で両袖をブラックベルトめいて結ぶ。「アーポウ!」デタラメなシャウトと共にデタラメなカラテを構える。その姿を機械側面に映し、指を刺して笑う。「見やがれクソッタレ!これがニンジャだぜ!」半神や怪物という言葉とは程遠い、とびきりデタラメなニンジャがそこにいた。

「アイエ・・・」突如として発狂したように一人で騒ぎ出したニンジャを見て、モヒカンは失禁を続けていた。「アーポウ!俺はニンジャだ!ニンポを使うぞ!逃げないと死ぬぞ!アーポウッ!」ヤヌマはモヒカンに対してデタラメなミスティック・サインを作って威嚇!「アイエエエエ!助けてーッ!」モヒカンは肩を押さえて逃走!

2:見逃す

「フゥーッ・・・災難だぜ全くよォ・・・本当ツイてねぇ」ヤヌマはがっくりと肩を落として息をつき、危うく人の命を奪いかけた右腕を見た。「ウープス!」デタラメなミスティック・サインを作っていた指先が、超自然の炎を生み出していた。

「ニンポは使えるままかよ」だがその炎は実際弱い。先ほどまでの溶鉱炉めいた熱に比べれば、煮立てたオシルコのような温度。「上等だぜ」指を振ると、炎はあっさりと消えた。カトゥーン・ニンジャが扱うにはこの程度が手頃だろう。

さて、と周囲を見渡す。「ワオ、こりゃひでぇ」今まで気づくヒマも無かったが、ヤヌマが倒れる前より状況はさらに悪化していた。トーフ・エキスと死体、銃やカタナの転がる床。銃声と悲鳴はもはや聞こえず、かわりにあちこちから爆発音や炎が噴き上がる音が響く。生きている者はあらかた逃げるか死ぬかした後で、工場内がゆっくりと炎に飲まれていっているようだ。

「畜生、このままじゃヤバいよなァ!」ヤヌマが先ほどまでの半神的ニンジャでいたならば炎も熱も喰らい尽くしていたかもしれないが、今の彼にはそれはとても不可能であろう。ニンジャといえど不死身でも無敵でもないことを、ニンジャとなったヤヌマは直感していた。

実際のところ、彼に憑依したニンジャソウルは極めて強大でありほぼ不滅であった。だが、ヤヌマ自身が自分をカトゥーン・ニンジャと強固に自己定義したことでその不滅性は失われ、普通に死ぬサンシタになっていた。

◆ヤヌマ・モニヒロ(種別:ニンジャ)        PL:三笠屋

カラテ       4    体力        4
ニューロン     2    精神力       1(ジンクス失敗)
ワザマエ      1    脚力        2
ジツ        1    万札        0
DKK       0    名声        0

◇装備や特記事項
カトン・ジツLV1
○ジンクス:シナリオ開始時にD6を振り、偶数なら【精神力】+1、奇数なら【精神力】-1

能力値合計:7 総サイバネ数:0

「今日の俺はとことんツイてねぇ。どんなクソッタレ・インシデントが起こってもおかしくねぇ。」ヤヌマはポケットのコインを取り出して見つめ、心底憂鬱そうに呟いた。「実際、今の時点でもう腹一杯なくらいクソだ。死んで、生き返って、ニンジャで、殺しかけて。山盛りのクソだ」

「今日はツキには頼れねェ」コインを持ったまま握り、拳を作る。もう片方の手も同様に。「だから自力でクソを吹っ飛ばすしかねぇ!」胸の前で勢いよく拳と拳を打ち合わせる!「グワーッ!痛ェんだよ畜生!」ヤヌマ涙目!キアイが入る!

「クソーッ!なんだか知らねェが絶対生き延びてやるぜーッ!アーポーウッ!」ポケットにコインをしまい、ひとしきりデタラメなカラテ演舞を行うと、ヤヌマは燃える工場を駆け出した!

◆◇◆

「クソーッ!この通路で合ってるのかァ!?」トーフ・エキスを足で跳ね飛ばしながら工場を駆けるヤヌマ。業界大手のニルヴァーナ・トーフ社の工場は極めて広大且つ迷宮めいて入り組んでおり、部外者が案内無しで迷い込めばほぼ間違いなく遭難する。

ヤヌマはこのトーフ工場に勤めてはいるが、自分の勤務エリア以外の場所は知らない(知る必要が無いからだ)。だが、今日は掃除を命じられたために普段の作業エリアとはかなり離れた場所にいた。そのせいで土地勘が全く掴めず、見知らぬ場所をあてどもなくさ迷っているのだ。

「畜生、アタマがボンヤリしてきやがる!」燃え盛る炎のおかげで酸素が薄くなってきている。ニンジャ肺活量があればしばらくは平気だろうが、急いで脱出するに越したことはない。

「こっち・・・多分こっちが・・・いやでも今日ツイてねェから反対側か?」ブツブツと呟きながら通路を進むヤヌマだったが、(あン?なんかイヤな感じがしたな?)ニンジャ第六感が後方から迫る危機を知らせた。

振り返ってみると、(オイオイオイオイ)今まさに炎が何らかの貯蔵タンクを包み、中に充満した可燃性ケミカル物質に引火したところだ!(ヤバイヤバイヤバイヤバイ!)

KABOOOM!爆発が起こり、タンクの破片がヤヌマに向かって飛んできた!(クソーッ!やっぱツイてねぇ!)ジャンキーの銃弾よりよほど正確に飛んでくる破片!ヤヌマは破片を撃墜するため、デタラメなカラテを繰り出す!

目標出目4 【回避(カラテ)判定】4D6 [6,2,1,1]=成功

「アーポウ!」CLAAASH!飛んできた破片はカラテパンチによって見事撃墜!「痛ェぞ畜生!・・・オイオイオイオイオイ!?」

赤く腫れた手をブラブラと振るヤヌマだったが、KABOOOM!KABOOOM!次々と起こる連鎖爆発を見て息を飲む!KRA-TOOOM!一際大きい爆発が起こり、後方通路が凄まじい炎に包まれた!もはや後退は不可能だ!

「クソーッ!やっぱりツイてねェーッ!」背後から迫る炎!ヤヌマの拙いカトン・ジツとは比べ物にならぬ凶悪なケミカル業火が彼を飲み込まんと迫る!「ウオオオ畜生ーッ!」ヤヌマは再び走る!

◆◇◆

後方の炎を引き離すべく全力で駆けるヤヌマ。背に迫る炎との距離はどんどん離れていく。ニンジャの速度だ!「イェーフー!」モータルであればいざ知らず、ニンジャ脚力を持ってすればこの程度のことは実際容易い・・・しかし!

『火災感知につき防火隔壁作動ドスエ』突如として通路に合成マイコ音声が響き、前方に頑丈そうな防火隔壁が下りてヤヌマの道を塞いだのだ!「オイオイオイ!?ふざけンな!開けろよ!」壁を叩く!『カラダニキヲツケテネ』無情な返事!「クソーッ!ツイてねぇ!」

左右は壁、後方には炎。制御端末の類は無し。ここはカラテで突破するしかない!「畜生、やってやるぜ!」ヤヌマはカラテを構える!

目標出目5 【カラテ判定】4D6 [1,2,5,1]=成功

「アーポーウッ!」CLASH!ヤヌマの繰り出したデタラメなカラテ・ソバットが隔壁を引き裂いた!「ヤッタゼ!」裂け目から体を潜り込ませて隔壁の向こうに出ると、「アーポウ!アーポウ!アーポウ!」連続カラテパンチを叩き込んで裂け目を元通りにして閉じる。

「フゥーッ、これで大分マシになるだろ」隙間があるとはいえ、ある程度ならば隔壁として機能するはずだ。とはいえまたどこで爆発が起こるかわからない。ヤヌマは再び駆け出した。

◆◇◆

通路を抜け、比較的開けたパッケージング・エリアへと出たヤヌマ。「フゥーッ!」まだ十分に残っている酸素を吸い込み、汗を拭う。ここも火の手が回っているが、先ほどまでと比べれば比較的穏やかだ。

「やれやれ、一息つけるか・・・オッ?」ヤヌマの視線が、壁際に設置された自販機に吸い込まれる。よく冷えたバリキやザゼン、タノシイなどの魅力的なドリンク類が彼の焼けた喉を誘惑する。「ウーッ、我慢できねェ」喉を鳴らし、自販機に駆け寄る。

ポケットからトークンを取り出そうとして、(待てよ?どうせこれも焼けてダメになるんだしカラテで壊してタダで頂けばいいんじゃねェか?)と思いつき、しかしそれはやっぱり邪悪な行為なのでトークンを取り出すヤヌマ。だがその時!

KABOOOM!KABOOOM!KRA-TOOOM!「ウープス!?」ナムサン、またしても連鎖爆発!あっという間に炎に包まれるパッケージングエリア!「クソーッ!おちおちドリンクも飲めねェのかここはよ!?」背後の炎と目の前の自販機、手元のトークンを順番に睨み地団駄を踏む!

「ふざけンじゃねぇ!俺は絶対飲むぞ!」何一つうまくいかない事態に逆上し、トークンをスリットに投入するヤヌマ!商品ランプ点灯!「冷えたバリキだ!」ボタンを押そうとする!だがその時!

「アイエエエエ助けてーッ!私には家庭があり家のローンもまだまだ残っていてもうすぐカイシャで出世できそうなのでここで死ぬわけにはいかないんだーッ!」

(今度は何だよ!?)突然聞こえてきた悲鳴に首を巡らせる。ヤヌマのニンジャ視力が、やや前方でうつぶせに倒れてもがく中年サラリマンを発見した。見れば爆発で倒れかかってきた重そうな棚に足を挟まれ、身動きが取れないようだ。このまま放置すれば遅からず炎に飲み込まれ絶命するだろう。誰かが助けなければ・・・

「ああもうクソーッ!本当ツイてねぇ!」ボタンを押そうとしていた指を離して頭をかきむしる。ヤヌマは何もしないまま善人でいたいため、こういった自分が手間や労力をかければ誰かが助かるが、そうしなければ見捨てたような気分になる事態・・・即ち、自分の善性を試されるような事態に直面するのが大嫌いなのだ!

「俺には何の責任もねぇ!見知らぬオッサンを助ける義理はひとっつもねぇ!」そうは言っても彼の善性はそれを咎める!あのサラリマンを見捨てて(ヤヌマはそう考えてしまう)自分を善人だと思えるか?答えはNOだ。「ウオオ畜生ーッ!」

1:サラリマンを助ける

「アーポウ!」ヤヌマは床を蹴ってサラリマンの横に着地!「アイエッ!?ニンジャ!?」突如現れたニンジャにサラリマン失禁!ヤヌマはそれに構わず渾身のカラテキックで棚を蹴り飛ばす!「アーポウ!」デタラメなフォームだったためにつま先を強打!「痛ェ!」涙目!

「アイエ・・・ニンジャナンデ・・・アリガトゴザイマス・・・」サラリマンはNRSに陥りかけながらもペコペコとオジギを繰り返し、ヨタヨタと逃げていった。

「ハァーッ・・・」サラリマンの背中を見ながらヤヌマはため息をついた。あの棚は実際重く、モータルであった頃のヤヌマなら持ち上げることは不可能であっただろう。その場合、彼は「できないのだから仕方ない」と自分を許し、善性とカルマを保ったままでいられたはずだ。

だが、ニンジャとなったことで「できないのだから仕方ない」ことは劇的に減った。これから先の人生、善性を試される場面において「できないのだから仕方ない」で逃げることは相当難しくなっただろう。ヤヌマはニンジャであり、ニンジャは大体のことはできてしまうからだ。

「クソッ、本当ツイてねぇ。どうしてニンジャなんかに・・・」ぼやき、トークンを入れたままだった自販機に向かおうとする。KABOOOM!爆風が自販機を飲み込んだ。「ふざけンなよ」ヤヌマはもはや泣き出したい気分で、数秒の間立ち尽くした。

◆◇◆

「オッ!」パッケージング・エリアを抜けたヤヌマは、壁にかかったパネルを見て目を細めた。パネルには右向きの矢印と共に『資材搬入口』の文字。外部からトーフ原料などを搬入するための場所。外に通じている。「つまり出口だ!イェーフー!」

ガッツポーズを作り、ポケットからコインを取り出してキスをするヤヌマ。「ようやく不ヅキも終わりだ、そうだろ!?」コインをしまい、連続側転を繰り出して搬入口へとエントリー!BRATATATA!銃弾の雨がヤヌマを出迎えた!

「ウープス!?」ヤヌマは連続側転したまま銃弾を回避し、コンテナの陰へと隠れる!「オイオイオイオイ!?」そっと身を迫り出して銃撃の主を確認する。「ドドドドーモ、モーターヤブはかかか賢く休憩を取らせます」鋼鉄のロボニンジャが、搬入口を塞ぐように陣取っていた。

「たたたただちに休憩休憩」ノイズ混じりの電子音声を発しながらカメラアイを残虐に回転させるヤブ。周囲に死体となって転がっている工場警備員やアナキストの必死の反撃によってか、鋼鉄のロボニンジャは装甲のあちこちがへこみ、全身からブスブスと黒煙を上げ、駆動するたびに耳障りな異音を響かせている。もはや大破寸前で動くのもやっとというところだ。

「クソーッ!まだツイてねぇってのかよ!?」ヤヌマは嘆き、そして気づく。モーターヤブに赤くペイントされた「4」の数字を!「あいつは・・・!」間違いない、自分を殺したヤブだ!

「野郎ーッ・・・!」ヤヌマの目が怒りに燃える!それは自身に次々と降りかかってききた理不尽への怒り!「あいつに撃たれなきゃニンジャになんてならずに済んだんだ!」ヤヌマのニューロンに、ニンジャとなって以降の災厄が次々とフラッシュバックしていく!

半神の怪物となり、危うく人を殺してしまいそうになったこと。タンクの破片をカラテパンチで撃墜し、拳が赤く腫れたこと。炎に追われながら走り回ったこと。ニンジャでないなら逃げられた状況を逃げられなくなったこと。棚を蹴り飛ばした時につま先をぶつけたこと。ドリンクが飲めなかったこと。トークンを損したこと。

「それもこれもみんな!」ジャンプしてコンテナの上に乗る!「元をたどりゃあ!」ヤブを指差して叫ぶ!「てめぇのせいじゃあねェかーッ!!」ヤヌマが完全にキレた!

先ほどまでの異常事態の連続に悲鳴を上げっぱなしでいたヤヌマの貧弱なニューロンはついに限界に達した。もはや出口に陣取っているヤブを倒さねば出られないというような考えは彼に無い。ただただヤブへの怒り、己に降りかかった理不尽への怒りがあるだけだ!

「ウオオ畜生!絶対に許さねェーッ!」ヤヌマはスリケンを生み出して投擲!「イヤーッ!」自ら抑えていたカラテじみたシャウト!だがその声は半神のそれではなく怒りに満ちたヤヌマのものだ!スリケンは熱を持つことなく飛び、ヤブへ向かう!

目標出目4 【ワザマエ判定】1D6 [5]=成功 ダメージ1
モーターヤブ:【体力】2

「ピガーッ!?」ブルズアイ!スリケンはへこみ歪んだ装甲の隙間に見事命中!「どうだ畜生!」のけぞるヤブを、そして命中箇所が溶解していないのを見てガッツポーズを繰り出すヤヌマ!制御できている!「休憩!」BRATATATA!ヤブは機体にマウントされたマシンガンを発射!

目標出目3 【回避(カラテ)判定】4D6 [6,2,1,3]=成功

「二度も喰らうかァーッ!」ジャンプを繰り出して回避するヤヌマ!ヤブのマシンガンは機体同様ボロボロであり狙いが甘く回避は容易!そのまま接近し、脚部関節を狙って近接カラテ!「アーポウッ!」デタラメなフォームのカラテ・ストレートだ!

目標出目4 【カラテ判定】4D6 [3,2,4,5]=成功
モーターヤブ:【体力】1

「ピガガーッ!?」弱点である関節部に衝撃を受け、さらに激しく煙を吹くヤブ!もはや限界か!「休憩休憩休憩だ!」最後のあがきめいて右腕のエネルギー切れショック・サスマタをヤヌマに向かって突き出す!

目標出目3 【回避(カラテ)判定】4D6 [1,2,5,1]=成功

「ハッハー!ちゃんと狙えよなァ!」ヤヌマは軽くステップを踏んでこれを回避!そのままデタラメなミスティック・サインを作る!「ニンポを!」指先に炎が宿る!全てを溶かす半神の邪悪な熱でなく、ヤヌマ自身の怒りの炎が!「喰らいやがれ!」

目標出目4 【ジツ+ニューロン判定】3D6 [1,4,6]=成功 【精神力】0
モーターヤブ:【体力】0

「ピガガガガーッ!?」ヤヌマの指から放たれたカトンが装甲の隙間や関節部に容赦なく降り注ぐ!高熱で焼き切られるヤブの内部システム!「ピガッ・・・ピガガッ・・・」ヤブは一際黒く大きな煙を噴出すと、その場に崩れ落ちて機能停止した。

「イェーフー!どうだこのクソッタレのポンコツ野郎!俺の敵討ちだぜ!」ヤヌマは飛び上がってガッツポーズ!そしてデタラメなカラテ演舞!「ウッ!」しかし唐突な頭痛に顔をしかめる。勢いで使ったジツで精神力が限界に達したのだ。

「ウウ、クソッ・・・脳ミソがあちぃ・・・」鼻血を垂らしながらふらふらと歩く。実際、彼のニューロンはすでに限界を超えてオーバーヒートしていた。連続して起きた異常事態、極度の緊張、凄まじいストレスが彼の精神を削り取っていた。ヤブを倒し、工場からの脱出が叶ったことで緊張の糸が切れ、今まで抑えていたダメージが表出したのだ。

「ああ、でも畜生・・・これでやっと・・・」よろめきながらヤブを乗り越え、倒れ込むようにして搬入口の外に出る。脱出成功。生き延びた。「どうだクソッタレめ・・・」か細く笑い、仰向けに倒れる。限界だ。しばらくここで休もう。そしてこれからのことを・・・

「ドーモ」

ヤヌマの顔を覗きこむように見下ろした男が、彼にアイサツをした。男の顔はメンポで覆われており、着ているものはニンジャ装束だった。装束の胸部分には「キ」「リ」「ス」「テ」の文字が刻まれたクロスカタナのエンブレム。

「ドーモ」「ドーモ」さらに二人がアイサツした。やはりメンポとニンジャ装束。そしてクロスカタナ。

もはやヤヌマに思考する力は残っていなかった。代わりに彼のニンジャ第六感が判断を下した。この三人はニンジャだ。自分以外にもニンジャはいるのだ。そいつらが今、自分を取り囲んでいる。

「ニンジャ、ナンデ」ヤヌマはNRSを起こし、そのまま意識を失った。

◆◇◆

(クソーッ!本当ツイてねぇーッ!)

ここはトコロザワ・ピラー内、ソウカイニンジャ用のトレーニング・グラウンド。クロスカタナ紋の入った支給ニンジャ装束とメンポをつけたヤヌマは、己の不運を呪いながらトゲの生えた木人にカラテを叩き込んでいた。

トーフ工場のアナキスト鎮圧及びチバ救出のため工場にやってきた三人のニンジャを見てNRSを起こしたヤヌマはそのままヤクザベンツに乗せられてトコロザワ・ピラーへ直行。気がついた時には恐るべきシックスゲイツのニンジャと向かい合っており、どういう状況なのか全く理解できずに再びNRSに陥りかけた。

ニンジャはヤヌマにソウカイヤがネオサイタマの闇社会秩序を守る組織であること、支給装備やトレーニング施設の充実を語ったが、未だ混乱しているヤヌマのニューロンには全く届かず、ただただ眼前の恐るべきニンジャに対する恐怖で首をガクガクと縦に振るばかり。

1:なる

そうこうしている間にあれよあれよと手続きが進められ、ヤヌマはソウカイニンジャとなってしまっていた。そして今、彼はニュービー・ニンジャとして規定のトレーニングをさせられているのだ。

(闇社会の秩序とか何とか言ってたけど、要するにヤクザじゃねぇか!ニンジャでヤクザ!邪悪に決まってるぜ!畜生、このままじゃ俺のカルマが絶対ヤバイ!)

すでにヤヌマはソウカイヤがヤクザであり、邪悪なニンジャ組織であることを理解していた。研修では明らかに違法行為であろうピッキングやハッキングの技術を学ばされ、そして今は殺人カラテのトレーニングをさせられている。何のためかは想像するまでもない。誰かを殺すためだろう。(そんなのは絶対イヤだぜ!)

「アーポウ!アーポウ!」木人にカラテを叩き込みながらヤヌマは考える。(何とかしてカネをためて、キョートやオキナワにでも逃げるしかねぇ!ヌケニンだ!)ネオサイタマの外に逃げれば組織の追っ手もかかるまい。末端をわざわざ追いかける手間をかけるとは思えない。

装束の懐に忍ばせたコインに手を伸ばす。あの日は本当にツイていなかった。そして今日までずっとツイていない。だがそうそう不運ばかりは続かないはずだ。そろそろ幸運がやってくるだろう。その時はチャンスを逃さないことだ。そうすればきっとうまくいく。

ヤヌマは己のジンクスを信じ、幸運がやってくるまで生き延びるために、木人にカラテを打ち込んだ。「アーポウ!痛ェ!」突き出した拳は木人から生えるトゲに刺さり、彼は己の不運を呪った。「ああ畜生、本当ツイてねぇ!」

【ライク・ア・カトゥーン・ニンジャ】終わり

【ウェル、トゥデイズ・フォーチュン・イズ?】 に続く

人に歴史あり

と、いうワケでツーアップ=サンがソウカイニンジャになるまでのお話をソロプレイして作文行為してみた。前回の時点では特に何も考えず「アーポウ!」や「ニンポを使うぞ!」と言わせ、デタラメなカラテ演舞やミスティック・サインをさせていたのだが、今回オリジンをやるにあたってそれになんか理由があれば面白いな、と思い、結果こうなった。個人的には中々面白い結果になったと思う。

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