こういう風に生きたい

 結局、昨日も力尽きるまで本を読んでいたので寝坊。この三日のブームは芥川龍之介。

 午後、中目黒へ。サポーターをしているメディア・soarの代表工藤瑞穂さんとしゃべる。工藤さんが「子どもの頃に読んだ伝記って、人の人生にすごく影響を与えていると思う」と言うのを聞いて、少なくとも自分に関して言えばものすごくそのとおりだと思った。

 母も父もせっせと本を買ってくれていたので、好きだった伝記はたくさんある。その中でも、もっともしつこく読み込んだ一軍書を挙げれば、まずは講談社火の鳥文庫の『ウォルト・ディズニー』『手塚治虫』、そしてポプラ社から出た山口正重の『ヘレン・ケラー』の三冊になるだろう。
 この三冊は間違いなく、私の幼年期における「キャリア・プランニング」の参考書だった。「こういうふうに生きたい」と心底思ったし、それぞれの本がボロボロのよれよれになるまで読んだものだ。

 子どもが、最初に人生の雛形にするのはほとんどの場合養育者であり、その多くは「親」である。じゃあ、親の次に出会う大人は誰かといえば、これも高い確率で、親戚や学校の先生、テレビでよく見る人辺りになるだろう。そして本が好きだと、そこに「偉人」が割り込む可能性が高くなる。工藤さんの場合は野口英世に相当影響を受けたらしいし、私も上記の三人に相当影響を受けた。時点でナイチンゲール、マザー・テレサ、アンネ・フランク、紫式部あたり。伝記の存在がなければ、私は「遊園地の作れる、世界に名を轟かす大作家になるんだい」なんて壮大な夢を抱いたりせず、もっと慎ましい「ライターor編集者志望者」になっていたかもしれない(父も母もそういう業界の人間だったので)。

 もちろん、子ども向けの伝記では、その偉人の本当の立体感は見えてこない。ウォルトは白人優位主義者だったし、手塚治虫はご存知の通り病的に嫉妬深かった。ヘレン・ケラーとサリバン先生にだって、綺麗事じゃすまないようなことはたくさんあったと思う。
 でも、それはそれとして、やっぱり子どものときに「こういうふうに生きたい」と願う対象を持てるのは幸せである。その願いは、「自分なんて所詮こんなもんだ」と思う気持ちの反対側にあるものだからだ。

 多くの人間は、大人になるにつれて、「こういうふうに生きたい」と素直に思う気持ちを失っていく。「よおーし私も遊園地つくるぞお」ではなくて、「この人は親が金持ちだったから、時代がよかったから、才能があったからこんなことができたのであって、それはズルいことであって、そういうもろもろに恵まれなかった私はものすごく不遇なのであって……」みたいな発想に寄っていってしまう。6歳のときはそう思わなくて26歳や36歳のときはなぜそう思ってしまうのかといえば、賢くなったからではなく、ひとえに小賢しく臆病になったからだろう。誰にも見られていない心の中で、勝手に自分を下げたりしているというのは……。

 なんてことを考えつつ中目黒打ち合わせを終え、帰りにベーカリーショップでスコーンを食べる。Amazonで、子どもの頃に好きだった伝記を一冊取り寄せた。そして河原を歩きながら、ずっと同人誌のことを考えた。ようやく構成が決まってきた。今週中に台割やなんかを作る。あと正味一ヶ月くらいの猶予しかないので急がないと。

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小池みき

何度も読み返したい素敵な文章の数々 vol.6