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顔認識機能のレクチャーに参加してきた!

こんにちは、ニューヨークPratt Instituteの大学院でIXD(情報体験デザイン)を勉強しているMikkeyです。前回の記事から随分時間が経ってしまいましたが、今回はコーネル大学のコーネルテックが開催しているデジタル・ライフ・セミナーで学んだ事ついてご紹介したいと思います。

このセミナーは週一で開催されているもので、テクノロジーが発展していく上で社会に及ぼす影響や倫理的な部分を考えるためのレクチャーです。コーネル大学以外の生徒も参加できるセミナーなので、プラット・インスティチュートの学生である私もよくこのセミナーに参加しています。

セミナーのスピーカーはMicrosoftのプレジデントであるBrad Smithで、トピックはFacial Recognition Technology(顔認識機能)が将来もたらすであろう社会的な課題についてでした。以下、セミナーで学んだ概要をまとめます:

顔認識機能が発展した背景

前回の感情デザインの記事でも少し触れましたが、機械は人の顔の特徴(鼻の形や、広角の上がり方、目と目の距離など)を数値化して分析することで表情を読みとり顔を識別することができます。1960年代頃から存在しているらしい機能なのですが、なぜ近年になって急発展を遂げているのでしょうか?その理由として以下の原因があげられました:

カメラの機能の向上:2D、3Dでカメラの性能・人の表情を読み取るカメラの性能が上がり、それに伴い人の顔の特徴をよりよく識別できるようになったこと

クラウドの向上:クラウドの膨大な計算能力とストレージ能力の増加、またそれに伴い膨大な量のデータが入手、処理が可能になったこと

AIの進歩:特に機械学習におけるアルゴリズムの進歩

顔認識機能が抱える3つの大きな課題

顔認識機能は多くの社会的利益をもたらします。特にトークで取り上げられた使い道としては、警察が行方不明の子供を捜索するのに使ったり、医師がわからない病気を顔の特徴から検出したり、目が見えない人のためにスマホを使って誰と話しているか認識してくれるアプリなど。しかし、正しい規制が設けられなければ次のような問題に直面し兼ねません:

プライバシーの侵害:お店などで自分たちが気がつかないうちに勝手に行動などのデータが収集されるようになってしまいます。

差別の進行・加速化:顔認識機能は事前に与える画像データに基づいて認識が行われているのため、元となる画像データに偏り(男女や人種差別など)があればそれに基づいた処理を行い結果的に偏見や差別を加速しかねません。例えばCEOの画像を検査すると、大半の検索結果が白人男性の写真です。

また女性やマイノリティは比較的に元となるデータの量が少ないため、男性やマジョリティとなる人々に比べて認識機能の正確性が低い傾向にあります。

民主主義の自由の侵害: 顔認識機能は個人を特定することでテロや犯罪防止など社会の安全のために欠かせない技術ですが、デモなどの公共の場でも使用されると民主主義の自由を脅かすような監視社会を設立させる道具となってしまいます。

それを防ぐためにできること

顔認識機能が使用されている場合は知らせること:プライバシーの侵害を防ぐためにも、顔認識機能を使用して個人情報を集められている場所ではそれを告知して使用の同意を求める必要があります。また、デモなどの場所で個人の自由を侵害しないためにも、政府が無断に顔認識機能を使用して良い場合を法律で定めることが必要です。

判断を完全に顔認識機能に委ねるのではなく、最終的には人間のチェックを入れること:顔認識機能の正確性は増しているものの、時によっては間違った判断を起こすことがあります。そのためにも完全に顔認識機能の処理能力を信じてしまうのではなく、顔認識機能が判断する上で使用しているアルゴリズムを理解してその認識機能が正常に働いているのかを確認する人間が必要です。

顔認識機能の透明性を上げる:これは顔認識機能に限らず様々な新しいテクノロジーにおいても共通する事ですが、テクノロジーを使用する前にその性能や制限を理解する必要があります。そのためにも顔認識機能を開発している企業ではない、第三者による性能のテストが必要となります。そのためには顔認識機能を提供している企業側が積極的にテストの参加などに合意する必要があります。

以上、レクチャーの概要となります。

感想

技術の発展は望ましいことですが、それと同時に技術の発展に追いつくような規制を設けることの大切さを考えさせられたセミナーでした。新しいテクノロジーの素晴らしさをただ賞賛するだけでなく、それを社会的・政治的影響などを交えてクリティカルに捉えているところがとてもアメリカらしいと思いました。

最後まで読んでくださってありがとうございます。スキを押してもらえると、また記事を書いていくモチベーションに繋がります!

この内容に興味を持たれた方は以下が実際のレクチャーのビデオになりますのでぜひご覧ください!

https://cornell.mediasite.com/Mediasite/Play/0599da1bfe564bbd8c5642e24f93b3841d



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