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ーCreator's Interviewー 古後公隆さん (作曲家・編曲家・ピアニスト・チェリスト)

【第1回】音楽家の母親の影響で幼少期から始まった音楽人生
【第2回】リスナーが想像力を発揮できるような曲作り
【第3回】映画「ミュジコフィリア」について
【第4回】これから挑戦してみたいことは、実は…

【第2回】リスナーが創造力を発揮できるような曲作り

<大津> そうして、古後さんはこれまでにテレビ番組の音楽やゲーム、舞台など、様々な音楽をつくってこられたわけですが、今日は、その中からいくつかの作品をご紹介したいと思います。

『キートンの警官騒動(無声映画と活弁と即興演奏)』
活弁:日乃本まやみ
ピアノ演奏:古後公隆
https://www.youtube.com/watch?v=_7pPBgECqVY

<大津> こちらの動画、拝見したら、古後さんは譜面を見ないで、映像だけを見て、ピアノを演奏されてましたよね。音楽は全部頭の中に入ってるんですか?
<古後> いえ、これは、即興で演奏しているので、その場限りの音楽なんですよ!
<大津> えー!?そうなんですか!!!
<古後> 後から映像を見て「なんでこんなに上手く弾けてるんだろう!?」って思うことが時々あるんですけど、二度と同じようには弾けないんですよ・笑。
<大津> 笑!まさに即興で作った音楽なんですね!私、こういうの、いろいろなセリフで、たとえば「関西弁で喋ってみる」とか、面白いんじゃないかなって思ったんですけど。
<古後> それは絶対面白いと思いますよ。音楽も自由ですが、どんなセリフをつけるかも自由ですから・笑。
<大津> そうですよね・笑。古後さんは、無声映画に声優がライブで声を当てるイベント「声優口演(https://www.seiyu-kouen.jp/#)」で、羽佐間道夫野沢雅子山寺宏一、その他多くの人気声優らと共演され話題となってきましたが、このスタイルの音楽表現は今後も続けていかれるのですか?
<古後> そうですね。即興演奏は、自分でも向いているなと思いますし、とにかく演奏していて楽しいので、今後も続けていきたいですね。
<大津> 是非いつか私も参加させてください。関西弁を練習しておきますので・笑。

『物語音楽「ポワン」より(物語の朗読と音楽)』
絵本:金澤麻由子
歌・朗読:白根亜紀
ピアノ・チェロ演奏:古後公隆
https://www.youtube.com/watch?v=U9A49-xo2gQ&t=934s

<大津> こちらはもともと絵本として出版されている作品に、音楽をつけられたということなんでしょうか?
<古後> はい、内容的にはちょっとヘビーですけど…。
<大津> 確かにちょっと見ていて辛く感じる場面がありますよね。作品の中では、お一人の方が、朗読されたり歌を歌ったりしていますが、歌の歌詞というものは、舞台用にあらたにつくられたものなんですか?
<古後> いえ、この歌詞自体も、実は原作の中に書かれているものなんです。お母さん羊が登場するんですが、そのお母さんが羊が歌を歌うシーンがあって、もともとその詩が、絵本の中に書かれていて、そこに、僕がメロディーをつけて歌にしたんです。
<大津> そうなんですね。「絵本コンサート」とか「絵本の読み聞かせ」というと、なんとなく対象は子供というイメージがありますけど、是非、大人にも見て欲しい、内容的にもそんな作品だなと感じました。
<古後> 金澤麻由子さんも「大人にこそ見て欲しい」っておっしゃってました。
<大津> 私は「朗読と音楽」という舞台は拝見したことがあるんですけど、歌も登場する、それも、ミュージカルのように踊り出すところまではいかない、この独特な空気感が大好きになりました。音楽だけではなくて、歌が入ると本当にドラマティックになりますよね。心が揺さぶられるというか。
<古後> そうですよね。実は、僕は金澤先生の作品には4つほど音楽をつけさせていただいてるんですけど、そのうちの「さすらいのルーロット」という作品は、最初から最後まで、絵本に書かれている文字全部が歌になってるんです。全部歌い終わると、一冊読み終わる、という。
<大津> 全編歌!でもオペラじゃないっていう・笑。「絵本と音楽」この組み合わせは、まだまだいろいろな可能性がありそうですね。
<古後> そうですね。僕は絵本には音楽があるとすごくいいと思うんです。ただ、映像の部分はあえて、アニメーションではなく、静止画のまま、というのが、見ている人の想像力が掻き立てられていいんじゃないかなと思うんですよね。
<大津> 想像力、ですね。
<古後> 今の時代って、なんでも与えられてるじゃないですか。なんでもクリアに見えるというか。大昔はみな「短歌」を読みあっていたわけですけど、本や紙芝居、朗読、演奏、映画など、表現の手段がたくさん出てきて、でも、今は、それを受け取る側の想像力が入り込む余地がないくらいに、すべてがリアルに見え過ぎてるというか、見せ切ってるような印象があるんですよね。だから、先ほどの無声映画もそうですけど、あえて「見せ切らない」世界に惹かれるというか。
<大津> なるほど。確かに昔は「短歌」で気持ちを表現していたんですものね。奥ゆかしいというか、なんというか。
<古後> たとえば、人って自分が昔聴いた作品とかって、ずっと心に残ってると思うんですけど、好きな歌だとしたら、何か自分の経験と重ね合わせたり、どこかで編集かけてると思うんです。街角で一度見た大道芸とかでも、もう二度と動画などでは観ることができないので、でも、記憶の中ではどんどん膨らんでいって、そこに妄想も加わったりして、何かを作り上げていってると思うんです。
<大津> 妄想、してますね・笑。ずっと聞いている好きな曲なんかは、音楽が流れるとなぜかいつも同じ映像が頭の中によぎったりしますよね。あれ、時間が経ってもきっと死ぬまで同じ映像なのかなと思うんですけど、考えてみたらその映像って自分が作り出したものなんですよね。
<古後> そうなんですよ。僕はそれを妄想と呼んでるんですが、作る側がすべてを見せ切らないで、聞き手側の創造性というか妄想が入る部分を残す作り方が面白いなって思うんですよね。
<大津> 伝え切らずに、妄想させてあげる、ということですね・笑。

楽譜/ピアノと歌う名曲集『てんからのおくりもの』
うた・ポエトリーリーディング・ピアノのための音楽物語
https://gsfr3.app.goo.gl/HtU4Ly

絵本と読み聞かせとコンサート 
2022年3月5日 14:00
https://twitter.com/Kimitaka_KOGO/status/1473262855961329665?s=20

『白雲の遊泳』
(古後公隆アルバム「ハルモニュウム乃調ベ」に収録)

セラピノオルガン・ピアノ・チェロ:古後公隆

作品のご購入・お問い合わせはアトリエピアノピアまで
アンティークピアノ工房 アトリエピアノピア
http://www.atelier-pianopia.com/france/002.html

<大津> こちらの作品は古後さんのオリジナル曲ということですが、セラピノオルガンの音色、特にビブラートが特徴的で、アコーディオンのような音色に近いのかなと思いましたが、古後さんとセラピノオルガンとの出会いについてお話をお聞かせいただけますか?
<古後> 僕は、このピアノ(ヤマハが大正時代につくったアップライトピアノで燭台がついている)もそうなんですけど、以前から古い楽器が好きで、ある時、アンティークピアノ工房「アトリエピアノピア」 さんに行って、紹介されたセラピノオルガンを弾いてみたんですね。そしたら、すごく自分好みの音だったんです。もともとヤマハは、足のペダルがない、片手で風を送って片手で演奏するような楽器を作っていたんですよね。それを、足で風を送り込むような楽器に改良したものがこのセラピノオルガンで。でも、誰もうまく弾きこなせなくて、あまり好まれなかったようなんです。
<大津> そうだったんですね。古後さんは見事に使いこなしているように見えますが、演奏するのはそんなに難しい楽器なんでしょうか?
<古後> 僕は、セラピノに出会う前にも古いオルガンを持っていたんですけど、それが壊れて、空気が漏れていたんです。足のペダルを踏んでも、空気が漏れてしまって、音がすぐに減衰してビブラードがかかってしまう。それでも、その壊れたオルガンを頑張って弾いているうちに自分でも知らないうちに微妙にペダルの加減をコントロールしながら演奏できるようになったんですね。そしてその弾き方がセラピノにぴったりだったんです・笑!
<大津> それはびっくりですね・笑。古後さんのためにあるようなオルガンじゃにですか・笑。
<古後> はい。自分でもまさに特別な出会いをしたような気がして購入しました。ピアノではこのビブラートは出せませんし、僕としてはセラピノオルガンの音色って、ピアノとチェロが合体しような音色かなと感じています。
<大津> アンティーク楽器って、メンテナンスも大変ですし、なかなか普及は難しいのかもしれませんが、とにかく音色がとても素晴らしいので、たくさんの人に知っていただきたいですよね。
<古後> 音域が3オクターブくらいしかないんですけど、今、セラピノオルガン用に譜面を書いているので、是非みなさんにこの楽器の良さを味わってほしいなと思いますね。僕が好きなモジュラーシンセとも組み合わせて、何か新しいこともしてみたいなと思ってます。
<大津> どんなサウンドになるのか、楽しみです!

『ツクヨミの光をたよりに』
(古後公隆アルバム「correction for cello vol.4」に収録)

チェロ・ピアノ:古後公隆
作品のご購入・お問い合わせはmail@kogo.infoまで

<大津> とてもノスタルジックで美しい世界ですよね。まるで、チェロの音色が人間の声みたいで、涙が出ちゃいました。こちらはどのようなコンセプトでつくられたのですか?
<古後> この曲は4つの楽曲が収録されたアルバムの中の1曲なんですが、その4曲は実は万葉集から取った4つの和歌を、それぞれを曲にしたものなんです。4つを並べると1つのストーリーになるようなそんなアルバムになっているんです。
<大津> 和歌ですか。古後さんは、先ほどのアンティーク楽器もそうですが、古くから伝わるもの、歴史的なもの、そういうものからインスピレーションを受けて作品をつくられることが多いのですか?
<古後> 直接インスピレーションを受けることももちろんあるのですが、歴史的なもの、アンティークなものは昔から個人的に大好きなんです。

【第3回】映画「ミュジコフィリア」について へ続く




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