見出し画像

【マッスル・イン・ザ・テンプル】 (忍殺TRPGソロアドベンチャーシナリオ2より)

ありがとう公式第二弾シナリオ

二月六日、ニンジャスレイヤー公式アカウントよりTRPGソロアドベンチャーシナリオの第二弾が発表され、ツイッター上では数多くのニンジャヘッズDIYサンシタニンジャがそのミッションに挑んだ。

彼らはミッションを成功させ、あるいは失敗し、ある者は赤黒の死神に爆発四散させられ、ボトルネックカットチョップに失敗して泣きながらおうちに帰り、そしてふわふわローンにどこかに連れ去られていった。そのライブ感溢れる悲喜こもごもは実際タノシイであり、同時多発ゲームブック行為のゴダイミを存分に味わえるものであった。

前回と違い、今回のソロアドベンチャーは私自身もリアルタイム参加していた。その結果を元に作文行為をしたのだが、自分でもニンジャのキャラを掴めぬまま進行したリアルタイムとは大分違うものとなってしまった。どうかご容赦いただきたい。

油断ならぬサンシタ

前回前々回に作成したサンシタは、シナリオ上では一応生還したものの、諸般の事情で爆発四散してしまった為、今回は新たにサイコロを振って新規サンシタ生成を行うことにした。結果はこうなった。

ニンジャ名:プレートメイル
【カラテ】:6
【ニューロン】:6
【ワザマエ】:2
【ジツ】:2(ムテキ・アティチュード)
【体力】:6
【精神力】:6
【脚力】:3
装備など:ZBRアドレナリン注射器

なんとカラテとニューロンは初期最高値。ワザマエは低いもののこれは中々油断ならぬサンシタだ。オマケにジツも5を出し、ついで振った目が6だったために好きなジツを選べるという幸運にありついた。

ムテキ・アティチュードを選択したのはつい最近再評価されたアイアンヴァイス=サンにあやかってのことだが、高いカラテと低いワザマエとあいまって、「手先は不器用だがカラテが強く強靭な肉体を持つサンシタ」というイメージができた。きっと筋肉がスゴイ。ボディビルとかで鍛えてる。ならばナチュラル志向だろうと思ったのでサイバネは無しとした。十分に強力なステータスでもあるし。

体を鋼鉄化するムテキ・アティチュード、そして全身を鎧のように覆う筋肉といったイメージから、ニンジャ名はプレートメイルとした。ブラックメイル=サンにちょっとあやかっている。

さあ、この油断ならぬサンシタ、プレートメイル=サンはネオサイタマの世界を生き延びることができるのだろうか?

【マッスル・イン・ザ・テンプル】

重金属酸性雨が降り注ぐネオサイタマの夜。とある高層ビルの屋上では、歴史を感じさせる寺院が奥ゆかしくライトアップされていた。その名をホーリースマイト・オブ・ブッダ・テンプル。マッポーの世にあってなお、取り壊されることなく高層ビル屋上にそのまま移設されるほどの由緒ある寺院だ。

喧騒とネオン煌く地上と切り離された、まるで平安時代のようなゼンを感じさせる静けさ。ブッダへの信仰無き者であってもセイシンテキを感じざるを得ないアトモスフィアである。今ここに佇む一人の男を除いての話であるが。

「グフフ・・・ここかァー・・・」

それはまるでこの場に似つかわしくない、ゼンや静寂とは縁遠い雰囲気の男であった。黒々とした頭髪は力強い角刈りで、7フィート近い長身の体は健康的に浅黒い。身に付けているものといえば黒のビキニパンツのみだが、全身を覆う逞しい筋肉のせいで、鋼鉄の鎧を着ているかのような錯覚を見る者に覚えさせる。まるで今しがたボディビル大会の会場から抜け出したような格好である。

だが・・・おお、見よ。ビキニパンツに巻かれたブラックベルトを。鼻から上、額までを覆う黒いメンポを。そしてそのメンポに刺繍されたクロスカタナのエンブレムを!そう、彼はソウカイヤのニンジャなのだ!その名をプレートメイルと言う。

プレートメイルに課せられたミッションは、この寺院に安置されているミヤモト・マサシの記した兵法書の奪取。ミヤモト・マサシの信奉者であり、マサシ関連の歴史的アーティファクト収集者であるソウカイヤ首領、ラオモト=カン直々の命令である。巻物の所有者であるこの寺院の住職が、ラオモトから請けた再三の買取オファーを全て断ったためだ。

ラオモトはこういった趣味に決してカネを惜しまぬ。買取に提示された額は莫大なものであっただろう。だが高潔なる住職はそれらを全て跳ね除けた。カネでは動かせぬと判断したラオモトは暴力という手段を用いた。即ち、ニンジャの力だ。

「グフフーッ、ラオモト=サン直々のミッションを受けられるとは何たる僥倖・・・これは何が何でも成功させねばならぬワイ」

己に課せられた使命、そしてそれを達成した際のボーナスに思いを馳せ、プレートメイルは無意識の内にポージングを決める。フロント・ダブルバイセップス。盛り上がった筋肉から発せられる熱が夜の冷気に触れ、彼の体を白い湯気で包んだ。

ミッション遂行に当たっての注意事項は「なるべく殺すな」。目的は巻物であって殺人ではない。由緒ある寺院での殺人ともなれば隠蔽も少々面倒なことになる。ソウカイヤは無慈悲なヤクザであるが、快楽殺人者の集団ではない。必要であれば誰であろうと殺すが、そうでなければ殺さない。不必要な殺人は社会の秩序を乱し、搾取すべきモータルのマネーや労働力を減らすことになるからだ。

だがしかし、血の気の多いニンジャ・・・特にニュービーやサンシタは頭では理解していても暴力衝動を抑えられず、ついつい血を流すことになりがちだ。だがこのニンジャ、プレートメイルに限ってはそういった無益な流血沙汰とは無縁と言えた。

「グフフ・・・殺人など不毛で無益なもの。死んでしまってはこの筋肉を見てもらえないではないか。生きていればこそ我が筋肉を目に焼きつけ、脅威と賞賛の視線を浴びることができよう・・・」

リラックス・ポーズを決めながら呟く。大学時代にボディビルを始めたプレートメイルは肉体を鍛えていく内に筋肉の暗黒面に堕ちてしまい、就職先のカイシャで同僚や上司に対して執拗なマッスル・ハラスメントを続けてクビになった。筋肉承認欲求に餓えた彼はツジポージング、ハック&マッスル、ポージング拉致監禁、ポージング・ストーキングと言った反社会的ポージング行為に手を染め、その結果マッポに正当防衛銃撃された。

そうして死にかけたところにニンジャソウルが憑依し、程なくしてソウカイヤにスカウトされたのである。最先端のトレーニング設備があると聞いたプレートメイルは二つ返事で承諾し、心ゆくまで筋肉を鍛える充実した日々を送っていたのだ。

ニンジャネームの由来にもなった鋼鉄の鎧めいた筋肉から繰り出されるプレートメイルのカラテはビッグニンジャにも匹敵する力強さであったが、彼自身はカラテやイクサを好まなかった。プレートメイルが愛するのは筋肉であり、それを見せつけることこそが生きがいであった。

プレートメイルのこの性癖はヤクザクランへのミカジメ料徴収やモータルへの脅迫で大いに役に立った。彼は反抗的モータルの前に立ち、ポージングを決める。何時間でも、相手が折れるまで続ける(相手が折れても続ける)。ニンジャ存在感と凄まじい筋肉の相乗効果は、どれほど強固な意志を持つモータルをも恐れさせ、屈服させることができたのだ。

プレートメイルは自らの筋肉を心行くまでアピールすることができ、その結果として組織内で評価される。まさにアブハチトラズであった。非殺傷の脅迫が得意なプレートメイルにこのミッションが下されたのは必然であったのかもしれない。

「グフフーッ・・・さて、ブッダへの信仰篤きボンズ=サンたちに、我が筋肉が通用するか、試してみるとしよう・・・」

白い歯を輝かせて笑ったプレートメイルは、ポージング・ウォークで寺院へと乗り込んで行く・・・

(グフフ・・・さすがは名の知れた寺院。警備も万全というワケか)

物陰からアブドミナル&サイを決めながら様子を伺うプレートメイルの目に、警報装置と見張りのサイバーボンズが入る。本堂の警備だ。サイバーボンズはサイバネアイと聖職者用拳銃で武装しており、僧衣から覗く腕や脚に確かな筋肉が感じられる。キョートのバトルボンズほどではないにせよ、相当な鍛錬を積んでいることが伺えた。

(グフフーッ!信仰によって鍛え上げられた清廉な筋肉!奥ゆかしくも美しい!)

今すぐ飛び出して筋肉勝負を挑みたい気持ちを抑え、プレートメイルは思考を集中しながらフロント・ラットスプレッドを決める。ポージング・マインドセットだ。

(今目の前に出ていってはまず間違いなく戦闘になる。そうなれば殺傷行為に発展するだろう・・・それはうまくない。なるべく殺人は控えろとの沙汰だし、何よりあのような素晴らしい筋肉を死肉にするなどモッタイナイの極みというもの)

ならば戦闘を避け忍び込むか。幸い照明は弱く、周囲は薄暗い。ニンジャ敏捷性をもってすれば気づかれることなく本堂に侵入することも可能だろう。また、警報装置は簡素なもので、手持ちの携帯ハッキングツールから無線で遠隔ハッキングも可能だ。どちらを選ぶべきか?

(グフーム・・・よし、ここは隠密重点)

プレートメイルはこう見えて知能は決して低くなく、初歩的なハッキング程度なら何なくこなせる。だが、彼は常に自らの筋肉を輝かせる機会を見逃さない。ゆえに選択肢はより筋肉を使うものに絞られる。つまりハッキングよりもスニーキングだ。

(グフフーッ、筋肉とはパワー、そして敏捷性よ!)

にこやかな笑みを浮かべ、腕立て伏せの構えを取ったプレートメイルは、そのまま腕を上げ下げしながら静かに前進する。スニーキングとトレーニングを兼ねた恐るべき隠密である。

ワザマエ判定:2,1 【失敗】

(グフフ・・・うまくいっておるワイ)

闇の中を腕立て伏せしながら進むプレートメイル。本堂まであとタタミ五枚。このまま何事も無く 「クセモノダー!」 「グフッ!?」 

サイバーボンズのサイバネアイがプレートメイルの姿を捉える!腕立て伏せ中にも絶やさなかったにこやかな笑み、その口から覗く白く輝く歯が照明に反射したのだ!なんたるボディビルダー特有の笑顔を絶やさぬ習慣の恐ろしさか!

「仏敵射殺重点!」 聖職者用拳銃から重金属弾丸が連続発射!いかなニンジャ、それもプレートメイルの筋肉とて、これを食らえばタダでは済まぬ!

カラテ判定:3,3,6,2,3,6 【成功】

「バルク!」 プレートメイルはボディビルじみた独特なシャウトを発し、体を横向きにしてポージングを決める!サイド・トライセップスだ! 「バルク!」 左右交互に素早くポージングを繰り出すことにより銃弾を全て回避する!シンメトリー!

「アイエッ!?ニンジャナンデ!?」 常人ではあり得ぬ動き、そしてサイバネのカケラもないオーガニック筋肉を目にしたサイバーボンズは、目の前の男がニンジャと悟り激しく狼狽する。が、銃は下ろさない!ブッダへの信仰でNRSを抑えこんでいるのだ!再び銃撃の構え!

カラテ判定:3,3,5,6,3,5 【成功】

「グフフッ、その練り上げられた筋肉に恥じぬ胆力!ボンズ=サンよ、我が筋肉は貴殿の信仰に敬意を表する!バルク!」

プレートメイルは床を力強く蹴り、一瞬でサイバーボンズの背後へ!右腕に筋肉を漲らせてボンズの首に回し、締め上げる!チョークスリーパー!

「その素晴らしい筋肉を死肉とするのは残念だが、仕方なし!バルク!」

チョークスリーパーの体勢から、そのまま強引にポージング!ボンズの首を抱えながらのサイド・チェストだ!これこそはプレートメイルの編み出したポージング・カラテ!カラテ戦闘をしながらポージングを見せつけられる極めて合理的なカラテだ! 「アバーッ!」 その恐るべき筋肉に締め上げられたボンズの首がねじ切られる!ナムアミダブツ!

【DKK】+1→【DKK】:1

「グフゥ・・・なんということだ。我が筋肉は人を傷つけるためのものではないのに・・・」

足元に転がるボンズの頭を見ながらプレートメイルは悲しげに呟く。彼はボディビルを初めてからというもの、一度たりとも好んで人を害しようと思ったことは無かった。そんなことをすれば筋肉を見てもらえないからだ。反社会的ポージング行為の結果、50人の自我科通院者と30人の発狂者、10人の自殺者を出したこともあったが、決して人を傷つけようとしたわけではなかった。

プレートメイルはただ己の筋肉を見せつけたいだけであり、その結果として不幸な犠牲者が出てもそれをポージングを止める理由にしないだけだ。むしろ犠牲者を出してしまったのは己の筋肉が未熟なせいであり、より筋肉を鍛えポージングを見せ続けることこそ犠牲になった者への手向け、自分の義務だと考えていた。彼は狂ってはいない。だがネジが外れていた。

「ナムアミダグフ・・・」

筋肉じみたチャントを唱え、冥福を祈りながらゆっくりとフロント・ダブルバイセップスを決める。 「グフフ、よし」 これで全てのカルマは浄化された。プレートメイルは気持ちを新たにし、本堂へとエントリーした。

(グフフ・・・ワオ、ゼン・・・)

目の前に広がる光景に、プレートメイルは思わず瞑目した。本堂内には何百本ものローソクが灯り、奥に佇む大ブッダ像を幻想的に照らしていた。敷き詰められたオーガニック・タタミとセンコの匂いが鼻腔をくすぐり、耳には規則正しいモクギョの音と住職の唱える念仏、そしてミコー・プリエステスの祈りの言葉が響く。マッポーの世、猥雑都市ネオサイタマにあるまじき、神聖かつ静謐な空間であった。

「アイエッ!?」 「誰だ!?」

この神聖な場所に相応しいポージングとは何かについてポージング黙考しかけたプレートメイルだったが、その体から発せられるニンジャ存在感と筋肉の気配に気づいた住職とミコーが振り返ったことで思考を中断。 「グフフーッ!」 にこやかな笑みを浮かべ、一足で二人の前に立った! 「「アイエエエエ!?」」

笑みを絶やさぬまま、二人に背を向ける!そのままポージング!バック・ダブルバイセップス! 「ドーモ!」 正面を振り向きサイド・チェスト! 「はじめまして!」 そこから前かがみになり、にこやかな笑みを力強く緊迫した表情に変え、両腕に筋肉を漲らせて内側に折り曲げる!モスト・マスキュラー! 「プレートメイルです!」 「「アイエエエエエエ!?」」 住職とミコーは筋肉が上乗せされたNRSで絶叫!平安時代の原初的恐怖と近代トレーニングの科学的実証が彼らを襲う!

「グフフ・・・」 思うさま筋肉を見せつけるポージング・アイサツを決めたプレートメイルは、ブッダ像の前にある棚を見る。そこには大量の巻物が安置されていた。

(グフーム・・・この中のどれかが目的の巻物なのだろうか・・・?) 考古学者でもないプレートメイルにはどれかミヤモト・マサシの兵法書であるかなどまるでわからぬ。さらに言えばこの巻物群の中にあるとも限らない。寺院の秘宝ならば別の場所に保管されている可能性もある。

(グフフ、やはりここはインタビューするしかなかろうな) プレートメイルはアブドミナル&サイを決めながら恐怖に震える二人を見る。先ほどのアイサツですでに抵抗の意志はほぼ奪ったと見ていい。どんな手段を使おうとすぐ屈服し、巻物を差し出すだろう・・・

「グフフ・・・お二方、安心してほしい。我が筋肉は人を傷つけることを好まない。私の目的はミヤモト・マサシの兵法書のみ。それさえ頂ければすぐさま立ち去ろう」
「アイエッ!ミ、ミヤモト・マサシ・・・それ、それだけは・・・」

住職はニンジャ存在感を間近に受けながらなおも抵抗の意志を見せる!何たる強靭な精神力!ブッダへの深い信仰がなせる技だ!

「グフフ・・・なるほど、さすがはご住職。一筋縄ではいかない徳の高さだ。ならばこちらも相応の手段をとらせていただこう」

プレートメイルはモスト・マスキュラーの構えを取ると、謎めいたシャウトを発した! 「プロポーション!」

【ジツ判定】:ジツ2+ニューロン6=ダイス8 1,4,5,4,3,3,2,2 【成功】

「「アイエエエエエ!?」」 住職とミコーの絶叫が本堂に響き渡る!謎めいたシャウトを発したプレートメイルの体が一瞬にして輝く鋼鉄と化したのだ!これこそはニンジャソウルが彼に与えしジツ、ムテキ・アティチュード!

ムテキ・アティチュードは全身を鋼鉄と化し、カラテやスリケン、マシンガンやロケットランチャーを跳ね返すジツだ。プレートメイルはこのジツを使うことにより対ニンジャ戦闘や閉所での面制圧射撃を受ける場合でも、回避行動を取ることなくポージングを決められるのだ!ムテキ・ポージングである!

「ミヤモト・マサシのマキモノはどれだーッ!?」 ムテキ解除したプレートメイルは叫ぶやいなや再びムテキ・ポージング!まるでワセリンを全身に塗ったかのような輝きが筋肉をより一層効果的に見せる! 「アイエエエエ!?」 「ゴボボーッ!」 叫ぶ住職!恐怖のあまり嘔吐するミコー!ムテキ解除! 「どれだーッ!?」 ムテキ・ポージング!「ゴボボーッ!」 ミコーは嘔吐!

「言わんかーッ!」 ムテキ・ポージング! 「ゴボボーッ!」 「アイエエエ!言います!」 「どれだーッ!?」 ムテキ・ポージング! 「ゴボボーッ!」 「言います!言いますからヤメテ!」 「やめぬーッ!」 ムテキ・ポージング! 「ゴボボーッ!」 「アイエエエエ!」 「見よーッ!」 ムテキ・ポージング! 「ゴボボーッ!」

「アイエエエエ!これ!これです!どうか!もうヤメテ!」 最後の信仰を振り絞り、住職は棚から巻物を掴む。これ以上ポージングを見せられれば自分は発狂し、ミコーは嘔吐のあまり全身から水分を失って死ぬだろう。死んだら終わり。ミヤモト・マサシはそう言った。彼が同じ状況に立てばきっとそうするはずだ。住職はそう考え、血を吐く思いで巻物を差し出した。

「グフフ・・・」 プレートメイルはポージングをやめ、巻物を受け取った。この巻物を得るためにラオモト=カンは凄まじいカネを提示し、住職はそれを断った。だが今住職は彼の筋肉に屈服して巻物を差し出したのだ。

(グフフーッ!つまり我が筋肉はラオモト=サンの提示したカネよりも値打ちがあるということだワイ!) プレートメイルの全身に高揚感が漲る!

「プロポーション!」  「アイエッ・・・」 興奮のあまり繰り出したムテキ・ポージングでついにミコーが失神!自らの吐瀉物の中に倒れ込む! 「アイエエエ・・・」 住職はもはや叫ぶ力もなくがっくりとうなだれる。神聖さと静謐さに満ちていた本堂は、いまやセンコの匂いでも隠しきれぬほどの嘔吐臭に包まれ、ゼンを著しく損ねていた。

「グフフ・・・確かに受け取った。それでは私はこれで・・・」 巻物をブラックベルトに差し込み、プレートメイルは本堂を立ち去ろうとした。だが、その足が止まる。ブッダ像の前に置かれたデジタル賽銭箱が目に入ったからだ。 「グフン・・・?」 ほんの少しいじれば、賽銭箱から彼の口座にカネが振り込まれるであろう。

「アイエッ!そんな!巻物を渡せば帰ると・・・!」 プレートメイルの様子を見た住職が悲痛な声を上げる。寺院の秘宝を奪われた上、賽銭箱の略奪までされるのか。

(グフゥー・・・目的は果たした。これ以上徳の高いボンズを苦しめるのは本意ではない。ないが・・・) フロント・ラットスプレッドを決めながら黙考する。 (だがカネは欲しい・・・カネがあればもっと筋肉を鍛えられる)

ソウカイヤには最新トレーニング設備が揃い、ZBRアドレナリン、スシなどの支給も充実しているが、筋肉の育成に必要なトーフ・プロテインや良質なオーガニック食材まではさすがに支給されない。よって自費で賄うしかないのだが、上位ニンジャやシックスゲイツと違い、サンシタの稼げるカネなどたかが知れている。ミカジメ料徴収などの日々の業務で得られる小遣い銭ではとても良質な筋肉育成食材の日常的摂取は不可能だ。

「グフフ・・・すまぬ、ご住職。これも我が筋肉をより高みへ導くためなのだ」 プレートメイルは謝罪の意味を込めてポージングを決めると、ゆっくりと賽銭箱に歩み寄る。彼は決して邪悪なニンジャではないが、こと自身の筋肉に関する事柄ならば他人のいかなる犠牲もさほど気にしないのだ。 「アイエエエ・・・」 住職の口から絶望的な嘆きが漏れる。

「グフゥ?」 賽銭箱に手をかけようとしたプレートメイルは何者かの視線を感じ、足を止める。 「グフフン・・・」 ゆっくりと上を見上げると、ブッダ像の咎めるような目が彼を捉えた。

「グフフ・・・なるほど、なるほど。ミコー=サンとご住職は屈服させたが、ブッダ=サンはまだであった」 プレートメイルはにこやかに笑み、ブッダを見上げながらポージングの構えを取る。

(何だ?何を言っている?) 住職はいぶかしげにプレートメイルを見る。ニンジャ推察力をお持ちの読者ならすでに察しているだろう。その通り、プレートメイルはブッダ像をポージングで屈服させ、しかる後に賽銭箱の中身を奪うつもりなのだ!「バルク!」 ポージングが始まった!

(グフフ・・・ミヤモト・マサシの兵法書は住職の持ち物。ゆえに筋肉で住職を屈服させた私は巻物を受け取る正当な権利がある) ブッダ像を見上げながら流れるようにポージングを繰り出していく!

(だが賽銭箱の中身はブッダ像に捧げられたカネ・・・ならばブッダ像を筋肉で屈服させれば賽銭箱の中身は正当に私のもの!) ALAS!何たる手前勝手ながら若干の公平さを認めざるを得ない理屈か!彼は狂ってはいない!ネジは外れている! 「プロポーション!」 ムテキ・ポージングも織り交ぜる!

「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 

「アイエエエ・・・」 ブッダ像を見上げながら連続高速ポージングを決めるプレートメイル。その行為が全く理解できぬ住職はただ呆然としながら震え声を上げることしかできぬ。

「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 「バルク!」 「プロポーション!」 

「バルク・・・グフゥーッ!マイッタ!」

永遠に続くかと思われたポージングが中断される。 「グフフ・・・オミソレ・シマシタ・・・」 プレートメイルはゼイゼイと息を吐き、ブッダ像にポージング・オジギした。ブッダ像の表情は変わらない。常人であれば死、ニンジャであっても発狂は免れないポージングの嵐を浴びてなお、ブッダ像は何の動揺も見せなかった。筋肉の完敗である。

「グフフ・・・」 プレートメイルは己の未熟を恥じ、ブッダ像と賽銭箱に背を向けた。「ミコー=サン、ご住職、シツレイをした」 「アイエ・・・」 吐瀉物まみれのミコーと座り込む住職にポージング・オジギを決めると、「バルク!」 プレートメイルは床を力強く蹴り、本堂から飛び出していった。

【DKK】→1:シナリオクリア

「アイエ・・・あのニンジャは一体・・・?」 住職は呆然としながら本堂入り口を見つめる。周囲は静寂に包まれ、先ほどまでの出来事は夢だったのかと考えた。だがタタミは吐瀉物にまみれ、そこにはミコーが倒れ伏している。「アバ、アババ・・・」 ビクビクとミコーが痙攣している。「アイエッ!まずい!」 連続嘔吐とNRSによる心的ストレスで危険な状態だ!

「はやく医者を・・・間に合うだろうか・・・ン?」 タタミの上に本堂に似つかわしくないものが落ちている。「注射器・・・?」 拾ってみると、それはZBRアドレナリンの注射器であった。用法用量を守って正しく使えば精神安定、鎮痛作用の効果を発揮する優れた医療用薬物だ。とりあえずこれを注射すればミコーは持ち直し、医者がくるまでの時間を待つことができるだろう。

(なんでこんなものが・・・あのニンジャが?) ミコーや自分、ボンズ達が持たぬ以上、あのニンジャが落としていったものとしか思えぬ。しかし・・・ 「アババ・・・」 「ええい、死んだら終わりだ!」 意を決してミコーに注射! 「アバ・・・フゥーッ・・・」 ミコーは持ち直した!

「ハァーッ・・・なんだというのだ、一体」 住職は息をつき、ヨロヨロと立ち上がる。実際、彼も限界に近い。急性NRSで発狂していないのが不思議なくらいだ。医者を呼ぶために本堂隅の電話に向かう。呼び出しを待つ間、住職はブッダ像を見上げていた。

確かに遥か昔から受け継がれてきた寺院の秘宝、ミヤモト・マサシの兵法書は奪われた。だがホーリースマイト・オブ・ブッダ・テンプルはいまだ健在。その信仰にいささかの揺らぎもなく、デジタル賽銭箱も無事だったために寺院運営にも支障は無い。

(もしもあのニンジャがブッダも恐れぬ狼藉者であったなら、寺院は壊され、私やミコーも殺され、賽銭箱も略奪され・・・この由緒ある寺院はおしまいだったろうな)

ブッダの威光はニンジャをも退けてみせた。信仰を続ければこそ、不条理に襲ってくる暴力からも身を守ることができたのだ。住職はブッダ像に手を合わせ、深くオジギした。より一層の信仰を誓って。

【万札】+10→【万札】:10

(グフフ・・・やはりオーガニック・スシは良い!良質な食材が筋肉に染み渡るワイ・・・)

ミッション翌日。ラオモトから報酬を受け取ったプレートメイルはスシ屋に来ていた。今日の彼はメンポを外しており、タンクトップにハーフスパッツ、足元はスニーカー。ごく一般的な休日のボディビルダーといった格好である。

(グフフ・・・あのミコー=サンは無事であろうか・・・ZBRが役に立っていれば良いのだが)

マグロを頬張りながら考える。あの日、ミコーが危険な状態にあると察したプレートメイルは、去り際に手持ちのZBRアドレナリン注射器を置いてきたのだ。彼は常にZBRアドレナリンを携帯している。ポージングを見せつけてNRSに陥ったモータルを死なせないためだ。

(グフフーッ・・・我が筋肉を見せつけた相手が死んでしまうのは悲しいことよ。彼らには末永く生きてもらい、我が筋肉を思い出しながら人生を送ってもらいたい)

チャをすすりながら過去を思い出す。ポージング拉致監禁で衰弱、発狂、失神していくモータルたち。意識を失っていく彼らに対し、プレートメイルはZBRを打つことで強制的に覚醒させ、心行くまで筋肉を見せつけていたのだ。

もちろんニンジャでない頃であってもプレートメイルは邪悪ではなかったので死ぬまで監禁などせず、十分に筋肉を見せつけた後はきちんと解放した。筋肉へのトラウマを刻み込まれた被害者がその後どうなるかまでは考えなかった。仮に考えたとしても筋肉を優先するので止める理由にはしなかっただろう。彼はネジが外れているのだ。

「グフフ・・・ご主人、次はバイオアナゴを」 「アイヨッ!」

熟達した手つきでスシを握る店主の腕や指先を見る。スシを握るという行為に特化した肉体は、まさに機能美と呼ぶに相応しい筋肉を纏っていた。 (グフフ・・・遊びのない筋肉よ。美しい) プレートメイルは筋肉を愛する。自分のものも、他人のものも。彼はそれ以外に価値を見出さないのだ。 「アイヨオマチッ!」 「グフフ、ドーモ」

とろけるように甘くやわらかなバイオアナゴを咀嚼する。一噛みごとに旨みが溢れ、良質なオーガニック成分が筋肉に浸透していく。 (グフフ・・・我が筋肉よ、健やかに育て。そしていつか、あのブッダ像に再挑戦するのだ)

どれほどの高みに到達すれば、意志なきブッダ像をポージングで動かすことができるのだろう。プレートメイルにはわからぬ。だが彼は筋肉を信じていた。鍛え続ければきっと、ブッダ像をも屈服させるポージングを習得できると。

(そのレベルに達すれば、もはやイクサなどせずに済む・・・モータルもニンジャも、我がポージングの前に屈服し、平和的に筋肉を見せつけることができるのだ)

誰も傷つくことのない、筋肉に満ち溢れた慈愛の世界。いつか来るであろうその日を目指し、プレートメイルは筋肉を鍛え続けるのだ。例え、その途中で幾人の犠牲が出ようとも。

【マッスル・イン・ザ・テンプル】終わり

ウフフ、メデタイ

と、いうわけで我が油断ならぬサンシタ、プレートメイル=サンは見事ミッションを成功させて生還することができた。筋肉を愛するかなり控えめで邪悪な方でないニンジャであったためにDKKを貯めることなく赤黒の出現を回避できたのが幸いした形と言えよう。

今回の第二弾では前回シナリオで作成し生き延びたサンシタを登用したヘッズ諸氏も実際多く、それらのニンジャを前回獲得した万札を使って強化していた。これは自作サンシタの成長により愛着がわき相当にタノシイがありそうなので、私も次回シナリオではぜひこのプレートメイル=サンを登用したい。

ああライブ一体感

今回リアルタイム参加して皆と一緒に一喜一憂するのが大変にタノシイだったので次回もぜひリアルタイムしたいなぁと思いました。他の人のリアクションを見るのも楽しいし、アドリブでサンシタを動かしていくことでどんどんキャラが固まっていくのも愉快な気分でした。TRPGってすごいなぁと思いました。

最後にリアルタイム版のプロトタイププレートメイル=サンの活躍を載せておきます。筋肉自慢の粗暴で邪悪なニンジャのはずだったのですが、ムテキ・アティチュードで脅迫したあたりから筋肉を誇示することに異常執着するボディビルニンジャというイメージができあがってしまい、上の作文行為ではあんなことになってしまいました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?