サムネ5

カバー曲のVo.トリートメント ~WOLF - B'z~

今回は本日YouTubeにUpしました「WOLF - B’z」カバー動画のmixについてお話します。

宅録mixは本番のレコーディングスタジオと異なり、当然プラグインの制限に左右されるのでコンペ楽曲や本番アレンジでもmixの際のmixトリートメントは常に気を遣うルーティンであります。しかし現在行なっているカバーは主にピアノと歌の弾き語りのものをupしている為、上述したプロダクトよりもより自由度の高いプラグイン処理が可能となり「追い込める」という部分で普段とは違う楽しさがあります。

今回は表題「WOLF - B’z」カバー動画のmix:Lead Vocalトリートメントについてお話します。

*通常のJ-Pop の Leav Vocal セクションでは以下を主に使用します。

・EQ:くせのない系
・コンプ
・EQ:キャラクター歪み系
・サーチュレーター
・ディエッサー

センドで:

・ディレイ
・リバーブ

*以下は今回の「WOLF」で使用したプラグイン踏まえた解説になります。

・EQ:くせのない系:
通常のフルオケでも使用するR-EQを使用してます。オケ情報量が通常のJ-POPの場合はLow Cutが男女共に通例ですが、今回はLow Cutなしを使用してます。これも通常と同じ処理で、中低音のコシを作るのと中高音のノイズ部分を少しだけカットし高音の滑舌の部分を広い帯域でブーストします。

・コンプ:
今回も通常と同じ76プラグインを指します。レシオは通常フルオケではほぼ全部押しですが、カバーの場合はレシオを曲によりセレクトしてます。フルオケの際は、歪み成分が増すので音圧の高い楽曲では違うキャラクター、歪みの少ないもので全体の整合性を作る場合もあります。VocalがJ-Popでは一番大切なセクションという意味で76や他のコンペでプラグインをある程度、固定させるというルーティンがあると効率性がより増すイメージがあります。

・EQ:キャラクター歪み系:
フルオケでも頻繁にインサートするSSL-EQを使用してます。前述した76、あとPuigTecや他のプラグインとの歪み干渉の多い場合は、APIなどスッキリしたものを使用するセレクションがフルオケ、カバー共にあります。ここも前述した制限があるとスムーズです。例えばコーラス系はV-EQにしてメインはそのキャラクターは使用しない、といった制約を設けて他の作業をスムーズにするアプローチが何かと役に立ちます。

・サーチュレーター:
アイドル、アニメ系のmixで最近よく見かけます。オケの情報過多の場合に埋もれたVocalを前に出すイメージです。Vo Pf のみのカバーmixでは埋もれる事はないので基本的には使用しないです。

・ディエッサー:
こちらはカバーでも一番気を遣うトリートメントのセクションです。前述したキャラクター系をブースト気味にしてディエッサーを強くしたり、弱めてディエッサーを弱くしたり、Lead Vocal のHiを削るニュアンスは様々なものがあるので、自分に合ったイメージを試行錯誤すると良い音にたどり着けます。カバーの場合は曲中の情報量が少ない分、ノイズや空間、Voの滑舌の処理などユーザーに見える部分が多いのでより気を遣うトリートメントになります。

・ディレイ:
こちらは先日のコラムで記載した「Echo Boy」が鉄板です。ボリュームチェンジでなく、空間情報量の増減でボリュームが変わる所が「わざとらしく」なくて好きです。Waves系のキャラクターのないディレイでは表現の出来ない部分であります。曲により付点8 / 8 をセレクトしてます。ジャンルやテンポによりハマる、ハマらないもありますが、絶対ではないので、毎回、両方試して自分のイメージに近いディレイを選択します。Dance系楽曲では同プラグインにてフィードバックのオートメーションの増減にてFxを再現する事もあります。逆回転テープ的な雰囲気で、これはかなり使えるのでぜひ試してみてください。

・リバーブ:
R-Verbを使用してます。前述したディレイとの整合性、キャラクターのあるプラグインに対して、近いセクションや同じ楽器ではキャラクターの少ないものをセレクトする必要がある為です。あえて聞かせるリバーブと聞かせないリバーブのめりはりをつけると良い具合にVocalを際立たせます。

*まとめ(フルオケ、弾き語り2trオケ共通のVoプラグイントリートメント):

・信頼のおけるプラグインは何個か固定しておく。
・固定の際はJ PopではVocalを基準にする。
・自分だけの信頼のおけるプラグインインサートルーティンを作る
・固定プラグインもタミングを見てブラッシュアップしていく

暫くテープシュミレーター系プラグインはあまり良いイメージがなくて使用してなかったのですが、先日知人のクリエイターから勧められて今回のカバーのmixで Pfとマスターに使用した所、とても良い感じになりました。フルオケでは感じなかった音質の「落ち着き」に似た雰囲気を感じられました。音楽のトレンドはものすごい勢いで進化し続けています。状況や場面、次期、時代により有効なトリートメントのセレクションも絶え間なく変化していきます。良い音楽を創り出すには音楽情報のアップデートに常に目を配る必要があります。


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