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今も昔もこれからも、小さなお店にとって必要なこと

6年前に初めて訪れたカフェで、カフェの経営をどうすればいい?、と相談を受けたけれども、たいしたことを答えられた無かった私。けれども、何をしなければいけなかったのか、今なら分かります。
結論は一言ですし、その具体的な方法も確立されています。けれども、その結論を1行だけ書いても、人は理解はしても誰も行動に移さないでしょう。自分が考えて納得して決意することで、自分が行動するのです。人から言われてすることで長続きはしないでしょう。
やはり、ある程度の文章量を読み、自分が読み進めながらなるほどそうだな、これは違うな、とか思いつつ、自分ならこうする、これはしないと考え、その上で実行にうつすものだと思います。

冒頭のカフェのオーナーの女性はカフェは閉めてしまいましたが、それ以降友人となり、今に続きます。良いカフェは長く続いてほしいのですが、なかなか続いてくれません。大学時代からカフェ巡礼をしているので、かれこれ20年以上、カフェの盛衰を見ています。行けるときに行っておかないと、次の機会が無い、というのがカフェには多すぎます。
対して、もう15年以上も続いているカフェもあります。カフェで10年というのは老舗と言っていいでしょう。そのカフェには、新しく出来た頃に行って、それから、私にとっては遠いところにあるので年に何回かしか行けず、今はさらに遠いところに私が引っ越したので、年に2回行くぐらいになりました。それでも、そのカフェが重ねる年月には、私が結婚してパートナーを連れて行き、次には子供も連れて行く、という、私の人生の一部が加わります。オーナーと話をするのが楽しみなところです。
他にも、パン屋さんのカフェや、ギャラリーカフェや、カフェに行ってオーナーと友人となり、話をするところがあります。
共通点は何でしょうか?なぜ私は何度も行くようになったのでしょうか?答えははっきりしています。オーナーが私を覚えていて、私も相手を知っている。行けば、話をする。つまり、交流があるからです。

 交流こそが、固定客を増やします。

小さなカフェが、飲み物や食事、内装などの雰囲気に注力するのはもちろん大切なことですが、それだけではカフェは長続きしないことを私は数多く見てきました。冒頭に書いたカフェはまさにそうでした。珈琲もちゃんとしているし、美味しいパンとカレーに、こじゃれた雰囲気。その点は良いものでした。けれども、顧客との交流が足りなかった・・・新規の顧客と交流し、固定客を増やすことが足りなかった、と、今、振り返ってみれば分かります。

様々な経営に関する情報を読んだりセミナーに行くと、顧客管理が大切、というのが繰り返し出てきます。では、顧客管理とはなんでしょうか? 顧客名簿を作成して、ダイレクトメールを送ることでしょうか? いいえ、小さなお店がしなければいけないのは、顧客との交流です。顧客に広告を送ったり、売り込みをしたりすることが必要なわけではありません(してはいけない、ということではありません)。
私は、「顧客管理とは顧客記録に基づく活動」と定義しています。顧客記録は、個人情報、販売履歴、対応履歴のことです。そして、顧客管理は大きく分けて、営業と交流の2種類に分けられます。ダイレクトメールを送るような営業と、顧客と雑談するような交流です。

同じ物を買うなら、知らない人よりは、知っている人から人は買おうとするものです。高額なものならなおさらです。不動産は、信頼できる担当でなければ売買しようとはなりません。
顧客との交流方法は、今も昔も変わらない、そしてこれからも変わることの無い方法が確立しています。それは、誰もができることですが、誰もがしているわけではありません。人は何故、やればいいと理屈では分かっていることを実行しないのでしょうか。例えば、太りすぎは良くないから、間食するのはやめよう、と理屈では分かっていても、お菓子に手が出てしまう。あるいは、歩いた方が健康にはいいと分かっていても、車に乗ってしまう。おそらく、人から言われだけでは駄目なのです。自分で納得して決意しなければ実行しないのです。顧客との交流を実行する方法は幾つもあって、いずれも簡単な方法ですが、お店のオーナーが決意しなければ始まりません。ここに書く幾つかの方法も、自分が出来そうだと思うことからスタートすれば、お店に固定客が増えることでしょう。けれども、実行しなければ何も変わらないのです。

顧客と雑談

顧客との交流で、最も交流らしい方法は、顧客と雑談することです。雑談であって、商品の説明ではありません。顧客の最近の出来事や、家族のことを聞いていけばいいのです。聞いたことは記録しておきます。次に会った時には、その記録をもとに、話を続けていけばいいのです。久しぶりに会った友人に、どうしてた?この前はこう言ってたけど、どうだった?と、尋ねるのと同じ事です。当たり前のことですが、人は自分のことを覚えていてくれる人に親近感をいだきます。また、自分から話をしなければいけない、というわけではありません。それより、聞き役になって、話を傾聴する姿勢が大切です。相手の話を聞く、というのは、自分の話より、あなたの話の方が大切なんですよ、というメッセージなのです(このことは、キリスト教の宣教師から学びました)。さて、私の妻は住職なので、御門徒(浄土真宗での言葉。檀家に近い)との交流を重ねています。御門徒の話を聞いて、記録して、次回、会う前に読み返しています。そうしているので、1年に1回だけ会う人とも、話を深めることが出来ています。結果的に、徐々に相手を知り、相手にも自分のことを知ってもらうことが出来ています。お寺とのご縁を絶やさぬために、交流することが欠かせません。そして、お寺での記録にはもう一つ目的があって、100年後にはこの記録をもとに、今の御門徒の子孫とお寺の未来の住職が、ご先祖はこうだったんだよ、という話ができるようにするためです。いずれにしろ、話をした内容を記録して次回会ったときにその話をしてゆけば、その人との関係はどんどん深まります。顧客のことを知りたいというのは、好きな人のことを知りたい、という気持ちと似ています。相手に関心を持つこと話を聞くこと記録すること、それらは、その人を尊重しているからなのです。

ニュースレター

顧客との交流で、次に効果的な方法は、ニュースレターです。ニュースレターの効果は語り尽くされています。ダイレクトメールは広告ですが、ニュースレターは違います。自分のことを適度に自己開示しつつ、エッセイやお役立ち情報を掲載します。適度に自分の事を書くのは、お店(店主)に親しみを感じてもらうためです。ニュースレターの回数を重ねてゆけば、読んでるよ、という声をもらったり、あの記事は面白かったよ、こう思うよ、という感想をもらえるようになります。話のきっかけになり、そこで直接の交流も始まります。自己開示は、自分の子供を全面的に公開する方法をとるところもありますが、私の場合は、慎重に書く内容を決めています。ここまでは書いてもいいな、これは書くのはやめよう、としています。ニュースレターはお店のファンを増やすのに効果的なのですが、課題は、それがなかなか続かないということです。記事を書くのに時間がかかり、郵送するなら手間とコストがかかります。
ニュースレターがA4裏表だけだとしても、記事を全部自分で書こうとするのは、労力がかかります。顧客が行うイベントを紹介したり、顧客のエッセイを載せたり、顧客を巻き込んでのニュースレターにするのが良い方法です。
お店の中で配布するなら、配布コストはあまりかかりませんから、それからスタートするのが良いと考えます。レジで商品を袋に入れる時に、一緒に入れればいいのです。あるいは、飲食店なら会計の際に渡しても良いですし、席においておく方法もあります。バックナンバーも置いておけば、過去のニュースレターを有効活用できます。今はSNSがありますが、SNSで、ほとんどの顧客と繋がっているのならそれだけでもいいでしょう。けれども、そんなことはあり得ません。幅広く顧客と交流を重ねるのに、ニュースレターは高い効果を発揮します。もちろん、お寺でも、年に4,5回郵送しています。お寺の行事案内の他、近況を掲載しています。最近は、御門徒の自己紹介も載せるようにしています。また、お寺では御門徒向けにカフェ(無料の傾聴喫茶)をしているのですが、それを一般向けにしてゆく予定です。その為には、ニュースレターでうまく広められないかと考えていたのですが、良い解決策を思いつきました。ニュースレターの、記事を書くことと配布することに労力がかかる課題を解決し、さらに自分のお店以外でも広く読まれる仕組みです。しかも、無料で。我ながら、なかなか画期的だと思います。これについては、知りたい人がいるなら書くつもりです。

喜びの声

顧客から支援してもらうのも、大きな力になります。例えば、お客様の喜びの声を集めます。ポイントは、商品やサービス・お店についての「喜びの声」であって、「気づいた事」を書いて下さい、というわけではありません。アンケートで、気づいた事を書いて下さい、としたら、どうしても、ああした方がいいとか、これが悪かったとか、ネガティブなことが書かれます。小さなお店には必要の無いものです。それよりは、これが良かった、助かった、などのお客様の声をもらった方が、断然良いです。お店にとっても励みになりますし、その声をチラシに載せることが出来るからです。

他にも、交流の方法には、商品やサービスを利用するのに必要だったり便利になる道具を無料で貸し出したり、顧客が体験できるイベントを開催したり、顧客の作品や成績を紹介したりと、いろんな方法があります。自分に合ったやり方で、交流を重ねてゆけばいいと私は思います。

顧客管理のバスタブ理論

固定客を増やすためには、交流を行う、というのは分かりました。けれども、そもそも、なぜ固定客を増やさないといけないのでしょうか?
固定客が増えなくても、次から次に新しいお客さんが来るから、全然問題ないよ、というのならそれでも良いでしょう。けれども、今の時代、そうでは無いはずです。バスタブ(風呂桶)をお店に例えて、理解すると分かりやすいです。

バスタブに水を注ぐのが、新規集客です。費用をかけて集客しても、顧客と交流・相互支援をしていないお店のバスタブは、底に穴が空いています。穴から水がじゃんじゃん漏れています。せっかく集まった顧客がどんどん離れている状況です。これでは、いつまでたっても集客に費用がかかります。
優先順位ははっきりしています。まずは穴をふさぐこと。でなければ、水は貯まりません。穴をふさぐ方法は、顧客と交流し、顧客を支援し、顧客から支援してもらうこと(顧客管理)を行うことなのです。

底の穴がふさがり、離れる顧客が最小限となる状態は、顧客とお店とがお互いに良い関係が築けている状況です。顧客はお店が好きだし、あなたにとっても気のあう顧客・話していて楽しい顧客が増えています。

この段階での集客は、どうなっているでしょうか?
今の時代、チラシやフリーペーパーに広告費をかけても、人はなかなか集まりません。けれども、顧客と交流し顧客を支援していくうちに、顧客からお店を支援してもらえるようになります。顧客がお店のことを周りの人に伝え、新しい顧客を紹介してくれるのです。

固定客が増えていくと、顧客からの口コミ・紹介が増えていることに貴方は気づくことでしょう。 すると、大きな費用をかけて広告をする必要がなくなっていきます。究極的には、口コミ・紹介のみで成立するお店となります。顧客管理をしっかり行っているお店では、実際にそうなることが多いのです。

交流がされていない理由

ここまで、顧客との交流が小さなお店にとって必要なこと、と書いてきました。それは、顧客との交流をお店の仕組みにしているところが少ないからです。おそらく、最大の理由は次です。
起業・お店開業の書籍や情報に、固定客を増やすには顧客との交流が必要と書かれておらず、その具体的な方法も全く示されていないからです。
パン屋さん向け開業本を10冊ほど読んでみました。どれも、パンの知識や技術、開業までの流れ、コンセプト、開業の実例などが、詳しく書かれており写真が豊富で参考になったりと良い本です。けれども、 いずれも顧客との交流についてすっぽり抜け落ちています。
ある書では、売上が上がらず下がりかけているのでどうしたら良いでしょうか?という質問への回答として、掃除や洗い物を徹底する、接客を見直す、(捨てるパンの)再利用を考える、とパン屋さんにとっては当たり前であることが書かれています。もちろんそれらは基本であって、基本をおざなりにしているところも多いのですから、そうして改めて書く必要もあるでしょう。けれども、そうした基本をしっかり行っていても売上は上がらない、パンも美味しくお店の雰囲気も良いのに利益が出ない、実際、そんなパン屋さんも多いのではないでしょうか?6年前の私には分かりませんでしたが、今なら分かります。 売る買うというだけでなく、 顧客を支援し、顧客から支援してもらう、顧客とお店の相互交流が必要だったのです。
この顧客とお店との相互交流について、パン屋さん開業の本に、1章を設けて書かれているなら、街の小さなパン屋さんがもっと活き活きとしていくだろうと思います。

顧客と交流することは、お店にとってだけで無く、顧客にとってもメリットだらけです。
是非、行いましょう。

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