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「音楽のおかげで繋がれた」作品展・ワンマンライブ……25周年イヤーを飾る精力的な活動に迫る

インタビュアー/須永兼次

――前編では「このキモチ」のお話を中心にお聞きしてきましたが、後編では10月以降の様々な活動についてお聞きしていきます。まず10月7日から11日まで、イラストレーターのタナベサオリさんとの作品展“絵と音楽による作品展 ―猫はユメをみていた― ”が、東銀座・ねこの引き出しにて開催されます。

大津美紀 これは普段の大津美紀の活動とはちょっと違う部分もあるんですけど、“フィルム絵本”と名前をつけた映像作品を、タナベサオリさんと個人的にずっと作り続けていまして。今回は「セロシア -希望の灯-」という私の曲に映像がついた新作を発表したり、それぞれのオリジナルの新作を発表していきたいなと思っています。オンラインでのイベントも考えています。

――期間中、タイミング的に直接は足を運べないという方にとって、オンラインでのイベントはとても嬉しいと思います。

大津 そうですね。サオリさん自身滋賀在住なので、在廊もオンラインの形になる……という事情もあったんですけど。だったら「みんなでオンラインで繋がれる、交流を持てる機会になれば」ということで、そのフィルム絵本がどういうふうに作られていくのかなど制作の裏側を、皆さんに知っていただくのも面白いかもしれないと思っています。

――それは本当に、貴重な機会になりますね。

大津 はい。私自身、フィルム絵本はもう長い間つくってきていて、それぞれの役割分担もはっきりしているので、割とそんなに話し合いをしなくても完成まで辿り着けてしまうんですね。で、私はこれまでずっと目には見えない音楽というものに向き合ってきましたが、サオリさんは、映像でも絵画でもなんでもそうなのですが、モノとしてかたちになる本当に細部に至るまで「つくること」「表現すること」という姿勢を持っておられる方なんです。クリエイターとして大切なことを私自身、彼女から実に多くのことを学ばせていただきました。今回発表する「セロシア」も本当に素晴らしい仕上がりになっています。

――そうやってこだわられた作品を生でも見られる、様々な楽しみ方のできる展示会になるんですね。

大津 そうですね。最初は手探り状態から制作をスタートしたフィルム絵本も2006年から続けてきて、作品数もだいぶ増えてきました。今回の作品展でも上映しますし、これからも楽しみとして続けていきたいです。……そして、私自身がやっぱり映像作品をつくることが好きなんだろうなということに気づいたんですよ。これまでにコマーシャルソングやアニメの挿入歌を作らせていただいたりもしているので。ですので、このフィルム絵本の制作はこれからも続けていきたいですね。

――そして11月26日には、今度は活動25周年を記念したワンマンライブ“大津美紀ワンマンライブ「25th Anniversary〜このキモチ〜」ねこかたり~第五十六夜~”がございます。

大津 25年という期間に関しては「もうそんなに経つの?」という感覚ではあるんですけど、まずは本当にいろいろな経験をさせていただけていることに、感謝だなぁ……と思います。先ほどもお伝えしたように、さまざまなコマーシャルや田村ゆかりさんのようなアーティスト、アイドルマスターのようなゲームに曲を提供させていただいたり、あと普段はボランティアで演奏したり、講師として指導することもしているんですね。そういういろいろな経験の真ん中には、いつも音楽があって。音楽があったからこそ繋がることができた人たちって本当にたくさんいると思うんです。世界には無数の音楽があるのに、そんな中で私の音楽に耳を傾けてくれたんだなぁと思うと、本当に嬉しくて……。これから先も感謝の気持ちを忘れずにやっていきたいです。

――ワンマンライブ自体は、どのようなものになるのでしょうか?

大津 私のことを知っていただいている方って、楽曲提供がきっかけになった方が多いんですね。なので、以前やらせていただいたセルフカバーワンマンライブのように、提供させていただいた曲の中からいろいろ歌わせていただけたらと思ってはいるんですけど……やっぱり、アニソンって難しいです(笑)。

――速かったりキーが高かったりすることが多いですからね(笑)。

大津 はい。私も速い曲を結構提供しているんですけど、私自身は速い曲がそんなに得意ではないので(笑)。ただ今回はいつものライブとは違って6人編成でのバンドでのライブになるので、できるだけ原曲に近いものをお届けできたらいいなと思っています。速いBPMも頑張るつもりではいます(笑)。提供曲、自分自身の曲を含め、音楽の楽しさをちゃんと伝えられるライブにしたいと思っています。

大津美紀にとって、音楽活動における“やりがい”とは?


――そうやって活動されていくなかでのやりがいというものは、どういうときに感じられますか?

大津 やっぱり一番のモチベーションは、聴いていただく方たちからの、いいリアクションですかね?(笑)。実際にどういう反応かっていうのは聴いていただかないとわからないものですけど、楽曲の制作中やリハーサルなどを通じてライブの方向性が決まっていくなかで、「早くみんなに聴いてもらいたいな。どんな反応があるのかな?」と思うんですよね。

――楽曲制作のなかでは、どんな楽しさを感じますか?

大津 曲を作るときって、最初はぼんやりとした色とか風景みたいなものが浮かんでいる状態から、いろいろなことを試しながら作っていくにつれてだんだん輪郭がはっきりしてくるんですよ。そして色がついていって、最終的には1枚の絵になる……という感じなんです。そういうふうに、ものを構築していけるところ、楽曲を作ること自体にやりがいというか楽しさは感じますね。孤独を感じることや、どれだけ考えても全然前に進まないような日もたくさんありますけど、やっぱり完成したときの喜びが大きくて。さらに、それをファンの人たちが聴いてくれたときに、良い反応があればもっと嬉しいですしね。

――制作のなかでの喜びと届いた・届けるときの喜び、大きく分けるとふたつの喜びがあるんですね。

大津 はい。あとはライブで他のメンバーと一緒に演奏する際、やり直しのきかない状況の中でいい演奏ができたときにも「やった!」って思います。そこにお客さんがいてくれて生で届けられるというのは、本当にありがたいことですよね。

――しかもここ数年は、コロナ禍という状況もありますし。

大津 そうですね。私も無観客での配信ライブが続きまして……私はそんなにライブの本数をやるタイプではなくて、自分自身に対しても、ライブでパフォーマンスをする人、というよりも、家にこもって曲をつくってたい人、という意識が強かったんですね。でもコロナの感染症が流行り社会全体がなんとなく重たい空気になってゆく中、さらに無観客のライブが続き、想像以上に自分が精神的なダメージを受けていたことに気づきまして。直接、音楽を届けられるということの素晴らしさとそれが本当に貴い時間なんだということを改めて感じます。

――発表するだけではなくて、同時に受け取ってもらうことにも喜びを感じていたというか。

大津 そうですね! ですので、“人前で歌う”ということやパフォーマンスするということに関しても、見方や意識が以前とは変わりましたね。それこそ「このキモチ」のリリース当日の8月6日にライブをやったときは、人影があるだけで「温かいなぁ」って思いましたね。もちろん無観客だからといって何か気が抜けていたりしたわけではないんですけど、一緒に演奏したメンバーも「やっぱ、人がいると違うよね!」と言っていました。きっとお客さんの側も、同じような気持ちのところはあるんでしょうね。コンサートが中止になったりとかいろいろあったけど、「やっと行けた!」って。だからこのままね、生で楽しめる機会が、続けられるといいですよね。

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information

タナベサオリ×大津美紀 絵と音楽による作品展
ー猫はユメをみていたー

場所:ギャラリー&ショップねこの引出し(中央区東日本橋2−12−2)

電話:03-3862-2280
時間:12時〜17時

各日13:30より映像作品の上映、トークイベントを開催

えかきタナベサオリとうたうたい大津美紀の東京初となるコラボ展。

幻想的な世界を旅する猫を描いたオリジナル映像作品の上映、新作の絵画や音楽作品の展示をいたします。
作家との交流を楽しめるオンラインイベントも開催予定。
情報は随時SNSにて発信してゆきますのでどうぞお気軽にご参加ください。 
Twiter @filmehon

タナベサオリ official website
大津美紀 official website

インタビュアープロフィール
須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年にフリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける。Twitter:@sunaken




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