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国際恋愛あるある?的エピソード3選を日本語教師視点から分析してみた

私にはオーストラリア人の彼がいて国際恋愛というやつをしています。

基本的には私は日本語、彼は英語で話しているのですが、彼も大学で日本語を専攻していて一応少しは話せるのでたまに日本語で話してくれます。

彼が日本語で話してくれるのは大好きだし、私が日本語教師であるということもあって多少間違えていても理解できるし何も気にならないのですが、

そんな中でもくすっとしてしまったエピソード日本語教師的視点から分析しながら紹介します(笑)

日本語教師に興味がある人は、日本語教師になったらどのようなことが理解でき説明できるようになるのかが分かるし、

国際恋愛中の方にはお相手の方がどういう意図で発言をしているのかなどを理解するヒントになればいいかなと思います。

①”かわいそうだね”の誉め言葉

これは付き合いたてのころよくあったのですが、彼は何かにつけて、

”MIKI、かわいそう~!かわいそう~!”

と、褒めてくれてたんですよね。(笑)

彼が何を言いたいのか分かります?

そう、彼は”かわいい”と言いたかったのです。(笑)

かわいいとかわいそう、じゃ全然違いますよね、、。(笑)

そうか、私がかわいそうなのか、、ふむふむと思いながら嬉しく受け取っていましたが。(笑)

☆日本語教師的分析①☆
 ここで何が起きているかというと、彼は、
 〈い形容詞(いdrop)/な形容詞+そうです Looks like〉
という文法を使っているんですよね。
例えばおいしそう、楽しそう、元気そう、、、などがこの文型にあたる文です。
 かわいい+そうです=かわいそう そうです、彼は文法的には間違えていないんですよね。
そして、何がトリッキーかというと、英語だと”looks cute”と言えてしまうのです。
そりゃあ間違えますよね。(笑)
 
ただ日本語だと”かっこよさそう” ”きれいそう” ”かわいそう”とはいうことができません。
 それは、~そうですという文法には〈見た情報から推測している〉という機能が含まれていて、見てわかるものには使えないんですよね。
おまけに”かわいそう”は”可哀そう”という別のな形容詞として存在するという、、日本語って難しいですよね。(笑)

②けんかの際の”申し訳ございませんでした”

彼と喧嘩になったとき、普段は”ごめん”と謝ってくれるのですが、私がめちゃくちゃ怒っていたり、シリアスな喧嘩をした際、彼は、

”本当に申し訳ございませんでした”

と真面目な顔で謝ってくれるのです。(笑)

めちゃくちゃ反省してくれているのだなあと思うのですが、いきなりの仰々しさにめちゃくちゃ怒っているのに危うく笑ってしまいそうになる一言です。(笑)

☆日本語教師的分析②☆
敬語の”Politeness/Formality”といったものをその文化的背景を持たない/知らない外国人が理解するのは簡単ではありません。
敬語というのは”Formal”な言語、また、”Extremely polite”、”Respectful language”、”modest language”といった様々な言葉で表現され、日本語教育の中でも外国人にこのように表現されていると思います。
ですが、実際はこういった言葉で単純に表現されるものではないのです。

例えば、彼は私に本当に申し訳ないと思っていて、私にRespectfulな気持ちと丁寧さとExtremely sorryな気持ちを伝えたかったんだとすると、”申し訳ありませんでした”という発言は彼にとっては彼の心情をよく表現できるものなんですよね。

これがなぜ日本人的にはおかしいのかというと、やはり敬語にはその機能のほかに、”自分より身分や立場が上の人に使う”という制限が含まれているからなんですよね。(日本人的には当たり前なことですが。)

さらに余談すると、敬語や丁寧な言葉には”相手との距離を遠ざける”という機能もあって、例えば怒った時に、”もうあなたのことは知りません。自分のことは自分でやってください”といった感じで敬語や丁寧な言葉になることがありますよね。
これによって言葉から相手を突き放すような印象や冷たい印象が出され、怒った時により効果的に相手に響くことがあるのです。

こうやって私たちは無意識にも言葉の”Formality”によって言葉が与える印象を操作しているのです。

③手紙の”お世話になりました”

私と彼は遠距離中の結構長い期間文通をしていました(笑)

個人的には手紙というものが好きなので、同棲している今でも記念日には手紙を書いて交換したりしているのですが、あるとき、彼からもらった手紙を読んでいると、文末に

”大変お世話になりました”

と書かれていたのです。(笑)

一瞬、”あれ、私たちお別れするのかな?(笑)”と突っ込みたくなりましたが(笑)

日本語で手紙を書いてくれるというそれだけで嬉しいものなのです。

☆日本語教師的分析③☆
日本人がよく使うこの”お世話になりました”という表現も、外国人にとってはなかなか理解しにくい表現の一つだと思います。 英語で考えると、
”世話する=To take care”
”お世話になります=To be taken care”

と訳されます。

 また、”お世話になっています”という表現はそれだけで感謝の気持ちが含まれており、メールの書き出しの挨拶や人に会ったときの挨拶として使われる表現だというふうに外国人には学ばれていると思います。

 ここでも、彼はきっと”‘I appreciated you for taking care of me”と言いたかったんだと思うんですよね。
そうすると、”お世話になりました”という表現があてはまってしまうのです。

  ですが、日本語だと使えないんですよね。”お世話になります”は将来のこと、”お世話になっています”は進行形、”お世話になりました”は過去のこと(進行性は感じられないのでそこで一区切り終わっているという前提)といった感じで使われてしまうのですよね。

 これが私が”お別れするのか?”と感じてしまう理由で、また☆日本語教師的分析②☆であげた”Formality”の観点からも、この表現は違和感のあるものとなってしまうのです。

言語学習者にとって、母国語からの翻訳にはそぐわない意味をもつ言葉というのは本当にやっかいだろうなと思います。

さて、どうでしたでしょうか。(笑)

付け加えると、彼にこのような誤用があったときも私は彼の日本語を訂正したことはありません。(これについてはまだ別ノートで書こうと思います。)

私自身が正しい言葉を使うことで自然に修正していってほしいなとただただ見守っています。(笑)

ただ、彼のこうした誤用はクラスで学生さんに教える際には重要なポイントになるところだと思うので学生さんには強調して教え込んでいて、役立っています。(笑)

少し長くなりましたが。

じゃあ、また★

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