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Dolby Atmos、360 Reality Audioなどのイマーシブオーディオ(空間オーディオ)について

2021年から、音楽制作業界では「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」や「イマーシブオーディオ」「空間オーディオ」という言葉が飛び交うようになりました。

しかし、レコーディングエンジニア以外の方にはまだまだ認知度が低いので今回説明の記事を書いてみました。

イマーシブオーディオとは

没入感の高いオーディオ」を意味します。「立体音響」「空間オーディオ」と言った呼ばれ方をすることもありますが、ほぼ同じ意味です。

今までのステレオ(=LとRの世界)では音が右から、左から聴こえてくるだけでしたが、イマーシブオーディオではそれに加えて音が上から、後ろからも聴こえてくる表現が可能で、まるで目の前で生演奏を聴いているかのような音に包まれた音楽体験ができます。

これだけ聴くと「あちこちにスピーカーを設置しないと楽しめないってこと?」というふうに感じるかもしれませんが、ヘッドホンだけでもこれを楽しむことが出来るということもあってとくに海外では急速に制作需要が高まっており、最新のポップミュージックからジャズ、クラシックまで、オールジャンルでどんどんイマーシブオーディオ版がリリースされています。

通常のステレオフォーマットと違って固定された音データを再生しているわけではなく、「再生するときに、繋がれている環境(スピーカーなのかヘッドホンなのか、スピーカーであればどの位置に何本接続されているのか)に合わせて再生機器側で演算をおこなって再生する」という仕組みをとっているので基本的にCDやダウンロード形態でイマーシブオーディオはリリースしていなくて(そういう仕組みなので技術的に不可能)、配信サービスのみで提供されています。(映像を伴う作品であれば、Blu-rayでのリリースはあります)

イマーシブオーディオの規格について

イマーシブオーディオを実現するために、いろんな会社からイマーシブオーディオの規格が出ています。規格によって音に特徴があり、またどの配信サービスで配信がおこなえるかも変わってきます。

2023年現在最も知名度が高いのは、アメリカのドルビーラボラトリーズ社が作った規格の「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」です。もともとは映画館で用いられた技術で、なんといってもApple MusicAmazon Musicという有名音楽配信サービスで展開されているのが大きいですね。

音を左右だけでなく前後、上部にも配置ができます。

また、次いで知名度の高いものとしてソニーが作った規格の「360 Reality Audio(サンロクマルリアリティーオーディオ)」というものがあり、Dolby Atmosが映画のために発展してきた歴史がありますがこちらは名前の通りオーディオのために発展してきた技術です。Apple Musicは現時点では対応していませんが、Amazon Musicで展開されているというのは大きいです。

こちらの技術は、音を左右だけでなく、前後、上部、さらに下部にも配置ができます。

制作について

イマーシブオーディオのための特別な録音はなくても制作は可能で、通常のミキシングと同じく、各楽器ごとに録音されたマルチトラックのデータがあればイマーシブオーディオ用のミックスは可能です。

仕上がりの確認はヘッドホンのほか、イマーシブオーディオ対応のスタジオ(国内でもじわりじわりと増えてきています!)でスピーカーを使って確認したりすることもできます。

<外貸ししている、イマーシブオーディオ対応スタジオ>

サウンドシティ:tutumu(Dolby Atmos/360 Reality Audio両対応)
音響ハウス:Studio NO.7(Dolby Atmos/360 Reality Audio両対応)
ビクタースタジオ:Studio 303(Dolby Atmos対応)
マルニスタジオ:studio m-one(Dolby Atmos対応)
(乗り込みエンジニア対応している営業スタジオで、うちの名前がないぞ!というスタジオありましたら追加掲載させていただきたいのでご連絡ください)

イマーシブオーディオで制作、リリースすることのメリット

<メリット>

  • 目の前で演奏しているかのような没入感のある音空間を作ることができる

  • 音が上から降ってくる、うしろから迫ってくるなど従来できなかった新たな楽曲表現の手法を追求できる

  • 過去の作品のイマーシブオーディオ版を制作することにより、楽曲が再注目してもらえる可能性がある

  • 2023年現在、Apple Musicの目立つ位置に「空間オーディオ:新着」という項目があり、ステレオ版のみをリリースするよりも運がよければ目立てる可能性がある

<デメリット>

  • 「ステレオ版を作らずにイマーシブオーディオ版のみを作る」ということは配信サービスで現状許されていないので両方作る必要があるため、ミキシングの費用がステレオ版のみに比べて多めにかかる

  • (Dolby Atmosにおいて)ヘッドホンで聴く場合、その変換処理をおこなう仕組み部分をAmazon MusicではDolby Atmos公式のエンジンを採用しているが、Apple Musicの場合はApple独自のエンジンを採用しているので「同じ楽曲なのに、ヘッドホンで聴くとApple MusicとAmazon Musicで聴いたときに聴こえ方に差異がある」という現象が起きるのでどの環境で聴いた音を制作上のゴールとするかの設定が難しい

最後に宣伝になってしまいますが(笑)当方ではクラシックからJ-POPまで、イマーシブオーディオの制作実績があります。

イマーシブでリリースすることを前提としたレコーディングからお願いしたい」というトータルコーディネートから、「レコーディングとステレオ版のミックスはいつもの人にお願いしたけれど、イマーシブのミックスのみお願いしたい」という一部分だけお任せいただくことも可能です。お気軽にご相談ください!

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