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夫婦で歩くブルゴーニュ歴史散歩4-6/バスを使ってヴォーヌ・ロマネ歩き#06

翌朝、朝食のとき。嫁さんが昨日ディナーで出たピノノワールの話をしはじめた。
Domaine du Comte Liger-Belair(1 Rue du Château, 21700 Vosne-Romanée)
http://www.liger-belair.fr/
「コートドールに有った修道院って、みんなワインの畑を持ってるでしょ?それもみんな難しいピノ・ノワールを育ててるし・・」
「いま残っている畑は、彼らが分けた教区がベースになってる。クリマとか云うが・・その区分けは修道院が仕切った教区単位だ」
「でもどうしてそんなに教区ごとでワインの味が違うの?」
「味の格差は色々なファクターの集合体だからな。土地が持つ地味だけじゃない。でもね。僕は思うんだけど、修道院は・・実は葡萄の出来が良い所ばかりを選んで作られたんだと思うな」
「まず初めに葡萄に合った土地があって、そこに修道院ができた・・というわけ?」
「うん。そうだとおもう。その方が自然だ」
「なるほどねぇ」
「ところで・・昨日話ししたCroonembourg家が持っていたLa Romaneeのワインは。なかでも飛び抜けて美味しかったらしい」
「ロマネ村にあった畑?いまのロマネ・コンティあたりのこと?」
「ん。あの辺で採れた葡萄から作ったワインは、近在で産するワインのほぼ10倍で売れていたそうだ。時のフランス王ルイ十五世も殊の外好んでLa Romaneeのワインを吞んでいたそうだ。
それに目を付けたのが、当時のLa Romaneeの持ち主アンドレ・ド・クルーネンブールだ」
「どうしたの?もっと高くしたの?」
「実は、アンドレ・ド・クルーネンブールはトンでもない放蕩オヤジでね、破産寸前だった。それで、御贔屓さきだったフランス王家に、La Romaneeを畑ごと高値で売ろうとしたんだよ。その話に乗ったのは、ルイ十五世の愛人ポンパドール夫人だった」
「あらま。パン屋さん?」
「ちがう」

食事が終わって一度部屋に戻った。
今朝は午前中にホテルのレンタル自転車を借りる手配をしておいた。


「途中で、立ちションしないでよ。トイレに行ってから出かけてよ」と嫁さんに言われた。
「んんんん。ロマネの滋味に参加したい気もするがなぁ」
「ばか。・・それとラフは避けてね。舗装されてるとこ、走ってね」
「はい」
ホテルで貸してくれた電動自転車は新品で快適だった。コルトンで借りたのより格段に上だった。
「いくわよ」と嫁さんが先に走り出した。
「おおい、どこに行くか知ってるんかい」僕が後から追いかけた。
フォンテーヌ通りをショーム通りに抜けた。T字路を右に曲がるとターシュ通りで、昨日の午後に歩いた道だ。同じくグランクリュ通りを右に曲がって、今日はリシュブールへ右折しないで真っすぐ進む。道は少しずつ登りになった。右にLA GRAND RUEの看板が見える。その前を抜けた。もう少し先にもLA GRAND RUEの門がある。門の前で立ち止まった。
「Gramd Rueはラマルシュ家の畑だよ。ラマルシュは1991年からグランクリュになった。それまではずっとプルミエだったんだ。田舎の人だからな。別に等級はあまり気にはしなかったんだろうな。今はニコル・ラマルシュの管理下だ」
「グランクリュじゃなくて、グラン・・ルーなの?」
「ん。偉大な道だ。古い畑で資料には1450年ころからその名前がある。革命でマレ家とリジェ・ベレール家に分断されたが、いまはモノポールとしてラマルシュ家のものになってる。ニコルに替わる前Domaine Francois Lamarcheのものが、いま飲みごろだな」
道が左に曲がり始めるところ、右側に十字架が見える。もう一度止まった。
「目の前がオーレニョAux Reignotsの畑だ。プルミエだよ。ちょっと前に仕切りが有ったろ。あそこまでがLa Romaneeだ」
「え~朝、話してたラ・ロマネー?」
「いや違う。昨日呑んだドメーヌ・コント・リジェ・ベレールの所有だよ。ルイ・リジェ・ベレールが100年近くかけて買い集めた畑だ。グランクリュとしては一番小さい。
オーレニョはロベール・アルヌーの所有だ」
左に曲がると傾斜はさらに強くなった。しかし電動自転車は威力だね。何の苦労もない。すこし行くとヘアピンになる四つ角がある。一つは未舗装だ。自転車を停めた。
「すごいね。村が一望できる」

畑が眼下に見えて、その向こうに村が見えた。
「えっと、あの辺がホテルね」と嫁さんが指さした。
「ん。この標高だとコートドール街道も見えるんだな」
「みて。左前にロマネコンティの十字架が見える。
もう少し走ると横T字路がある。その先に石作りのテーブルと長椅子が有った。
「あ。みんなここで休憩するのね」嫁さんが言った。
自転車を降りてみると、さっきのヘアピンの所よりももう少し高度が高いので景色はいい。
「左にChâteau du Clos de Vougeotが見えるだろ」
「ええ、ロマネコンティの所からよく見えたお城ね」
「今日はあそこまで行く。道は此処が頂上だから後は下りだ」
「はいはい。頑張りましょ」

無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました