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夫婦で歩くシャンパニュー歴史散歩5-2-5/ドン・ペリニオンから見えるもの・シャンパニュービジネスについて#03

「でも・・そんなに神格化されるほど偉い人だったんでしょ?でもなぜ博物館が博物館みたいなものを作ってないの?僧侶だったから?」
「彼の仕事場みたいなものは残っている。公開はされていない。すべてモエ・シャンドン社の私的所有物だからな。特別に招待された人たちだけが見られるんだ。でも、ついこの間、特別限定で一般公開されたが・・常設はされていない」
「なぜ行かなかったの?わかってて行かなかったの?」
「まあそれは言うな。伝手を辿っても無理やり行きたいとは思わなかった・・で、やめとく」
「あぁそう・・肖像画もないし、彼を実際に感じるものはないの?」
゜ある。あるけど公開はされていない。モエは彼を神格化したけど、神秘の中に入れたままだ。まあ、それはそれでビジネス的には"有り"だな。



・・それともう一つ大きな問題がある。1789年だよ。ブルボン体制を引きずり倒した『市民革命』だ。革命政府は王政だけじゃなくて教会支配体制も破壊したんだ。もっとも『市民革命』ったって、まだ産業革命以前だ。労働者という階級はない。経済を握っていたブルジョア勢力による体制の返還だ。彼らが彼らの商売の目の上のタンコブだった王政と教会を破壊した・・というのが1789年のいわゆる『市民革命』だ。
中央フランスはまさに、その破壊衝動に晒された。教会は荒らされ所有していた畑は、革命分子たちに分配されたんだよ。
サンピエール・ドーヴィエ修道院も荒らされまくった。すべてが破壊されたんだ」
「ドン・ペリニオンが残したものも?」
「ん。今もほとんど何も彼のものが残ってないのは『市民革命』という錦の御旗を振った簒奪者/破壊者のせいだ。
残そうという意志と知恵が無ければ、文化も歴史も残らない。XXXを汚染してるという理由で名画にペンキを投げかけるバカと一緒だ。あるのは建前という錦の御旗を被った『欲』だ」
「辛辣ね」
「19世紀は『体制が大きく変わる』世紀だった。鉄と蒸気とシステム化が確立化して英国を中心に産業革命が始まった。アメリカの独立戦争が『王のいない』新しい支配体制を生み出した。鉄と蒸気が水路に匹敵するほどのロジスティックスを生み出した。産業の在り方が、まったく違う次元に動いたのが19世紀だ。
・・この19世紀の「全てが激変する時代」を正鵠に見つめると、いまの21世紀の近未来が見えてくると僕は思う。
21世紀は20年経って、今ようやく激変に進もうとしてる。200年前のように世界は変わるんだ。
どう変わるかは判らない。でもどう対応すべきかは温故知新だ」
「なるほどねぇ、19世紀の香りが残っている村を歩きながら・・未来を見よということね」
「そうです」
「ふうん、じゃとりあえずお食事タイムね。いつものレストランに行きましょ」
「はい」

無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました