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成田空港見学ツアーご参加者の皆様に、小冊子の中ではご紹介しきれない情報をご案内する補足資料。第1弾は成田空港を発着する主要な旅客機の特徴についてです。


ボーイング社製の旅客機

①ボーイング747

初飛行:1969年 商業飛行開始:1970年 累計生産数:1574機(生産終了)
標準座席数:3クラス467席
※B747-8のデータ

大韓航空 ボーイング747-8

ジャンボジェットの愛称でも知られる、言わずと知れた大型の旅客機。航空機による安価な大量輸送を実現し、それまで一般庶民には高嶺の花であった航空旅行(特に海外旅行)を可能にした画期的な機体である。長い間世界最大の旅客機であったが、エアバスA380の登場により、その座を明け渡した。ただし、最新型のB747-8は世界最長の胴体を持つ旅客機である。大量輸送できるが、運航コストも大きい旅客機のニーズは先細りで、旅客機として活躍する姿は徐々に見られなくなってきている。一方で、軍の輸送機として設計された経緯があり、貨物専用機として能力を発揮する構造となっており、成田空港でも貨物機としてその活躍を多く目にすることが出来る。

キャセイパシフィックカーゴ 貨物機仕様の747-8F

+α情報
・操縦席が2階部分にあるが、貨物コンテナを前方から積み下ろしすることが出来るようこのような設計となった。
・ジャンボの愛称は、19世紀後半に活躍した有名なアフリカゾウの名前に由来する。しかし、当のボーイング社は鈍重なイメージがそぐわないとして、この愛称に否定的で「スーパーエアバス」と呼んでいた。

②ボーイング777

初飛行:1994年 商業飛行開始:1995年
累計生産数:1445機(2016年12月現在)
標準座席数:3クラス365席
※B777-300のデータ

キャセイパシフィック航空 ボーイング777-300

双発機では世界最大最長の機体。国内線仕様だと514名(ANA)の定員を誇る。双発機である為、世界中の主要な空港に離着陸が可能な点等が評価され、多くの航空会社で導入されている。また、大型ゆえにボーイング747の代替機としても重宝されている。強力なジェットエンジンを備えており、直径はボーイング737の胴体に匹敵するほど大きい。初期の機体は引退が始まっているが、次世代モデルとして777-8X、-9Xが開発中。当初2020年を目途ANAが導入予定だったが、開発が遅延しており、2025年以降の導入となる見込み。

オーストリア航空 ボーイング777-200

+α情報
・500席を超える双発機を運航するのは、世界中で日本のANAとJAL(2021年退役済み)のみである。
・2019年4月より、日本国の政府専用機はボーイング777-300ERとなった。(※以前はボーイング747-400)
・開発中の次世代モデルの777-8X,-9Xについては翼長が長い為、折り畳み構造となる予定である。

③ボーイング787 ドリームライナー

初飛行:2009年 商業飛行開始:2011年 累計生産数:975機(2020年6月)
標準座席数:3クラス223席
※BOEING787-8のデータ

ユナイテッド航空 ボーイング787-8

世界で初めてANAが商業飛行を行った最新鋭の機材。航続距離が長く、従来の大型機では採算が取れなかった長距離国際線の開設が可能となった。機体部品の約35%を日本国内で製造しており、準国産機とも言われている。炭素繊維複合素材を50%使用し、軽量化により従来機に比べて約20%の燃費削減を達成。エコで静かな飛行機として世界中で導入が進む。就航当初はトラブルが続出し、一時全面運航停止となったが、その後信頼回復し、多くのエアラインに採用されている。ボーイング787-8を基準に、胴体延長型の787-9, 787-10の3タイプがある。

エティハド航空 ボーイング787-9

ボーイング787の特徴
・エンジンカバーの後部がギザギザの形状(シェブロンノズル)
→エンジンから出る騒音を、従来機に比べて50%以上低減する機構
・コックピットの窓が4つに分かれている。
→中型・大型の旅客機としては唯一。6枚に分かれている通常の機体に比べ、
 面積が広い分耐久性が乏しく、時折ヒビが入って緊急着陸することも。
・衝突防止灯が従来機と異なり、長めに鮮やかに点灯する。
→夜の空港や夜空を飛ぶ飛行機を眺める時でも、787だけはパッと分かるくらい特殊な光り方をします。

シンガポール航空 ボーイング787-10
シリーズ3機の並び 手前から787-8,787-9, 787-10

④ボーイング767

初飛行:1981年 商業飛行開始:1982年 累計生産数:1069機(生産終了)
座席数:2クラス199-237席
※ANA-300国際線

ウズベキスタン航空 ボーイング767-300

ミドルマンの悲劇を最小限に抑えたセミワイドボディ機。基本形である2-3-2のアブレストの場合、中央の席に座る確率はわずか17%に留まり、8割以上の乗客が窓側席もしくは通路席に座ることが出来る。一方で機体が細い為、大型のLD3コンテナを並列で搭載できないという弱点もある。航空会社にとっては効率の悪い機材の為、同機以外のセミワイドボディ機は存在しない。なお、同機はAmazonの自社専用貨物機である「Amazon-one」としても使われている。

F列のみが窓側でも通路側でもない中央席(ミドルマンの悲劇)
貨物専用機としても大活躍 ANA Cargo ボーイング767-300F

⑤ボーイング737

初飛行:1967年 商業飛行開始:1968年
累計生産数:11,299機(2023年1月現在)
座席数:LCCモノクラス189席
※同シリーズの代表機 BOEING737-800

ジンエアー ボーイング737-800

世界で一番売れているベストセラー機で、累計受注数は10,000機を超える。短い滑走路での離着陸や短時間での巡航高度への上昇等、短距離路線での使い勝手が良い機材となっている。ボーイング社製の旅客機で初めて2人乗務が可能となった。エアバスA320と並んで、LCC各社で多く導入されている。2018年にはシリーズ最新機の737MAXがデビューしたが、相次ぐ墜落事故により、一時全機運航停止に追い込まれたが、その後安全性が確認されて運航が再開されている。

ANA ボーイング737-500 スーパードルフィン (2020年全機退役済み)

【ボーイング737の世代】
第1世代:737-100, 200
第2世代(クラシック):737-300, 400, 500
第3世代(NG/next generation/):737-600, 700, 800, 900
第4世代(737MAX):737-7, 8, 9 ※2018年度より商業飛行開始
※他の旅客機のシリーズと違い、番号の大きさと機材の大きさが必ずしもイコールではない。

⑥ボーイング757

初飛行:1982年 商業飛行開始:1983年 累計生産数:1050機(生産終了)
標準座席数:2クラス200席

デルタ航空 ボーイング757-200 ※デルタ航空は成田空港撤退済み

ボーイング767と平行開発され、操縦資格も共通化された機体。元米国大統領のトランプ氏が、当時プライベートジェット機として当該機を個人所有していた。なお、デルタ航空のB757は2018年に成田線より撤退し、現在は同港に就航していない。また、日本国内では現在定期便として同機が発着していない為、非常にレアな機材となる。ちなみに、アメリカの新興航空会社ニューパシフィック航空(旧称ノーザンパシフィック航空)が、同機を使用してアラスカ州アンカレッジと成田空港をデイリー運航する計画を発表。2024年以降の就航を予定している。

エアバス社製の旅客機

①エアバスA380

初飛行:2005年 商業飛行開始:2007年 累計生産数:251機(生産終了)
標準座席数:3クラス525席


エールフランス航空 A380-800 ※2020年退役済み

世界初の総2階建てジェット旅客機。ボーイング747を抜いて、史上最大・世界最大の旅客機である。定員は3クラス525名が標準、モノクラスで853名とされているが、実際に最大の定員を誇るのは、エミレーツ航空の2クラス615名である。超大型機ゆえに、発着できる空港が限られており、首都圏では成田空港にのみ発着している。羽田空港に乗り入れが出来ない一番の要因は、同機が発生させる大きな後方乱気流により、後続機との間隔を通常2倍空けなければならず、ただでさえひっ迫している羽田空港の発着枠を減らすことになってしまう為と言われている。また、発着可能な成田空港においても、4,000mのA滑走路のみでしかり着陸ができず、同滑走路が閉鎖となるとダイバートを余儀なくされる。発着可能なスポットも限られており、その巨体ゆえの制約が多い旅客機である。

アシアナ航空 エアバスA380-800

ANAが3機発注しており、2019年5月より成田=ホノルル線に就航。愛称は空飛ぶウミガメ”FLYING HONU”。1号機はハワイの空をイメージした青い機体の”Lani”、2号機はハワイの海をイメージしたエメラルドグリーンの“Kai”、3号機はハワイの夕陽をイメージしたサンセットオレンジの”La”の3機体制。2024年12月からはダブルデイリー(1日2往復)、週14往復の運航が予定されている。

②エアバスA350

初飛行:2013年 商業飛行開始:2015年 累計受注数:1,034機(2023年現在)
標準座席数:3クラス314席
※A350-900のデータ

ベトナム航空 A350-900

2015年に就航したばかりのエアバス社の最新鋭機。正式名称はA350 XWB(eXtra Wide Body)。その名の通り広い客室を備えていることがセールスポイントで、同規模のボーイング787を強く意識した仕様となっている。胴体延長型の-1000もラインナップに加わり、日本からはJALがボーイング777の置き換え用として大量発注し、2019年9月より国内線に就航。B787と並び、新たな旅客機のスタンダードとしての活躍が期待される。また、2023年11月より国際線にも導入予定である。

日本航空JAL エアバスA350-900
超胴体型のA350-1000 主脚の数も6輪ずつに増えている

③-1 エアバスA330

初飛行:1992年 商業飛行開始:1994年 累計生産数:1159機(2015年現在)
標準座席数:3クラス253席 ※A330-200のデータ

アリタリアーイタリア航空 A330-200 ※同航空会社は2021年に消滅

当時大型の双発機と4発機の需要が拮抗していた為、エアバス社は双方のニーズに応えるべく構成要素を最大限共通化したA330とA340を同時開発することとし、開発費を抑制した。操縦も共通の部分が多い為、短時間の訓練を受ければ、双方を操縦可能となる相互乗員資格も認められた。4発機のA340は生産終了したが、A330に関しては改良型A330neoが開発され、新規の受注も増えている。日本の航空会社では、かつてスカイマークが-300を短期間運航していた事がある。

タイライオン航空 A330-300(超胴体型)

+α情報
・開発段階では双発タイプがA340で、4発タイプがA330という形式名だったが、双発機がA340で、4発機がA330では顧客(航空会社)が両機を取り違える恐れがあるとの懸念から、両者の形式名が逆転することとなった。

③-2 エアバスA330neo

"neo"はNew Engine Optionの略で、A330の改良型。従来機よりも燃費が約25%向上しており、ボーイング787と同等の航続距離を実現した。

タイ・エアアジアX エアバスA330-900(neo)

④エアバスA340

初飛行:1991年 商業飛行開始:1993年 累計生産数:377機(生産終了)
標準座席数:3クラス295席
※AIRBUS A340-300のデータ


ルフトハンザドイツ航空 A340-300

同機はエアバス社が開発した最初の4発機となった。開発当時双発機の安全性はまだ乏しく、特に太平洋や大西洋を横断する路線では、ルートに制約の少ない4発機が好まれた。ところが、エンジンの信頼性はめまぐるしく向上し、双発機の規制も大きく緩和されていった。後に登場した双発機のボーイング777がA340と同等の性能を発揮したこともあり、受注が伸び悩み2011年に生産が終了した。

スイスインターナショナル A340-300

+α情報
・現在に至るまで、日本の航空会社による導入実績はない。
・-500,600では、床下貨物スペースにトイレを設置できるオプションが設定されており、客席を増やすことが可能。
 なお、床下トイレ設置の場合は非常時の酸素マスク数の制限により、階段でのトイレ待ちは禁止されている。

⑤エアバスA320

初飛行:1987年 商業飛行開始:1988年
累計生産数:8,525機(2018年末時点
座席数:LCCモノクラス180席
※A320のデータ

ピーチアビエーション A320-200

操縦桿に代わりサイドスティックを採用した初めての民間航空機。ボーイング737より後発だが、同等の性能を有しており、同機と並ぶベストセラー機である。また、737同様LCCでも活躍している。A320neo(ネオ)は、従来型より経済的な運用を計画してエンジンをさらなる高性能エンジンに変更したモデル。大きなエンジンが特徴である。Neoと並行して従来型も製造される為、区別できるようceo(セオ)と呼ぶこととなった。

ANA A320-200neo

【機体バリエーション】
従来機:A318, A319, A320, A321(A319ceo, A320ceo, A321ceo)
※ceo(セオ)=current engine option ※neo(ネオ)=new engine option
新型機:A319neo, A320neo, A321neo
※数字が大きくなるに連れ、胴体が長くなり定員も増加する。

オーロラ航空 短胴体型のA319
フィリピン航空 長胴体型のA321

ATR社製の飛行機

①ATR42 / 72

初飛行:1984年 商業飛行開始:1985年
座席数 ATR42:最大52名  ATR72:最大74名

トキエア ATR72-600

プロペラ機は昔の飛行機と考えられがちだが、ジェット機とは比べ物にならないほど燃費が良く、運航効率が良い為、比較的需要の少ない離島や地方空港間を発着する路線で、現在も引き続き活躍している。ジェット機が概ね860キロ前後で飛行可能なのに対して、最高速度は550キロ程度にとどまるが、短距離の路線であれば所要時間にも大きな差が出ない。

北海道エアシステム ATR42-600

ATR社製の旅客機はつい最近まで日本国内では導入されていなかったが、2016年に天草エアラインがATR42-600を1機導入したことを皮切りに、日本エアコミューター、北海道エアシステム、オリエンタルエアブリッジで順次導入された。2020年に新潟空港を拠点として設立されたトキエアが、2023年中の運航開始を目指してATR72を2機導入。事業認可に向けて、飛行訓練等を実施している。また、同社は成田⇔佐渡便を2024年以降に運航開始する計画を発表しており、実現すると首都圏から佐渡島まで短時間で移動できると大きな機体が寄せられている。



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