母の「あなたにできる訳がない」呪縛からの卒業、在宅ワーク4年目にてやっと母親に報告できたよ
私の母は、とても心配性だった。そのため、母に在宅ワークの話をするのは正直恐怖でしかなかった。
いつも「どうせあなたは無理」と、ことあるごとに言う人だった。そんな母が、今では「すごいじゃない」と私の記事を褒めてくれる。
「今度、こういう記事書いたらウケるんじゃない?少なくとも、母さんはそんな記事があれば読んでみたい」
「そのうち本でも出るんじゃない?いや、そこまでは無理か。
でも、ウェブ記事みてると母さんも書けそうって思う時がある。あんた、そういうの書いたらいいんじゃないの?」←なぜか上から目線
「とりあえず、危ない会社とだけは契約しないようにしなさい。
ほら、ああいうの詐欺とかあるじゃない。大手とか、出版社とかならいいけど。とりあえず、悪い人には捕まらないようにね」
「家でパソコンつかいたいなら、好きに使えばいい」
在宅ワークしてることを話すと、母からいろんなアドバイスを貰った。こんな日が来るなんて、昔は全く想像つかなかった。
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漫画、小説、イラストなどなど。昔から、公募に何度も応募しては玉砕を繰り返していた。
当時の公募は、絵や漫画を応募するとイラスト教室から生徒勧誘のお知らせが届くことも多かった。
母は、ハガキが届く度に「あんたは、プロになるほど絵は上手くない。どうせ講座まがいの高額詐欺に騙されるだけ。絶対やめなさい」と言った。
それでも、小説や漫画をノートに書き続けることをやめなかった。
高校三年生になると、いよいよ受験の時期。
勉強もろくにせず漫画ばかり描く娘にしびれを切らし、母は再び私にこう言った。
「あんたは、人より絵は上手いかもしれない。けど、趣味として楽しむにはいい程度なの。プロになるほどではない。そろそろ、わからないと。もう、いい加減諦めなさい。
それから、せめて短大くらいは行って欲しい。だから勉強頑張って欲しい」
涙目で母に訴えられ、私は受験勉強を決意。猛勉強のお蔭で、推薦入学が無理と言われた国公立の短大に合格。
過去問は10年分を繰り返し行い、英単語の本はほぼ丸暗記。おかげさまで、テストは満点だった。母は凄く喜んでくれた。
短大に入ると、一気に無気力になった。合格するのが目標だったので、別にやりたいことなんてなかった。同じ学部に友達もできず、講義を1人で受ける日々が続く。
そもそも、一体なぜ短大に行ったのだろうか。
やりたいことも別にない。将来、なんの仕事につきたいかなんて考えたこともない。私、なにやっているんだろう。
漫画や小説書きたいと思ったことはあるけど、就職しようと考えたことが一度もない。とりあえず母が「公務員はいいわよね。退職金もいいし、出産後も仕事しやすい」と言っていたので、公務員を目指そうと思った。
残念ながら、裁判所の試験は下痢でアウト。
公務員はおろか、就職試験は70社以上受け続けて全滅。
「いい短大に入ったのに、なぜ就職できない?」
私の通った短大は、地元で最も就職に有利な国公立の短大。私の周りの生徒は、みな大手企業へと就職していった。
なのに私は、3月になっても就職が決まらなかった。仕方なく、地元の小さな印刷会社に就職を決めた。
みんな大手に就職していたため、自分の就職先を友達に言うのが恥ずかしかった。それでも、母は「あんたが本当に就職してくれるなんて。社会の役に立ってくれることが、嬉しいの」と涙目で喜んでくれたので、まぁいいかと思った。
しかし、私は事もあろうにわずか1ケ月で会社をクビになった。2ケ月分の給料を貰い、母に「クビになりました」と報告。
母は「なんて酷い会社なの!可哀想に!」と怒り狂った。しかし、思い起こせばやる気もない私に見切りをつけただけ。つまり、入社早々やる気もない癖に世間体を気にして就職した私が全て悪いのだ。
その後、母は落ち込む私をつれてパソコン教室アビバへ。なお、当時クビになった会社からは2ケ月分の給料を貰っていた。私は、再起をかけて全財産をパソコン教室にぶち込んだ。
アビバに通いながら、昼は100均でバイト。夜は大手家電チェーン店でトイレ掃除とレジ。オフの日は、パソコン教室へ通った。
半年後、クビになった所より規模の大きな会社に再就職。給料、ボーナスも一気にアップした。次の就職先は全国展開の企業だったこともあり、私は喜んで通勤するようになった。
母は、再び大喜び。
給与明細を見せるたびに「すごいじゃない!」と拍手してくれた。当時はボーナスも友達の中で一番多かったため、私も自慢げに明細を見せていたっけ。母が喜んでくれるのが嬉しくて、本当に良かったと思った。
企業が私を採用した決め手は、私の親が超大手企業勤務だったことと、私が卒業した短大がそこそこ評判良かったから。私の適性においては、正直全く期待されてなかったそう。
「本当は、あなたじゃない人をみんな推薦していた。けど、あなたの方が育ちも学歴もよくて社長が押したの」と、後で聞かされた。私の入社に対し、不服だった人も少なからずいたようだ。
それでも、あの時ばかりは本当に母の言うとおりに短大に行って良かったと思った。今でも、社会経験の長さのおかげで仕事が取れている面もある。今では、元職場に感謝している。
あれから20年の歳月が経つ。
母は60を過ぎた頃から、少しずつ丸くなった。大きな病気も何度か乗り越え、死を身近に感じる機会も増えたのか「やりたい時に、やりたいことをやりなさい」と言うようになった。
実家では「仕事したいなら、パソコン使っていいからね」と協力的。記名記事をいくつか見せると「へぇ、こんなのが書けるのね。凄いじゃない。どうやって書いてるの?」と興味津々だった。「まぁ、編集が入ってるからね」と伝えると「へぇ。凄いね」と目を丸くして嬉しそう。
実は数ヶ月前から「そろそろ働きなさい」と言われていた。いい加減、自分の仕事を伝えないとやばいと思っていたのでいいタイミングだったのかもしれない。
前は、親にバレないようコソコソ漫画描いてたのに。まさかこんな日が来るなんて。
ライター歴4年。
親に、自分の仕事が言えないのがずっと心残りだった。
決して悪いことをしてる訳じゃないけど、昔のように「あなたにできるわけがない。どうせ騙されてるのよ」と反対されたらどうしようと思い続けていた。
これで、ようやく心置きなく仕事ができる。そう思うと、ほんの少しだけ足取りが軽くなったような気がした。
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