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イノベーションとリノベーション

ブランドを好きになってもらうには、イノベーション的発想が必要 

 ブランドを好きになってもらう、ずっと付き合っていたいと思ってもらうには、顧客が無意識に"欲しい"と思っていたことを、満たすことが大事で、「そうそうこれこれ」と、満たしてもらうことで初めて"欲しい"が顕在化するような体験にしていくことが必要だと思っているなどしてますが、
 日々業務でもこの体験をどうやって作り出すのがいいだろう?と考えあぐねる今日この頃です。

でも、それって難しすぎない?

 ですが最近、こういう感動的な体験を生むには「新しいニーズを生み出す」ようなイノベーション的な発想が重視される風潮があるように感じます。
 新しいニーズを生み出すって雲をつかむようなもので、じゃあどうやればいいの?と僕は思ってしまいます。
 VUCA の時代だからこそ「やってみてみなきゃわからないからアジャイルでぐるぐる回そうぜ!」ってこともよく分かるのですが、ただ闇雲にトライ&エラーを繰り返すわけにもいかないし、やっぱりある程度は成功確率を高めておいてトライしたいのが誰もが思う本音だと思います。
 特に何かをやる度に社内のいろんなひとの合意をもらって進めていく階層的かつ合意形成型で物事が進んでいく日本の大きな企業ほどそうだと思うんですよね。

イノベーション的な発想よりリノベーション的な発想をしてみるのはどうだろう?

 だから僕は、感動的な顧客体験を考えるうえでは、こういう考え方もアリなのではないかと思っています。

◼️イノベーション的な難しい考え方
顧客が今まで感じたことのなかった「(まだ見ぬ)欲しい」を満たす

ではなく、

◼️リノベーション的な易しい考え方
顧客がどこかで「自覚したことのある欲しい」を、顧客が思ってもみない人(ブランド・企業)から満たす

という考え方です。

リノベーション的発想のほうが楽チンかも

 こういう考え方をすれば比較的易しく感動的な体験を考えることができるのではと思っています。
 今まで私たちが満たしてきた顧客の欲求の領域を一度忘れて、フラットに生活者の日頃の困りごとを「見つければ」いいわけです。(まだ見ぬ欲求を「つくりだす」わけではないので、雲をつかむような感覚ではなくなりますよね)

 そして「見つける」わけですから、UXリサーチやエスノグラフィなどの観察するリサーチ手法とも相性が良いわけです。

「配達員が荷物を届けてくれたついでに家のゴミを捨ててくれる」というリノベーション的発想

例えば中国のとある企業の圧倒的な顧客体験として、こんな例が挙げられます。


 中国の「ジンドン」はECサービスを提供しており、アリババの天猫に次ぐ第2位に位置しています。
 この「ジンドン」の特徴的なところは、非常に大きな裁量権を配達員(ジンドンの従業員)に与えており、商品を届けに行くと、その帰りにユーザーのために何か1つ役に立つことをするルールがあります。
 例えば、高層マンションの上層階まで荷物を届けるとき、到着5分前に電話をして、

「今から行きますので、もしよかったら帰りにゴミを捨ててきますのでゴミをまとめておいてください」と連絡するそうです。高層マンションの上層階に住む人は、下まで降りてゴミを捨てなければならないのが億劫なので、ジンドンの配達員は荷物を届けた後、その空いた手を使って自主的にゴミ捨てを代行しているそうです。
( 藤井保文;尾原和啓. アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る より抜粋)

 つまり、「ごみを捨てるのがめんどくさい」という既に自覚したことのある欲求を、まさかの思ってもみなかった配達員の人が荷物を届けるついでに満たしてくれるわけです。
 おそらく第三者がゴミを捨ててくれるのは家事代行サービスを利用している時くらいでしょう。

 こんな風に、「配達員が荷物を届けてくれたついでに家のゴミを捨ててくれる」っていうのってめちゃくちゃ嬉しくないですか!?
 これも想像していなかった分、十分に感動的な体験だと思うんです。

テクノロジーの普及がリノベーティブな発想を加速させる

 また、IoTが普及し、企業側が顧客の様々な生活の場面であらゆるデータが取得でき顧客のあらゆる状態を把握することができるようになると、リノベーション的な考え方に基づいた「思いもよらなかった人から満たしてくれる」系の体験を提供することがよりできるようになってくるのではと思っています。

 例えば、コネクティッドカーが普及し、車内の音声が取れるようになると、おもちゃ屋さんをクルマで通り過ぎるときに、子どもがぽろっと口ずさんだクリスマスになったら欲しいおもちゃの名前を覚えておいてくれるかもしれません。
 
 つまり、テクノロジーが進化し、あらゆる接点のデータがとれるようになると、顧客の想像の範疇を大きく超えた人(ブランド・企業)から顧客の"欲しい"を満たすことができ、感動や驚きのある体験を提供できるようになるのでは?ってことです。

0から新しい欲求を生み出すのもカッコいいですけど、世の中に腐るほど散らばっている欲求を生活者がびっくりするかたちで満たすのも悪くない

そんな風に考えるなどしています、というお話でした!

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