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「始まる世界」が始まっている

 今回10月度の『THE NEW COOL NOTER賞』「始まる世界」という、ちょっと抽象的な名前をわざとつけたんです。今日は、その時の思いなどを……。

 この間アンケートに答えたんです。楽しい俳句大会でお世話になったアポロさんのアンケートですね。俳句のアンケートではありません。

 アンケートを終わった私の感想コメントはこれです。

アンケート

 メンタル面の障害の名前がたくさん出てきて、「この病気の名前を知っていますか」という質問がいくつもありました。名前だけは知っているけど、私はそれを本当に知っているだろうか、そう強く思いながら書いたコメントです。

 名前だけは知っている……。そこから先の深い共感へどうやって至ることができるか、名前を知っているだけではだめなんだ、こう強く思いました。


 今回の『THE NEW COOL NOTER賞』は下記の理念のもとに、作品を募集して、それを講評させていただき、みんなで同じ思いを確かめ合おう、大事なことを再発見しようというものです。

<以下、10月度リーダーのこれでも母さんの宣言文からです>

これからの時代を生きる人たちへ
 やさしい世界が1ミリずつでも広がりますように

■募集記事について
メンタル、フィジカルのつらいことの克服、勇気をもらえる記事。
アドバイスが欲しい方、してあげる方、現在の苦しさをわかってほしいかたなど。

■始まる世界について
『始まる世界』では、優しい言葉や感謝の気持を大切にしながら、皆さんから寄せられた希望や体験談、現在進行形で頑張ってるnoteをきっかけに、誰にとっても生きやすい世界が広がっていくことを目指します。

■関心を持って欲しい方々
幸せを楽しむまでの喜び、もしくはその途中過程での葛藤や格闘、そして見え始めた夜明けを手にしつつある方々。

<ここまで引用>

 このテーマはむずかしいです。まず、本当は語りたくても自分のあまり幸せでなかったことは人前で語りたくない。これが大きいです。そして、本当のむずかしさは別のところにもあります。

 とても本質的なことだと思うのですが、人は誰かの不幸せを、いいえ、それを通り過ぎて手に入れた幸せですらも、本当の本当に理解することはむずかしいのだということです。

 私達は日常生活で気軽に「それは悲しいね」「よかったね」そうした声を人にかけます。でも、その人が本当に悲しいこと、よかったことを本当に理解するのはむずかしいです。

 ついつい分かったつもりになってしまう。とくに、今回このテーマで募集させて頂いたので、分かったつもりになってしまうことは避けたいな、と考えていました。

 つまり、人が不幸だったことを嗤う人は狂人以外いませんが、文章を読んでその人のつらさを本当に理解できるのだろうか、という人間同士のコミュニケーションの最も深い難問に、今回の「はじまる世界」は挑むことになった。そう思い当たったときに、すでにこのテーマでマガジンを主催しており、精力的な活動をしているこれでも母さんのことが浮かびました。

 これでも母さんは、通り一遍のしんどいことではなくて、本当のつらさ、通り一遍の楽しいねじゃなくて、本当の幸せというものが何かを常に考えている。起きたことの意味をしっかり受け止めて検証して、少しでも僅かにでもかすかに、幸せのきっかけがあればそれをきちんと見つけて、陽のあたる場所へまるで、丁寧に植え替えをするようにその花を自分たちの庭に連れて行ってくれる。そして、その庭は花にとって新しい「始まる世界」となる。

 この一見見逃しそうな不幸、そして一見見逃しそうな幸福を見つけ出すことに、今回の10月の「始まる世界」の意味はあるのだろうと思っています。

 批評家の小林秀雄があるエッセイの中で、来客中の客が卓上のライターを見つけて「お、なんだダンヒルか」と言った、その瞬間にダンヒルの美しさは消えてしまうと言っています。小林秀雄は、美しいものを美しいままにそのまま受け止めることがいかにむずかしいかを説いていました。

 それと同じように、私達はいつも、大切なところ、始まる世界が始まる手前で立ち止まってしまう。

私たちは「自閉症スペクトラム」と聞いたときに、あるいは「発達障害」「パニック障害」「不登校」「ひきこもり」「ニート」「ドロップアウト」という言葉を聞いたときに、心のなかで「なんだ、それか」と一瞬思ってはいないでしょうか。

 ダンヒルの美しさを味わうのと同じように、「自閉症スペクトラム」「発達障害」「パニック障害」「不登校」「ひきこもり」「ニート」「ドロップアウト」ということを、そのつらさを想像できるか。言葉だけ聞いて分かったような気持ちになってしまってはいないだろうか。

 それがみこちゃんの、冒頭に書いたアポロさんご紹介のアンケートに対する、歯切れの悪い、ちょっと罪悪感が混じったコメントでした。

 言葉は知っている、でもそれ以上のことを、知るべきだ。知る「べき」というより、それを理解したいと思えるような人間になりたい、といったほうが近いかな。みんな、本当はそう思っている。でも自分のことで手が一杯で、ついつい、「なんだ、それか」で思考と感情がストップしてしまう。

 その先へ、これでも母さんに引っ張ってもらいながら、この『THE NEW COOL NOTER賞』10月度「始まる世界」の読者さんが、まるで自分自身もこれでも母さんたち審査委員と審査スタッフに一緒に鉢植えされたように、あたらしい「始まる世界」で、新しい視点を持つことができれば、この賞は成功だな、そう思いました。

「自閉症スペクトラム」「発達障害」「パニック障害」「不登校」「ひきこもり」「ニート」「ドロップアウト」まだまだ、こうした言葉はあるでしょう。そして、こうした名前ですら、名前がついて認知されるまで長い時間がかかりました。世の中には、人の数だけ、まだ名前のついていない不幸があることは忘れてはいけないと思います。

 だからこそ、少しでも僅かにでもかすかに、幸せのきっかけがあればそれをきちんと見つける視点が大事になる。名前の付いているものですら、私達は、名前を聞いた途端に分かった気になってしまう。そして名前のつかない不幸は、気が付かなかったふりをして通り過ぎる。

 そういうことが少しでも減ることに、このイベント「新しい世界」が役に立てれば、審査委員、スタッフ一同こんな嬉しいことはありません。

 読んでびっくりするような、辛かった、もしくは現在進行系の辛い話も出てくるかもしれません。でもそれと同じ数だけ、自分が今まで気が付きもしなかった本当の幸せも、応募作品や講評の中にはたくさん詰まっています。

 自分のものの見方が変わるような「新しい世界」が、この賞に気がついたひとすべてに見えてきますように。今日もまた、頑張っております。

 10月15日まで作品を募集しております。すでに応募いただいた作品は下記のタグより、ずらっとお読みいただけます。ぜひ、一緒に「始まる世界」を体験してください。

#第3回THE_NEW_COOL_NOTER賞_10月参加
#もうひとりじゃない




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