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RWC2019 観客席は民間外交の場だった!

ワールドカップ前に、ワールドカップを海外で観戦した先輩から、「(ワールドカップでは、)プレーがもちろん素晴らしいですが、観客同士との交流も素晴らしい。」と聞いていました。国内でゲームを見ていた私は、全くピンと来ていませんでした。

ワールドカップが終わった今、「観客同士の交流が素晴らしい」を実感しました。日本が海外サポーターを好きになり、海外が日本・日本サポーターを好きになる、民間外交でした。

ビールをごちそうしてくれたIRE・SCOサポーター

プールA アイルランドvs.スコットランドの試合に行くために、スコットランドへのリスペクトを込めて、チェックのスカートで観戦に行きました。

会場にはアイルランドのグリーンで作られたスーツやドレスのアイルランドサポーター、民族衣装である美しいタータンチェックのキルトを纏ったスコットランドサポーターで会場は大賑わい。地域は違うものの両チームサポーターが試合前から交流しています。

その際に、スコットランドのサポーターから「スカートがチェックだね、同じだね」と声をかけられました。「どこから来たの?」「日本はどこに行くの?」など会話をしていたら、同じ輪にいたアイルランドサポーターが、大量に買ったビールを指さし「飲むかい?」と1つくれました。一緒にいるサポーターは自分たちの仲間、日本国内の試合では、経験しない声かけに「これがワールドカップか!」と驚きました。

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WALの素敵な老夫婦から始まった私の民間外交

プールD ウェールズvs.オーストラリアの試合でのこと。となりの席がウェールズから来た老夫婦でした。アンセム斉唱から涙するマダム、優しく支える旦那様。素敵な老夫婦でした。

試合は開始3分にSOダン・ビガー選手が、今大会初のドロップゴールを決めてウェールズが先制します。その後もウェールズが得点を重ねます。素晴らしいウェールズのプレーに私も歓声を上げました。

ウェールズが先制して折り返したハーフタイム。
ウェールズを応援してくれてありがとう、と言って、キーホルダーをくれました。レッドドラゴンの描かれたウェールズ旗と日の丸、ウェールズの言葉でウェールズを指す「Graud,Graud」と書かれたキーホルダーです。指にたくさんかけていたので、最初からプレゼントとして持って来たのでしょう。

海外のワールドカップに行った先輩から聞いた「観客同士の交流」「選手がジャージを交換するように、観客同士もジャージやものを交換する」を思い出しました。

これかーーーー、これがワールドカップかーーー!!

私は、何も用意していませんでした。手元にあったのは「Number」の付録の選手一覧。とっさにウェールズのページを破り、折り鶴を作り、お礼にプレゼント。マダムは大変喜んでくださいました。

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ウェールズのマダムの件以来、私の「折り紙外交」が始まりました。100円ショップで買った80枚入りの折り紙で、鶴・手裏剣・カブトを折ることにしました。できるだけチームカラーで、と思い、色を選びながら折り、持っていきました。(写真は、ニュージーランドvs.カナダ戦のためのカブトです。)

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持っていく先で、各国のサポーター、子どもたちに喜んでいただきました。英語ができない私は、言葉ではうまくお礼や歓迎を伝えられないけれど、折り紙をきっかけにたくさんの笑顔をいただきました。下の写真は折り紙とオールブラックスのピンバッチを交換。ある時は、マグネットだったり、ビールをごちそうになったり。ある時は、相手が買ったおにぎりを1つもらったり。相手からもいろんな感謝をいただきました。

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自分の席の周辺にビールをごちそうしているニュージーランドの(想定)大金持ちさんも。ハイネケンをしょっていたビールの売り子さんから、背中のビールを全部買い占めたんじゃないだろうか。

その中でも驚いたのは、決勝戦の帰り道。惜しくも準優勝だったイングランドサポーターがアンセム「GOD Save the Queen」を歌っていたところに折り紙を差し上げたら、よぱらっているながらも、何かをお返ししようと全力で財布の中を探して探して、いただいたのが「Oxford International Collage」の学生証。期限は切れているけど、大切なものではないだろうか。何かお返しをくれようとした心意気に感謝しました。
(ですが、何とかして返したい・・ Oxford International College方面にお知り合いがいる方、いらっしゃいませんか。)

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なぜこんなに交流が進んだのか

今回のラグビーワールドカップでは、観客同士の交流、試合後には、負けたチームのサポーターが勝ったチームのサポーターと「Congruatulations!」「Nice Game!」と声をかけあい、ビールで乾杯するシーンが多く見られました。和製英語でいうところの「ノーサイドの精神」です。野球やサッカー、他のスポーツでは見られない文化だそうです。

なぜラグビーだけ、ノーサイドの精神があるのか。

それはラグビーが歩んできた歴史が、大きく影響していると考えます。ラグビーは、上流階級が通うパブリックスクールの1つラグビー校が発祥。富裕層の社交場のスポーツとして発達した時期がありました。そのため「紳士のスポーツ」としてのラグビーの精神が大切にされました。

その文化が根付いている1つの顕れが観客席です。敵と味方が分かれないで座るため、隣は敵チームのサポーターということは、しばしあります。試合中は自分のチームを応援し、終わったらお互いの健闘を称えあう。それが、世界の「ラグビー観戦の文化」でした。

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日本は、2015年に南アフリカに劇的勝利をするまでは、世界的にはラグビー「弱国」でした。そのため、日本では世界トップレベルの試合を見る機会がなく、観客のラグビー文化はあるものの、やや閉鎖的でした。
今回のワールドカップで世界中のサポーターが「ラグビー観戦の文化」を日本に運んでくれました。

ワールドカップの観客席は民間外交の場だった

各国サポーターとの交流で、私のワールドカップ観戦の思い出は何倍にも増えました。また、日本サポーターと交流することで、各国から来日したサポーター、メディアは「日本が好き」「日本は良いところだ」と世界中に発信してくれました。私の折り紙も少しくらいは役に立ったのでは・・・と勝手に思っています。

この素晴らしい交流の文化を、来年2020年のオリンピック・パラリンピックにつなげたい。さらに次は私たちが世界中で開催されるラグビーワールドカップでは、私たちが世界に出かけて「ラグビー観戦の文化」を世界中で楽しめる機会です。

さあ、出掛けましょう。

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