リュック買った

 シェアオフィス仲間のお姉さまがたとミニパーティをして帰ってきたところである。とても楽しかった。カメラマン、占い師、フラダンサー、経営者などなど個性的なメンバー揃いで、全員が人生揉まれてきているため話がおもしろい。3月のうちに何人もが人生の転機を迎えており、ある人の妊娠、ある人の卒婚、ある人の結婚……などなどを口実にいちいちみんなで乾杯をする。誰も乱れることなく、明るい話ばかりをしていた。私もシャンパンを一杯飲み、カナッペやチーズやハムをつまんだ。
 3時間ほどしたところで誰からともなくサクッと片付けをして健やかに解散。私は飲み会が基本的に好きじゃないけど、こういう、本当に楽しく過ごすことだけが目的の大人同士の飲み会はいいなと最近思う。
 このシェアオフィスに来るのはつやつやしたオシャレ美人ばかりなので、眼福なようなやや肩身が狭いような(卑下しているわけではない。何しろ美容系の経営者がいたりする空間なのだ)。今日も、ひとりが「31歳なの?若いねえ〜!」と言ってきて、「そんな、せいぜい1,2歳しか違わないだろうに」と思っていたらなんと40歳だった、ということがあって驚いた(みんなも目をむいていた)。その彼女にサルサダンスの面白さを語られ俄然興味がわく。友人と今度合気道の体験稽古に行くつもりなんだけど、その次はサルサダンスかフラダンスに行ってみよう。

 パーティより前の、昼間の話。
 先月にリュックサックを新調することを決めて、ぐずぐずしているうちにあっというまに3月末。いい加減無理矢理にでも買おうと思って渋谷へ行った。友だちにすすめられたCAMPERなども見たのだが、最終的にロフトのビジネスバッグコーナーへ流れ着く。そこで吉田カバン、アンクール、Incaseなどを次から次へと背負った。背負い過ぎ、眺めすぎて途中で何がなんだかわからなくなってくる。私は、身につけるものを選ぶときに異様に体力を消耗する人間なのだ。一目惚れでものを買うことも100回に1回くらいはあるが、そうでなければ100回くらい手にとらないと買えない。

 フロアには私と同じように、リュックで悩んでいる白人男性が一人いた。彼もどうやら、どれかを買おうと考えているらしかった。
 彼と私は、何度も何度も商品台から商品台をわたり歩き、同じ商品を順繰りに、しかも繰り返し手に取った。どちらも、Incaseのリュックは何度も開けしめしたり、ひっくり返したりした。そう、スペック的にはこれが一番よさそうなのだ。ただ、私としてはデザインに不服あり。もっと真っ黒でゴワっとしてでも直線的なのが欲しい……。

 それで最終的に、私が何を買ったかというとManhattan Portageである。結局ベタベタなところに落ち着いたというわけだ。

 なんでこれにしたかというと、黒リュックがほしいと思った原点を思い出したからである。
 だいぶ前のことだが、訳あって北千住のみずほ銀行に立ち寄った。ATMを使うためである。そのときはカードの磁気がイカれてしまっていたので、ICカード対応のATMに並んだ(余談だが私は、磁気に弱いものをことごとく狂わせるという不幸な体質に生まれついている。父親も同じで、時計を狂わせることに定評があったので多分本当に体質なのだと思う。銀行のカードなどしょっちゅう再発行している)。
 そして、なかなか私の順番はこなかった。前の人がずいぶん長くATMを占領していたせいだ。それで彼の後ろ姿をじーっと見ていたのだが、その背中に背負われていたのがManhattan Portageのメッセンジャーバッグだったのである。
 私の目は、ずっと「Manhattan Portage」のロゴの上にあった。ボケっとしているときの特徴で、つづりがうまく頭に入ってこなかった。「ハリー・ポッター」という単語がずっと浮かんでいた。ほとんどPoしか合ってない。
 見ているうちに、なんとなく黒リュックが欲しくなった。
 このリュック、けっこういいかもしれない。メーカーを覚えておこう……そう思って、やっと空いたATMを使い、家に帰ったときにはもうManhattan Portageのことは忘れていた。「何かいいリュックを見た気がする」ということしか覚えていなかった。
 あれから幾年月。
 ロフトで同じ商品を見かけて、「そういえばこれ、前に見たやつ!」と思い出したことが、購入の決め手となった。投票所で、「そういえばこの人、街頭演説で見た」くらいを理由に投票するようなものか。いや実際、「見たことがある」「触ったことがある」……「印象を持ったことがある」というのは強い。
 超定番のブランドなのに、今まではほとんど認識したことがなかった。リュックのオマケでペンケースもついてきたので、これからは私の人生にこのブランドの名前がしっかり刻まれるだろう。私が服やバッグのブランドでちゃんと認識して愛用しているのはDakotaとtrippenくらいなので、けっこう珍しいことである。しばらくはこれを相棒に生きていく予定。トレンチコートだろうがタイトスカートだろうがこれを背負ってやる。

 それにしても、パーティは楽しかったが、道中立ち寄った中目黒駅はやばかった。桜の満開シーズンに中目黒駅で降りたことがなかったので、あまりの人混みに仰天。平日の夕方だというのに祭りのような混雑ぶりだった。毎年こんな状態になるなんて、地元の人達や中目黒が通勤先の人たちはさぞ大変だろう。何はともあれ、この時期の中目黒には二度と足を運ぶまいと固く決意。

 そして、あの白人男性が何を選んだかを見届け忘れたことを今になって悔やんでいる。私が見届けなきゃいけないようなことじゃないけども。

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小池みき