デザインスクール留学@デンマークへの軌跡(1) はじまりのはじまり

いろんな人からデザインスクール留学に関する経験を聞かれるのだけど、そもそも私はなぜ留学しようと思ったんだっけ。なんて事をふと思い出したので整理も兼ねて書いてみることにしました。ちなみによく聞かれますが、私の場合はあまり絶望していません。


私は新卒でキヤノンに入社しました。ちょうどリーマンショックの前で超売り手市場、多くの企業が大量に新卒社員を採用していた頃です。私がキヤノンで取り組んでいた仕事は大きくわけて3つ。

1. 現在または近い内に利用可能な技術を使った新しい製品やサービスを提案し事業化する。
2.ある程度先の未来に実現されるであろう新しい製品やサービスを提案し、キヤノンの研究開発の推進剤とする。
3. キヤノンにおける新規事業創出のための環境を提案する。

1は比較的わかりやすいかと思います。大きな企業というのは大抵、研究所を持っており、日夜新しい技術の研究開発に取り組んでいます。ところが、その研究成果がビジネスとダイレクトに結びつくかと言うと、もちろんそういう事もあるのですが、必ずしもそうではありません。そのためそれらをどうビジネスに適用するかを考えなければなりません。

もう少し細かい話をすると、そもそも現行事業に、あるいは製品やサービスに結びつく研究開発は事業部でやっているわけで、特定の事業部に所属しない研究所では、現行事業には直接結びつかない研究をすることが必然的に求められます。もちろん事業部からの受託研究をすることもありますが、そうでない研究も多く行われているわけです。中の人のマインドとしては「事業部の下請けになるな。むしろ研究所から事業部提案したり、新しい事業を作っていかなければならない。」と言った感じです。

2に関しては、もしかしたら今でいうスペキュラティブデザインに近いのかも知れません。将来、起こり得る未来を予測して、そこであり得る製品やサービスを提案します。現時点でそのコンセプトを実現するための技術が存在していなくても構いません。そうした未来を描く事によって、研究所で、将来、どのような技術にアンテナを張っておくべきか、研究開発を進めておくべきかを検討する土台となっていました。ちなみに私達はこれを、テクノロジードライバーと呼んでいましたが、これが一般的な名称なのかどうかはわかりません。キヤノンは過去にMIT MediaLabのスポンサーをしており石井先生と親交があった他、MediaLabに社員を何名も派遣しているので、もしかしたらそこから来た用語である可能性もあります。

3はわかりやすいですね。会社として新規事業創出のためにどんな課題があるかを明らかにしたり、もしくは他社の事例を調査したりして、こういう改善方法があるのではないかというプロセス提案だったりを主にしていたような気がします。

世の中的に、キヤノンと言えばプリンタやカメラ、コピー機の会社だというイメージが強いんじゃないかと思います。たしかに、事業規模としても、マーケットシェア的にも非常に存在感がある企業である事は間違いないのですが、中の人的な問題意識として、新規事業がほとんど生まれていない事があります。もちろんゼロではありません。例えば、うまく行ったかどうかは別にして、MR システム研究所から生まれたMixed Realityなどはその筆頭でしょう。

他にも私が関わったものだと、産業用ロボットだったり、ディスプレイだったり、医療機器だったりネットワークカメラだったりと多くの事業や製品/サービスが生まれてはいるものの、残念ながら胸を張って自分たちで作った大成功と呼べるようなビジネスってほとんどありません。そして現在、ポートフォリオとして新規事業に分類されているのはほとんどM&Aで取得した事業なのです。

アイディア出しは社内のいたるところで行われているし、新規事業創出のための非公式なワーキンググループだって数えきれない程ありました。みんなイテレーティブにプロトタイピングを積み重ねることが大事だと考えて取り組んでいたし、リーンスタートアップ的なやり方を社内に取りれる動きもありました。ユーザの声を聞かなければならないということで、様々なリサーチ活動が行われていたし、方法論について勉強したり、セミナーやイベントにも足繁く通っていました。参加者数十人のイベントに、別の部署からとはいえキヤノンから複数人が参加しており、同じ会社の人同士で名刺交換したことも私自身数えられないほどあります。しかしながら新規事業を、イノベーションをと様々なアプローチでみんな頑張るのだけれど中々思うような成果が得られないわけです。

そのような状況で何がきっかけだったかはちゃんと覚えていないのですが社内SNSでIDEOが話題になったことがありました。

当時の私にとってデザインとは見た目を整えたり、あるいはかっこよくする行為であって、新規事業/製品を考えると言う自分の仕事がデザインであるとは考えたことが無かったのですが、世の中的にはそもそもこれってデザインなんだ、と衝撃を受けた事を覚えています。

そして日本にもこういう会社ってあるんだろうかと言う時に教えてもらったのが、takram design engineeringです。私はtakrm創業者のインタビュー記事を読み、そこではじめてデザインスクール(イギリスRCAとスタンフォードd.school)の存在を知りました。デザインスクールと言うところでは、新しい事業や製品を生み出す方法論を勉強出来るらしいぞ、と。そして、ならば、デザインスクールに行って勉強したい!と。

さて、しかしデザインスクールと言っても世の中には多くの学校があります。いったいどこの学校が良いのか。学校探しのプロセスがここから始まったのでした。

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デザインスクール留学@デンマーク

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