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「見たことのないものを見てみたい!」その原動力で新世界を拓く クリエイティブスタジオ「SAMURAI(サムライ)」マネージャー 佐藤悦子さん

企業のCIや多岐に亘る分野のブランディングで日本や世界で活動を広げるクリエイティブスタジオ「SAMURAI(サムライ)」のマネージャー 佐藤悦子さんにお話しを伺いました。

佐藤悦子さんプロフィール
クリエイティブスタジオ「SAMURAI(サムライ)」マネージャー。1969年東京生まれ。1992年早稲田大学教育学部卒業後、株式会社博報堂の営業局、雑誌局を経て1998年より、外資系化粧品ブランド「クラランス」「ゲラン」のPRマネージャーを務める。2001年クリエイティブディレクター・佐藤可士和のマネージャーとしてサムライに参加。以来、幼稚園や病院のリニューアル、数々の企業のCIやブランディング、商品および店舗開発など、多方面に広がりを見せるSAMURAIのクリエイティブにおいて、マネージメント&プロデュースを担当。

「見たことのないものを見てみたい!」それが人生の醍醐味。

記者:
お招きいただいたこちらのオフィスや会社や人の体系、SAMURAIのクリエイティブなど、シンプルにあるべきものを作り上げ、物事を切り分けることがとても上手な印象を受けました。
SAMURAIのマネージャーであったり、クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんの奥様であったり、母親であったりと、色々な顔をお持ちであると思いますが、今日は佐藤悦子さんご自身としての夢やビジョンをお聞かせいただけますか?

佐藤悦子さん(以下、佐藤):
人生において、見たこともないものを見てみたいです!
それは仕事を通して、また旅行を通して、あるいは子供を通してだったりとあらゆることにおいてですね。
SAMURAIとしては、デザインとかクリエイティブの力を活用して、世の中に新しい価値を提示することで何かを良くしていきたいという大きなビジョンはあります。
でも、どこどこの会社の仕事がしたいとか、これくらいの大きさの仕事がしたいとか、そういう具体的なものではなく、想像できる範囲のものは自分で予測できてしまうので、予測できる範疇の外に行きたいと思っています。

実は、私はクリエイター志望ではないので、自分で作りたいとは一回も思ったことがないんです。佐藤(佐藤可士和さん)の仕事のプロデュースやマネジメントを通して、新しい何かを提示できて、パッと世の中が変わる瞬間に立ち会えたら、すごく幸せだなということは思います。

少し前のことですが、オンラインである記事を読んで新しい視点を得ることができたことが、私にとってはすごく大きなことでした。

中国人の思考と日本人の思考ではOSが違うという記事で、どっちが良いか悪いかという問題ではなく、そもそも違うOSで動いているものをどちらか一方の価値感で判断してしまうとさまざまなトラブルが起きるという内容でした。

それを読んだ直後に上海を訪れた際のことです。ある席が写真スポットとして人気のカフェに案内された時、一緒に行った中国人の方が私達にもそこで写真を撮ってほしいからと先に座っている人にどいてくれるようにと頼んだのです。他にも席は空いていたので、頼まれた方は何ということもなく、普通に席を代わってくれたのですが、日本だとちょっとあまりないことかなと思いました。でも中国ではあたりまえのように行われていて、もし私がその記事を読んでいなかったら、その人に対してかなり違和感を持ってしまったかもしれません。でもOSが違うとは「こういうことなんだ!」ってリアルに体感した瞬間で、多様性ということを少し理解できたかなと感じました。

世界にはたくさんの考え方があり、身近なところでの多様性の享受というか、ひとつの新しい世界を見たような高揚感がありました!

こういった新しい視点や考え方に出会うことは生きていく上で私にとってとても大きいことです。

社会も相手も自分の鏡。自分が受け入れられるかどうかが大切。

記者:
違うものや考え方に対して、面倒臭いとか怖いって思う人もいる中、そこに出会ってみたい!というバイタリティはどこから出てきているのでしょうか?

佐藤:
社会も相手も自分の鏡なので、自分が拒絶してる時点で相手からも拒絶されているのではないかと思いますし、自分が受け入れようと思えるかが大きいと思います。

もし私が自分とは異なるものに対して心を閉ざしていたら、当然先ほどお話した記事も読まないでしょうし、そういう考えも知らずにいたら、「ありえない、私には無理」で終わると思うんですね。

外の世界には自分がまだ知らない魅力的なものがたくさんあると思って、なるべくいろいろなものを受け入れられるように柔軟でありたいと思っています。

それがたとえ小さなことだったとしても新しい出会いや発見が積み重なっていくと、高揚感と「すごいこれ〜!」という興奮が生まれます!

Beyond must be beautiful.
「その先は美しいに違いない!」と思うことで境界線が外れる。

記者:
大人になると境界線を引きやすくなって自分の世界を作りやすい人が多い中、逆に悦子さんはそれを外していくというか、子供に帰っていく感じがするのですが、悦子さんはどうやって境界線を外しているのでしょうか?

佐藤:
とても難しい質問ですね(笑)
昔からそうだったような気もしますが、思い当たることはあります。

以前、ジュネーヴにあるCERN(セルン)という素粒子物理学の研究所に行った時、そこの研究者の方に、どうして物理学者になろうと思ったのかを伺ったことがありました。

5歳の時に紙をどんどん切って小さくしていった時、「最後はどうなるんだろう?もうこれ以上はハサミでは切れないけど、きっともっとその先があるはず」と感じたというのです。

彼はその先を知りたいと願って、5歳の時の気持ちを忘れずに勉強を続け、日本の大学を経てCERNで素粒子物理学の研究をしているとおっしゃったんです。

その話を聞いてとても感動しました!

「Beyond  must be beautiful.(ビヨンド マスト ビー ビューティフル)その先は美しいに違いない!」

このことを信じているということでした。

その話を伺った時、私も「その先は美しいに違いない!」と潜在的に感じていて、だから見たことのないものを見てみたいとずっと思ってきたんだ、と納得しました。自分の考えを言語化してもらったような気がしましたね。

境界線を外すには、その先は美しいに違いないと信じることが必要なんじゃないかと思います。

知らないことを知ることの努力と受け入れる気持ちが大切。

記者:
見たことのないものを見てみたいために普段取り組んでいることはありますか?

佐藤:
仕事でもプライベートでも知らないことを知ることの努力とそれを受け入れる気持ちにつきるのではないかと思います。

本を読むことも好きなんですね、きっと一生かけても自分では経験できないことに触れられるのは楽しいものです。

例えば、先日ある表彰式で、「僕ら一生やってくんでね。長いスパンでものを考えているんですよ。」という歌舞伎役者の方のお話を伺った時も、「へぇー!」と思うような大きな視点との出会いで、私にとっての新しい考えが飛び込んできた瞬間でした。

歌舞伎役者の方は子供の頃から一生をかけて芸を磨かれているので、時間のスパンとか物の見方とか捉え方が非常に長期的で独特で、すごく新鮮でした。

特に旅行に行かなくても特別なことをしなくても、日常の中に「へぇー!」って思うことはたくさんあるんだと思います。それを拾えるかどうかだと思うんです。

記者:
先ほどのCERNのお話も今のエピソードも、深いところから相手の背景を捉えて、自分の中に取り込めることができる世界観が素晴らしいですね!

佐藤:
私がこういうことをキャッチアップできるのは、相手の世界観が素晴らしいので、私も何かに気付くことができるのだと思います。その言葉を発するまでにどれほど深いバックグラウンドがあったんだろうと思いますね。

自分の軸を持って生きることがAI時代に必要なこと。

記者:
最後に、「リライズ・ニュース」のテーマになっているAI時代について質問させてください。
これからAIの時代が加速することについてと、AIの時代が到来する時に私たち人間はどう生きるべきなのか、悦子さんのお考えをお聞かせください。

佐藤:
AIの時代がきたらどう生きるべきか、、、それは難しいですね。色々な可能性があると言われてますけれど、どんなことも起こりそうですよね。

映画の「マトリックス」が好きだったのですが、当時「なんだかとてつもなくすごい!」というのを感じるくらいで、今ひとつわからないというのも正直なところでした。でも今、「もしかしてこれ、リアルマトリックス?!」と思うようなこともありますよね。

「マトリックス」は、人間はどうあるべきか?ということもテーマだったと思うんですが、どんな時も自分の軸を持って生きていたいなと思います。

私はインスタやTwitterなどはやってないのですが、それは自分自身の手がリアルに届かないところに発信することに責任は持てないですし、その必要も個人としてはあまり持っていないからです。いろいろなことに対して自分の考えを持って接して行くことを大切にしたいと思ってます。周りがそうだから、そう、ということにとらわれなくてもいいかなと思います。

記者:
悦子さん、本日はどうもありがとうございました!

★ Photo by 目黒 秀綺

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佐藤悦子さんの活動、連絡については、こちらから↓↓

● KASHIWA SATO - CREATIVE DIRECTOR / SAMURAI INC. TOKYO
https://kashiwasato.com/

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【編集後記】
インタビューの記者を担当した若林みきと目黒真由子と目黒秀綺です。
「見たことないことを見てみたい!」という夢を持ちながら、日々たくさんの人や出来事やお仕事に出会っている悦子さんのワクワクした表情や話し方がとても印象的で、とても楽しく素敵な時間でした。
今後の悦子さんのご活躍を心より願っております!(若林)

悦子さんが大切にしている世界観があるからこそ、佐藤可士和さんが創り出す世界観にも大きく反映されて、今の時代を牽引するクリエイティブが生み出されてきたのだと感じました。(目黒真由子)

悦子さんの未知のものに対するキラキラした純粋なエネルギーがとても素敵で、このエネルギーがSAMURAIの仕事にも生かされているんだろうなと思いました。(目黒秀綺)

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この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。


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