見出し画像

『コンニャク屋漂流記』に見る先祖と五反田への愛

ノンフィクション作家の星野博美さんの祖父は外房の漁師だったが上京して五反田で町工場を始めた。彼女の父はその工場を継いだ。
彼女は自分のルーツに興味を持ち、和歌山の加太を訪ねる。彼女は言う。

「もし自分の先祖についてあまたの記録が残され、様々な伝承が残っていたとしたら、ここまで知りたいと思っただろうか?
そもそも自分は何が知りたいのだろう。名前や出身地がわかれば、それで満足できるのだろうか?いや、私が知りたいのは出発点やその時期ではなく、家族がどう生きてきたかという道のりなのだ。
わずかな記憶以外に何も残されていない。だからこそ、想像する楽しみがある。先祖が私に残してくれた最大の宝物、それは想像する自由ではないかと思うのだ」

そして彼女の言うこんな言葉は感動的である。

「故郷だからひいき目に見ている部分があるのかもしれないが(多分そうだろう)、私は五反田が好きだ。五反田駅のホームには、東京中の駅で最も気持ちのいい風が吹いている」

この文章を読み、私は是非五反田に行ってみたいと思っていた。
先日、幸いにも大崎のホテルに泊まる機会があり、早起きして目黒川沿いを歩いて五反田駅まで行ってみた。思い入れがあるせいか、一目でこの街が好きになった。そのまま都内有数の高級住宅地である池田山まで歩く。池田山公園、美智子上皇后が住まわれていた「ねむの木の庭」などを見て廻る。感無量だった。

妻の母方の曽祖父は小児科医であったが、森鴎外や斎藤茂吉と交流があったことがわかっている。
私の先祖のルーツをたどる旅もまだまだ続きそうだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?