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東京島嶼まぼろし散歩#25/伊豆諸島05

旅館を出たのが10:00ごろ。picupはきのうと同じ運転手さん。
ヘリは14:30なので、それを伝えてから島役所跡へ行ってもらうことにした。
「三宅島には島役所が残っているんだよ。三宅島の神官・ 壬生家の役宅だ。そこに寄りたい。壬生家は旧家でね。寺社縁起である『三宅紀』を所持してた。内題は「三嶋大明神縁起」。鎌倉時代ごろに作られた文書だ。」

「見られるの?」
「今は三宅島七島文庫に所蔵してある。でも立派な茅葺のお屋敷だよ。一見の価値はある」
「ふうん・・」
それでも東京では全く見られない景観で、それなりに気に入ってもらったようだ。

https://miyakeshimayakushoato.jimdosite.com/

少し早めだが空港へ送ってもらった。
「それにしても何もない空港ね。冬は寒いでしょうねぇ。そう言えばヘリコプターが飛んでる空港っていくつあるの?」
「んと・・大島/三宅島/青ヶ島/御蔵島/利島/八丈島だから6つだ。じゃ聞くけど、伊豆七島って、幾つある?」
「えーと。大島・三宅島・八丈島・新島・利島・神津島・御蔵島??」
「オリオンツアーは大島・新島・式根島・神津島・三宅島・八丈島の六つと書いている」
https://www.orion-tour.co.jp/izu/
「七島じゃないの?利島・御蔵島は?」
「伊豆七島というのは、大島・利島・新島・神津島・三宅島・御蔵島・八丈島を指す。」
「利島は七島じゃないの?」
「ん。伊豆諸島なことは間違いないが、伊豆七島としては括られていない。
伊豆諸島というのは、一番本土に近い大島から最南端の孀婦岩までを指す。人が棲む島は9つ。無人島は岩礁を含めて100余りあるんだ。」
じゃなぜ伊豆七島なんて言われるの?伊豆諸島の中の代表的な島・・と言う意味?」
「ん~でもない。伊豆七島という言葉が出来たのは江戸時代中期だ。伊豆五島とか伊豆十島とか言われていたこともある」
「伊豆十島?増えちゃったの」
「江戸時代になって伊豆諸島は徳川幕府の直轄になったことを話しただろ?そのときに幕府は、大島/利島/新島/式根島/神津島/三宅島/御蔵島/八丈島/八丈小島/青ヶ島の十島に代官所を置いたんだ」
「だから十島?」
「うん。七島という言い方をするのは、式根島が当時は無人島だったこと。そして八丈小島と青ヶ島は八丈島の属島だったからだ。宝暦3年(1752)に出された『伊豆七島調書』が典拠となってて、伊豆七島という呼び名が定着したんだろうな。
いずれにせよ。明治に入っても伊豆諸島は貧しかった。反物は有るが、一部の地域だけだ。長い間、自給自足もままならないままの地区だったんだよ。」
「幕府直轄でも?東京の直轄でも?」
「ん。物理的にも心理的にも伊豆諸島は日本から離れている。行政もまま遅れることがあった。島会所時代からの三井の支配は明治の後半から手離れしたからな。それも島々をより貧しくしたのかもしれない。しかし大儲けした人もいた。玉置半右衛門というひとだ」
「だれそれ?初めて聞く名前だわ」
「八丈島の代官の子だ。黄八丈生産者の娘と結婚してね、東京への回漕業で大儲けした人だ。そのひとが鳥島にいたアホウドリに目を付けた」
「アホウドリ?」
「鳥島はな、鳥島って言われるくらいアホウドリの島だ。アホウドリの羽毛は輸出産業として珍重されていたんだよ。玉置は鳥島干拓の許可を内務省から取ったんだ。鳥島で開港を目指すと言ってね。許可は簡単に取れた。お金がかかったろうな。彼が鳥島に人足たちを連れて入ったのは明治20年(1887)だ。彼は半年で10万羽を獲ったそうだ。内務省が玉置に鳥島の借地権を出したのは翌年の3月だ。以来、明治35年の鳥島大爆発までの間に600万羽を獲った。そのための集落が千歳湾にあった。50~60戸の家屋だったという。
彼の羽毛を買ったのは横浜のウインクレルwinckler商会などでね、アホウドリの羽毛は高級品だったから持ってけば持ってく分だけ買い取ってくれたそうだ。wincklerは今でも横浜にある貿易商社だよ」

「玉置半右衛門はあっという間に長者番付に載る大金持ちになった」
「でも大爆発があったんでしょ?」
「そう。島民全員が死んだ。ま。でも玉置半右衛門は目端が効く人でね。小笠原でサトウキビ・プランテーションを創業したりね、玉置商会は企業としては成功例だ。しかし息子が不味かった。二人いたんだが、どちらも揃ってバカ息子で金を使いまくった。玉置死後はこの二人が争って会社は倒産してしまった。オヤジは有能だったんだがな・・子供たちは何れもカスばかりだった。どっかの大統領と一緒だ。」
話はヘリの中でも続いた。ヘリは一度御蔵島に降りて、10分後に八丈島へ飛んだ。八丈島着は15:00近かった。

無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました