書いて 書いて 成仏させる
いったい、どれくらい闇に葬ったのだろう。
小学校の頃から、親に言われて日記を書く習慣があった。日記といえども、決して真面目に書いていた訳ではない。
かっこいい男の子、校内のカップル、愚痴、不満、ポエム、イラスト。もはや、やりたい放題の無法地帯だ。
読み返しても役に立ちそうもない日記を、なんと私は小学校5年生から短大まで毎日記帳し続けていた。今思い返せば、青春時代に友達も作らずなんて暇でくだらないことやっていたのだろうか。
その後、紙からウェブの世界へと突入する。そう、ホームページとブログの登場だ。
こそこそ家で書いていた愚痴を、世界中に配信する。なんて夢があるようで、くだらないのだろうか。しかし、そんな愚痴ブログでさえ「共感しました」とコメントが来るようになった。
辛かったこと、苦しかったこと。悩んでいること。
やがて、私はすべて全世界へ配信=ブログを書くようになった。社会では上司に怒られ、婚活では百戦錬磨どころか振られまくり、そのくせ面倒な人にはいつも捕まるの繰り返し。まぁ、今となっては私も面倒な人だったから同じような人を引き寄せていたんだろうけど。
外の世界では他者の顔色を伺いながら生きる私も、ネットの世界では大胆になれた。もちろん嘘は書いていないが、言いたいことを遠慮せず吐露することができた。
ああ、インターネットってなんて素敵にジャパネスク。なんて素晴らしいんだろう。
しかし、私と同じようにインターネットにハマっている人は、みな私みたいに外の世界ではモテなくて冴えない人ばかりなんじゃないだろうか?
私のアメブロには、私と同じようにアメブロばっかりやってる輩ばかりだ。
なお、当時の私のブログのキーワードは「メンヘラ」「変態」「婚活」「小説」「イケメン」。
アメブロなだけに、今のようなSEOはあまり効果がない。いかに面白いネタを提供してファンを作るか、コアな読者を作るのかが鍵だったように思う。
幸い、私のブログにはPVを気にして運営している人は1人もいなかった。みんなギリギリのワードをぶち込み、そして運営局に記事を消されるといったメンツばかりが集まった。
読者のなかには、官能小説をアメブロで書くというチャレンジャーも多かった。もちろん、みな秒で運営に記事消されてた。「消されて本望」だとか、もうあんたら特攻隊かよ。
日常の愚痴や不満、上手くいかない人生、自分の中に沸き起こる変態的感情を吐露し、共に嘆き合う。実にクレイジーだけど、最高にメンヘラで楽しいひととき。
仕事が終われば、一目散にパソコンに向かってアメブロ仲間のブログを渡り歩いた。もちろん、ある程度人が集まると問題もつきものである。各地で論争、紛争は勃発したが自滅して消えていく人も多かった。
みんな、それぞれブログやコメントに思い思いの気持ちを吐露し、耐えられなくなり自滅していく。
あるブログで出会った女性は「私は、辛いことを全て書くことで成仏させている」と言った。私より少し年上で、「姉さん」と呼んでいた。
姉さんは、いつも病的に痩せた自撮り写真をアップするのが日課のブロガーだった。顔立ちは美しく、女優の水野美紀さんに少し似ていた気がする。きっと若か知り頃はさぞかしモテただろう。
姉さんのアメブロは他の誰よりも面白く、そして文章の見せ方が抜群に上手い人だった。
いまライター業しておきながら言うのもなんだけど、姉さんは私の10000000倍くらい文章が上手かったようにおもう。どれくらい上手いかというと、それはもう冒頭からして目ん玉が飛び出るほどだ。
私はすっかりファンになり、姉さんのブログに「どうすれば姉さんみたいに上手く書けるようになりますか?」とストーカーのようにしつこくコメントしていた。姉さんは、いつも喜んで答えてくれた。
そんな姉さんが「小説家になれない思いを、アメブロで成仏させているの」と嘆いていたのだから、きっと私なんて夢のまた夢なのだろう。
姉さんいわく、「文章は狂っている時ほど神が君臨し、名作が生まれるもの。だから、私は精神が病んだ時に「神がきた!」と思っているの」と話していたっけ。たしかに、姉さんのコメントが荒れている時のブログは本当にキレキレで神ってた。
いつもブログを楽しみにしてたけど、そんな姉さんもある日を境にネットから消えていった。
私は書くことで気持ちが落ち着くし、書き続けることで精神を安定させているように思う。
ただ、それでも人によってはトラウマの強すぎるネタだと成仏させるつもりが破滅に向かうこともあるらしい。
姉さんは、吐露する時に上手くバランス取れないタイプの人だったように思う。でも、天才タイプにはこういう人多いんだろうな。
向き合おうと思うものが強く苦しいほど、人は壊れてしまう。私にも壊れるほどつらいネタはあるけど、墓場まで持っていくことだろう。
吐露することで自分が苦しむくらいなら、いっそ吐かない方がいい。自分が楽になれるのならば、吐いて成仏させればいい。
私は、これからも書いて書いて成仏させる。姉さん、今どこで何してるだろうか。
可愛いお子さん達は元気だろうか。あっちの方は、天気もマイナスらしいけど風邪ひいてないかな。また、小説書いてるだろうか。
それとも、また名前変えてブログ書いてるのかな。とにかく、姉さんが旦那さんと仲良く元気で過ごしてくれたらそれでいいや。書き続けていたら、きっとまた姉さんとどこかで会えると信じてる。
姉さん、これからもお互い書いて書いて成仏させていこうな。
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