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ネズミ講にハマった親友から、5年ぶりに電話がかかってきた時の話

※今回の話は、どこか遠くにいる元親友へあてた手紙です。

先に行っておきます。めちゃくちゃ長いです。

簡潔に言うと、もう怒ってません。
あの時は、取り乱してすみませんでした。

そろそろヤバいものとは足を洗って独り立ちしてくれたら、もしくは彼氏がいる、または結婚していたらと願っています。

あと、あんなに「みくの結婚式、絶対私は呼んでもらえるから」と連呼してたのに、結婚式呼んであげられなくてごめんなさい。

本当は誘いたかったけど、すごく悩んでやめました。理由は、今大切にしている友達に迷惑をかけたくないからです。

LINEどころか、携帯すら持っていないあなたへ。

どこかで元気て過ごしていたら、と思います。


中学の頃、毎日のように遊んでいた友達がいた。少し変わった子だが、いつも笑うツボが同じで一緒にいて楽しい子だった。

そんな彼女との関係は、中学を卒業してからもずっと続いた。

高校は別だが、家が近いのでしょっちゅう遊んでいた。ただ、遊びの約束はいつも彼女からで、私から誘ったことは一度もなかった。

やがて私は地元の短大へ、彼女は大阪の四大へ入学する。彼女の住む大阪にも、何度か遊びに出かけた。

その後、私は新卒入社した会社をクビになり、彼女はまだ四大生のままだった。街中の四大に通う彼女は、いつもキラキラ眩しそうな笑顔で羨ましかった。

フリーターだった私も、半年後に縁のある会社へ再就職した。

夢を持つ彼女は、就職した私を少し小馬鹿にしていた。

「みくはいいよね、お気楽事務員で。事務員って楽なんでしょう」

あまりにも毎回言うので「就職したら、そのうち気持ちわかるよ。お金をもらって働くって大変だから」とだけ伝えていた。「お気楽事務員」と言われるたびにイライラした。

彼女には、写真の趣味があった。
いつかは、プロのカメラマンになりたいと私に話していた。

私は、彼女に「カメラマン凄いね、叶うといいね」というセリフは一度も伝えたことがないか彼女の夢を否定もしなかったし、「就職した方がいいよ」というアドバイスもしなかった。何を言っても無駄なタイプと認識していたからだ。

その後も、彼女とはぼちぼちと会う機会があった。しかし、彼女は大学卒業後も一向に就職しようとしないまま。さすがに、いつまでもフリーターの彼女が心配になる。

「私、カメラマンのプロになろうと思うの」とキラキラした瞳で話す彼女は、花屋でバイトしていた。

時々、彼女のいる花屋に遊びに行った。彼女は、私の姿をみるなりいつも嬉しそうな笑顔で出迎えてくれた。

それから、何年かした頃のことだった。

彼女は、突然「私、携帯電話を持たない生活をしようと思う」と言い出したのである。このご時世に、携帯を持たないだと?

なお、彼女は携帯を持たない理由に「何にも縛られたくない生活をしたいの」と言っていたが、私の予想ではおそらく携帯電話を払い続けるお金がないのだと直感した。

しかし、さすがに本人にそんなことは言えない。そんなことを言ったら、彼女は傷ついてしまう。いや、友達だから伝えた方がいいのか。それとも。

とりあえず「これから、どうやって遊ぶ約束する?」と聞くと「葉書とか、家の電話とかでやり取りしようよ」と言い出す友達。

えっ、なんでそんな面倒なことに付き合わされないといけないの?

てか、絶対携帯電話の料金が払えないだけだよね?なら、そういえば良くない?「何にも縛られない生き方」っていうけど、家の電話と葉書使うんだよね?それって、付き合わされる私が面倒なだけじゃない?

いろんな考えが脳裏をよぎるものの、とりあえず「ふぅん」とだけ伝えた。

結局、彼女とはそのまま疎遠になった。

そ、そうだよね。
携帯電話じゃないと、やっぱり面倒だよね。うん。

ただ、正直のところ彼女と連絡が取れなくても私が困ることは一切なかった。

なぜなら、私の周囲には他にも友達が何人もいたし、おまけに知らない人ともすぐ仲良くなれる。それどころか、彼女の存在すらすっかり忘れてしまった。果たして、私にとって彼女とは何だったのだろう。

連絡がこなくなり、5年くらい経った頃だろうか。突然、見知らぬ電話番号から携帯に一本の電話が鳴った。

「元気?私、私!」

例の親友の声だった。声を聞いた途端、ようやく彼女のことを思い出した。電話越しの彼女の声は、とても明るかった。

「実は、みくに嬉しい報告があるの」

「彼氏できたの?結婚?」

「ちがう、ちがう!もっと嬉しいことよ!」

「もしかして就職?夢が叶ってカメラマン?」

「ちがう、もっと凄いこと。人生が変わったの」

ここまで聞いたところ、正直嫌な予感しかしなかった。

すぐさま、母に「○○ちゃんから電話かかってきたけど、人生変わったってよ。会う約束しちゃった。どうしよう」と相談した。

母は「母さん待ち合わせ場所までついて行ってあげる。変な商売なら絶対に断りなさい。なんかあれば連絡しなさい。近くにいるから」と言った。

母と待ち合わせ場所で友達を待っていると、かなり遅れて彼女が登場した。彼女が現れるなり、すぐさま母、私ともに絶句した。

その理由は、友達の正気が吸い取られたような風貌に変貌していたからだ。

都会的でオシャレで明るかったのに、中学生か持っていそうな大きすぎるショルダーバッグを重そうに持ち抱え、真っ黒でベタベタの髪。覇気のない目。ノーメイクで肌はボロボロ。

赤、オレンジ、イエローなど、いつも鮮やかなカラーの服に身を包んでいた彼女のファッションはモノトーンにつつまれ、それはそれはまるで葬式だった。

母も私も、彼女を見るなり声を失った。

もしかして宗教にハマってる?どうしたのだろう。

母は私の耳元で「なんかあったら早めに切り上げなさい」とボソッと伝え、私は2人きりになった。

正直、人を見た目で判断してはいけないとは思う。でも、明らかに見た目の時点でやばい。怖い、逃げたい。どうしよう。

「あー、みくはやっぱり変わってなくて安心するぅ」と嬉しそうに言われたが、こちらはあなたが変わりすぎててビビってるんだっつーーの。おい、一体何があったのだ。

彼女とカフェに入るなり、彼女と私はすぐに中学の頃の私たちに戻った。どうやら、相変わらず彼氏もできない上に仕事もしていないらしいが、声は明るかったのでホッとした。笑うツボも変わってなさそうだ。

しかし、問題はここからである。

30〜1時間経過した頃、私は「そういや、報告したいことってなに?」と聞いた。すると、彼女の表情が一瞬にして変わった。それは、今まで見たことのない表情だった。

「そうそう、私○○を始めたの。○○知ってる?私、人生が変わったの」
「○○、知ってるよ……まさか、やってるの?」
「うん。母から紹介されてやることにしたの」

その後、某社の美顔器についての説明が延々と続いた。

美顔器を使ってから肌が変わり人生が変わったと大げさに言うものの、相変わらず無職な上に彼氏も未だにいない。一体、なにが変わったというのだ。

もちろん、私も初彼ができるまで時間がかかっているため、彼氏がいないことを馬鹿にはしていない。

無職、フリーター、リストラも経験済みのため、無職が決してダメとは言わない。

ただ、その状態で人に「人生変わった」と伝えて、誰が説得するのか。こちらからすれば、明らかに葬式帰りの女にしか見えないというのに。

そもそも、人生が本当に変わった人はそのことにすら気づいてないし、たやすく人に言わないでしょ。

正直、彼女が一生懸命恋活してる、または再就職先を探してるなら話を聞こうと思った。しかし、これは聞けば聞くほど私が損する奴だよね?

「あのさ、説明する前にそれいくらなの?」
「うーん、25万、30万?」
「あのさ、私いらないから」

美顔器購入の誘いを断ると、途端に彼女は手のひら返して怒ってきた。

「正直、みくは私の誘いは断らないと思ってた。だって、今までだって断ってきたことないでしょう?みくも断るんだ。

この美顔器を使えば10年後の40過ぎても、肌がずっと綺麗で保てるのに。みく、多分10年後肌がズタボロになって後悔すると思うよ」

この彼女の一言に、私の中のなにかがプツンと切れた。

実は、今まで彼女と喧嘩したことは一度もないし、彼女のいうとおり誘いを断ったこともないし、叱ったこともなければ、怒ったこともない。

そんな私が、気でも狂ったかのように怒ったのである。

「あんた、肌綺麗って?はぁ?

どのツラ下げて言ってる気?

あんた、鏡見てみなさいよ。はっきりいって、辛気臭い顔だしボロボロだよ。

私の顔ちゃんとみた?
あなたより、悪いけど肌綺麗じゃない?

人生変わったっていってるけど、私からすればなにも変わってないんだけど。何が変わったの?詳しく説明してみなよ。ほら。

その前に、美顔器ごときで人生変わるようなつまんない人生を私は送らない。

私は、あんたとは違う。

夢を理由にして、現実からずっと背いて夢ばかり見てきたあんたとは違うの。

40になったらボロボロだって?

はぁ?

女を綺麗にするのはね、美顔器でも化粧でもなく男だよ。

女は恋しなきゃダメ。

あんた、彼氏つくらないと。
そんなんだから、いつまでも処○なのよ
。」

ふと我にかえると、彼女は涙目を浮かべてぼんやりしていた。ハッ、しまった。と思った頃には、すでに後の祭り。

「みくを怒られてしまって……ごめんなさい。そんなつもりじゃなくて、まさかこんなに怒るなんて。

もう、みくには○○の話をするのはやめるね。また、いつもの関係に戻ろう」

彼女の泣きそうな顔を、初めてみた。

その後、彼女とは一切疎遠になった。

中学の頃から、彼女はずっと「みくは結婚式に絶対呼んでくれると思うから、楽しみにしてる」と言っていた。そして、私も誘うつもりだった。そう、あの日までは。

結婚式が過ぎ、未だに彼女の「結婚式楽しみにしてる」の言葉が頭から離れなかった。

同窓会も何度か行ったが、面倒なことがあると困るため一切誘えなかった。あんなに「いつか同窓会したいなぁ」って言ってたのは彼女なのに。

とんな仲のいい関係でも、ふとしたキッカケでこじれることがある。それも、取り返しのつかないほど。

今隣にいる人は、決して当たり前ではない。
もしかしたら、何かのきっかけで壊れるかもしれない。

親しき仲にも礼儀あり。この言葉を決して忘れてはいけないと、肝に銘じたい。

(追伸)

このnote書いた理由はですね。

実は、正直もうすぐ40歳になりまして。

そろそろ彼女から「ズタボロになるよ」と宣告された頃の年になったため

「相変わらず肌は綺麗で、悩みもないです。結婚もしました」と報告しようと思いnote書きました。ほんと、性格悪いな私。

どこかで、元気で真面目に暮らしてることを密かに祈ってますよ。○○さん。

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