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「大喜利アプリはなぜ面白いのか」を真面目に考えてみる

私事ではあるが、私の最大の暇つぶしは「大喜利アプリ」を見ることである。

知らない人のために説明しておくと、大喜利アプリとは以下のように特定のお題画像にユーザーがコメントを加え、その面白さを投票によってランキング化するものである。

引用:アメーバ大喜利

引用:アメーバ大喜利

いやはや、実に面白い。

おおよそ2秒後ぐらいに来る笑いの衝動と、これを電車などで見ているときの「笑いたい、でも笑えない」という葛藤がなんともいいがたいほどの快感なのだ。

アプリでいうと、アメーバ大喜利boketeなどが有名なのでぜひダウンロードして見てみてほしい。

さて本題に入ると、私はこの大喜利アプリを見ているうちに疑問に思ったのだ。

「こんな面白いことを考える人たちの頭の中はどうなっているのか」と。

もしできることなら、私もこんな面白いボケをしてみたい。

ではどうしたらよいか。

ビジネス界で様々な業績を残している私の上司によれば、

もしあることを成し遂げたいならば、まずは既存の成功例の分析からはじめ、その成功要因を抽出し、それを模倣することが最も効率的な方法であるという。

この論理に基づき、私はまず成功例の分析に取り組むことにした。

教材とするのはアメーバ大喜利で、476874座布団を獲得し殿堂入り第1位となっている(2016年3月12日現在)のこちらのお題だ。

裏もあったんかーい。

少年の表情とこのセリフの絶妙なコンビネーション。もはや神の領域というしかない。

476874回もの笑いを生んだこの奇跡のボケはどのように生み出されたのだろうか。僭越ながら私が作成者のピロシキさんのこのときの思考回路を想像するならば、以下の3つのプロセスがあったと思われる。

1.着眼点の決定
2.意味の付与
3.原因の模索

少し難しいので、具体的に説明しよう。まず、ボケるために必要になってくるのが「画像のどこに着目するか」という「着眼点の決定」だ。この場合、ピロシキさんは(まあこの画像の場合ほかに着目するようなところもないが)この少年の表情に着目していることが分かる。

次に「意味の付与」だ。第一ステップで着目した「少年の表情」に「驚き/悲しみ/怒り」といったおよそ考えうる意味を当てはめていく。この場合は「驚き」が選択されている。

そして最後に「原因の模索」。なぜこの少年は驚いているのか。この場合は「問題は表だと思っていたら裏もあった」という事実が少年の驚きの原因になっている。

このように説明すれば、笑いが生成されるための思考回路には3つの段階があるということが分かっていただけたと思う。

しかし笑いを生み出す際のステップが分かっただけでは「なぜ面白いのか」という問いに答えたことにならない。なぜなら、それぞれの段階において「どういった要素を当てはめるか」ということが笑いの質を決める要因になってくるからである。

この問いを解くヒントになるのが、アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスが提唱した「単純接触効果理論」である。これは恋愛論などでおなじみのように「繰り返し接するうちに好意度が高くなりまっせ」という理論である。

では画像を見る人の間に基本的には1回の接触しか許されていない大喜利においてはどのようにこの「単純接触効果理論」が応用されているのか。これを探るために以下の画像を見てほしい。

これは、同じ素材で同じく多くの座布団を獲得している作品たちだが、

(多くの人がしたことのある経験)
・他の人のプリントを取り違えた
・テスト中に鉛筆が折れた
(多くの人が目にしたことのあるもの)
・DEATHNOTEのライトの表情
・チャレンジからのダイレクトメールに入っている漫画

のように「多くの人がしたことのある経験」や「多くの人が目にしたことのあるもの」がうまく活用されているということが分かると思う。

そうだ。つまり第3段階の「原因の模索」に際して、これらの素材を用いることによって、これを見る人は画像に接するのが初めてでありながら、単純接触回数が多いかのような懐かしさを感じ、結果として好感度があがるのである。

さらに、この「単純接触効果」のほかにも、当てはめる要素と「素材との距離」、そして「強弱の逆転」も笑いの生起に非常に重要な影響を及ぼしている。

「素材との距離」とは、実際にこういったことはありえないであろうという感覚のことである。あまりに予想の範囲内であるシチュエーションの設定は、意外性を生み出さず、笑いを生じさせない。例えば、上記の少年の画像の場合、「腕の骨が折れているので痛そうな表情だ」といった当たり前の当てはめは、素材と選択されたシチュエーションの間に距離がないため笑いは生じにくい

また「強弱の逆転」とは何か。例えば上記の殿堂入りボケの場合「問題が裏にもあった」という軽微な驚きが、少年の強烈な表情との間にギャップを生んでいる。つまり、(実際)軽微な驚き→(ボケ)強烈な驚きというように、実際とボケの間に「強弱の逆転」が起こっているのである。

以上が私の考察する大喜利が面白くなるための要因である。

もう一度まとめておく。

まとめ
笑いは「着眼点の決定→意味の付与→原因の模索」というプロセスを通して生み出される。その際に「単純接触効果」「素材との距離」「強弱の逆転」が掛け合わされると強力な笑いが生まれる。

最後に、この理論がほかの大喜利素材の場合にも当てはまるのかを確かめて終わりにしたい。

これを当てはめるとこうなる。


どうやらしっかりと当てはまるようだ。

この理論を用いて、ぜひ大喜利での殿堂入りのみならず、会社での企画や普段の会話でのボケの質を高めてほしい。

終わり。

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