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Day26―新しいwell-beingの尺度

Well-Beingに関するトピック。

Huppert, F. A., & So, T. T. (2013). Flourishing across Europe: Application of a new conceptual framework for defining well-being. Social indicators research, 110(3), 837-861.

ポジティブなwell-beingな状態を、うつ病や不安症の逆にあたる状態として定義。43,000人を対象にした調査の結果、ヨーロッパ圏内ではデンマークが最もよく、スロベキア、ロシア、ポルトガルが最も悪かった。

ざっくり背景

well-beingは日本語でもウェルビーイングと表記されることが多く、明確に定義が難しい単語の1つ。これと類似した概念でflourishというものがある。これは持続的幸福感と訳されることもあるらしく、詠んで字のごとく恒久的な幸福に対する価値観を表している。今回の研究ではより多面的なflourishモデルを作成、国ごとに比較した。

尺度

持続的幸福感を測定する尺度について、うつ病、不安症といった精神疾患の対極にある概念を使用。結果、以下の尺度が発見された。
competence(コンピテンス…自分自身がやることに達成感を感じていること)
emotional stability(感情の安定性…穏やかで平和だと感じること)
engagement(エンゲージメント…新しいことを学ぶことが好きであること)
meaning(意味…自分の仕事などが価値のあるものだと感じること)
optimism(楽観性…未来に対して楽観的であること)
positive emotion(ポジティブ感情…どれくらい幸福だと感じるか)
positive relationships(ポジティブ関係…自分のことを本当に気にかけてくれる人がいること)
resilience(レジリエンス…人生において間違えたことをしたときに、そこから早く立ち直れること)
self-esteem(自尊心…自分自身に対して肯定的であるか)
vitality(活力…エネルギッシュであるか)

調査

10項目の尺度がどの程度国で異なるか調べた。43,00人を対象にしたアンケート調査の結果、デンマークが40%と最も高く、スロバキア、ロシア、ポルトガルが10%未満と低かった。

所感

調査研究の大変さについて、とある授業で知ったためにこの規模の調査は凄まじいと感じる。しかし、そもそも「flourish」を定義すること自体にそこまで意味があるのかという気もしてしまう。
幸福度ランキングなどの統計が発表されてるが、こういった調査は医学的・心理学的バックグラウンドがあり、WHOなどの公的機関が必要とする以上絶対に無くなることはない。だが、完璧な尺度はそもそも作れるはずがない。
趣旨がそれたが、この論文はうつ病や不安症の対極としてwell-beingを捉えている点が興味深い。もっとも、対極にある状態が必ずしも健康的であるとは限らないように、今回の調査においても有効な下位尺度、そうでない下位尺度を見極めることが大事だと考えられる。

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