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春の光、湯気の中 (2/10-2/11日記)

2月10日(土)

徐々に、春の光が。冬の光は空気を照らし、春の光は土や木、花に注がれているように見える。小さな生命たちが、ゆっくりと目を覚まし始めている気配。

陽光のなか、清澄白河をお散歩。

清澄白河までの電車、私はiphoneで日記を書いていて、隣で彼は本を読んでいた。こういう時間がいつまでも記憶に残っていたりする。

素通りできないビジュアルの焼き団子を発見したので、食べる。

伊勢屋さんの焼き団子

「丸くてもちもちした食べ物が好き」と言ったら「お餅、お団子、大福以外にある?」と聞かれたので考えたら意外となかった。

「ポンデケージョ」と捻り出したけど、ポンデケージョ、そんなに食べたことない。

お花屋さん、靴下屋さん、チーズ屋さん、たくさん寄り道しながら、東京現代美術館へ。

MOTアニュアル2023と豊嶋康子さんの展示を見た。

豊嶋さんの展示「発生法-天地左右の裏表」とても面白かった。400点近くのユニークな作品が展示されていて、アプローチの方法も様々。作者の脳内に迷い込んだような、不思議な体験だった。

熱で変形させた分度器
沢山の通帳たち、並ぶと可愛い
延々と続くそろばん

日常の中に隠れているユーモアや好奇心、問いや違和感。それらを自分の中から取り出し、作品に変換し続けることで、何にも似ていない、唯一無二の素晴らしい展示が生まれるのだろう。

チャーミングでユーモラスで繊細で、そして作者の凄まじい創作への胆力を感じる展示だった。

MOTアニュアル「シナジー、創造と生成のあいだ」は、後藤映則さんの3Dプリンタとスリット光源によるオブジェが、圧巻のインパクトだった。

新しい技術はそれ自体がクリエイティブなもので、さらにそれを誰がどのように使うかで、新しいものが生まれる。

どちらもとても良い展示だった。

そのあとsmokebooksさんへ。かわいいドイツの絵本を買う。もう1冊、買うか迷った絵本がこれ。やっぱり欲しい、可愛すぎる。

とっぷり日が暮れてしまい、寄りたかったパン屋さんへ急ぐ。

彼の競歩が異常に早く、地面をすーっとスライドしてるみたいに見えて「宇宙人だ」とお腹を抱えて笑った。

競歩をしながら、ふたりで架空の出版社の名前を考える。さっきの絵本が「Happy Potato Press」という最高の名前の出版社から出ていたので。(幸せなじゃがいも出版)

あれこれアイデアを出し合い、「Beagel Bagle Books」に決定。決定って、なんだろう。でもビーグルベーグルブックス、絶対にロゴもかわいい。

ひとりになってからも「もし会社をつくるなら・・」と架空の社名を考えていた。「株式会社 満漢全席」とかどうだろう。どうだろうって、なんだろう。


2月11日(日)

友人とランチ。「私たちもう15年以上、横浜駅でお喋りをしているね」と言われて本当だ、と気付く。

この15年で横浜駅はすっかり変わった。それぞれ人生にもたくさんの変化があったけど、三人でいるときの空気は変わらない。

でも最近よく話すのは、「もし今出会ってたら友達にはなってないよね」ということ。

共通するものは少なく、価値観も違う。でも互いを否定せず、悲しんだり嬉しいことを報告し合える関係。これって友達以上、家族未満ってことだろうか。

夜、中野の「湯気」さんへ。
彼と新宿で合流したら、朝と違うアウターを着ていた。

「下北までループで移動してたら、好きな服屋さんがセールしてて、アウター買ってしまった。気になる展示も見つけて行ってみたら、とても良くて、大きな器も買ってしまった。どうやって京都まで持って帰ろうかな。」

彼はいつでもどこでも楽しく過ごせる才能を持っていると思う。私もそれは得意だと思っていたけれど、彼と一緒にいると私はまだまだ遊ぶのが下手だなあ、と思う。

8歳くらいの頃、川崎から逗子へ引っ越した。それまで公園での遊び方しか知らなかった私に、近所の子供たちが色々な遊び場を教えてくれた。川、海、山。「これ道じゃないよね?」と思うような場所をぐんぐん進んでいく子たちの背中を、必死に追いかけた。すごく楽しい経験だった。

彼を見ていると、その時のことを思い出す。背中に羽でもついてる?というくらい軽やかな人。

「湯気って名前がもう秀逸だよね、絶対おいしいもん」と話しながら向かう。

シンプルで無駄のない店内同様、食事もとてもシンプルを極めたアレンジだった。中華と和食の間のような、一品一品が滋味深く、じんわり沁み入る感じ。

断面の美しい海老春巻き
最高な焼売
かぼちゃと豚肉の煮込み

コースの終わり「お腹に余裕があればサンラータンもあります」と声をかけていただき、もちろん頼む私たち。とても美味しかった。

併設していたお花屋さんで、かわいいチューリップも買った。春がすぐそこに来ている。

食事をしているとき「可愛いおばあちゃんになるのが夢」と言ったら、嬉しい言葉が返ってきた。

ここには書かないし、きっと言った本人も忘れている。でもいいのだ、私には羽は付いてないかもしれないけど、小さくて嬉しいことを、いつまでも覚えているのが才能だから。


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