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他の競技とちょっと違う?ラグビー観戦の文化

「RESPECT THE KICKER」
敵味方関係なく、プレスキック時はキッカーに敬意を払い沈黙を。


ラグビー観戦は、野球やサッカーなどほかの競技とは違う独特の観戦マナーがあります。それは「社交場」として発達したラグビーの歴史、そこから生まれた「紳士のスポーツ」としての誇り、日本ラグビーが世界の中で歩んできた道のり、などなどラグビー発祥と発展の中で生まれてきました。

1.チームによって座席は分かれない

スタジアムでは「ホーム側(多くはメインスタンドからバックスタンドを望み左側)」「ビジター側(ホーム側の反対)」という考え方はあり、試合時にチームスタッフがどちらのサイドに座るのか、などは決まります。ただし、観客の座席は敵も味方も別れずに座ることもあります。そのため、座った隣が敵チームの応援、ということはよくあります。

トップ画像はラグビーワールドカップ2019™日本大会の日本vs.アイルランドの観客席の様子です。アイルランドの旗を日本のジャージとアイルランドのジャージ両方の観客がつなぎました。

試合中はもちろん自チームも応援をします。ですが、試合終了後には、勝ったチームのサポーターには「おめでとう」を、負けたチームのサポーターには「よく頑張った」「Good Game!」とお互いをたたえます。

2.選手紹介では全員に拍手

試合前には場内放送で、両チームの選手紹介が行われます。基本スタイルは選手の名前が読み上げられたら、敵味方関係なく拍手で選手への敬意を表します。もちろん贔屓のチームやプレーヤーには拍手に加えて掛け声、歓声も上げてもOKです。

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3.キックオフは拍手、ノーサイドでも拍手

試合開始のキックオフは、選手がボールを蹴ったら試合開始。試合開始時には全員で拍手をし、選手の健闘を後押しします。また試合終了(ノーサイド)も観客全員で拍手をし、選手の健闘を称えます。開始も終了も大騒ぎせず、落ち着いて選手を応援します。

ちなみに試合終了のことを「ノーサイド」というのは、日本ラグビー独特の文化、世界的にはサッカーなどと同じ「タイムアップ」を使います。個人的には「ノーサイド」とは ”敵味方のサイド(陣)はなくなる” という意味であり、日本が海外に誇る素晴らしいラグビー用語だと思います。

4.素晴らしいプレーには拍手

これまた拍手、なのですが、敵味方関係なく素晴らしいプレーには拍手をします。トライをしたら拍手、キックが決まったら拍手、など点が入るシーンはもちろんですが、素晴らしいキックで領域を確保(自チームが前進)するときや、強烈なタックルで相手を止める勇気あるプレーにも拍手で称賛を送ります。

5.レフリーに最上級の敬意を

ラグビーの試合におけるルールは英語では「Laws of the Game」といい”法律"であり"守るべき規範"です。そのためレフリーは法律家として単純に判定をするだけでなく、状況に応じて両チームが力を最大限に発揮できるように試合の流れを作るのが最も重要な仕事です。だからあえて反則を流すことも、アドバンテージで止めるタイミングを変えることもします。
ある審判は「ラグビーのレフリーは”ファシリテータ”だ」と言っていました。

試合を一番に考えてくれるレフリーに対しては、「きまった判定には従う」。だから微妙だな、と言える反則でも、選手はレフリーに食って掛かるようんことはしません。観客も応援に熱が入るとブーイングすることもありますが、レフリーとレフリーの決定には最上級の敬意を払います。

レフリー

6.プレスキックは静かに

ボールを置いてキックをするプレスキックは、キッカーが集中を最大限に高めて、ただゴールと静かに向かい合いキックをします。だから、観客も静かに状況を見守ります。海外では「Respect to Kicker (キッカーに敬意を)」と注意喚起する様子もあります。

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ラグビーの応援スタイルの変化は歓迎

たとえば「日本チャチャチャ(手拍子)」の応援が会場に響くようになったのは、ワールドカップに向けて盛り上がってきてからです。(往年のファンや関係者は「ジャパン」と呼びます。)

ワールドカップが始まり、昔からのラグビーファンからは「ラグビーの応援ってのはそうじゃない」という気持ちがあり、戸惑った声もあります。一方で、新しいファンも、「なんか独特の観戦マナーがあるようだ」と気が付き戸惑っているのかも、と思います。

私は個人的には新しい応援が入ってくることには賛成です。

多くの人が楽しむためには、不要な垣根は取り払って、受け入れてみればよいのではないでしょうか。もちろん、これまで培ってきた素晴らしいマナーの数々はむしろラグビーから他スポーツへ広がっていくように働きかけるのもいいと思います。

これまでの文化で大切にしてきたものは大切にしつつ、日本ラグビーが次のステージに行くために、これまで他のスポーツで培ってきた日本の応援スタイルを融合して、観客も楽しんで選手に敬意を表して応援したいですね。

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