見出し画像

Marvel's Midnight Sunsがアメリカ版東京魔人學園だった話、その1(まずはゲームの紹介編)

 日本では「千代田生命でいこう」の空耳でおなじみ、メタリカのEnter Sandmanの女声カバーをBGMにMarvelの様々なヒーローたちが横並びで練り歩くトレーラーのかっこよさに惚れ込んでSteam版のMarvel’s Midnight Sunsを購入したのですが、もう現代の大作ゲームらしいゲームというか、解いても解いても終わらない大ボリュームなので12月はずっとこればっかりやって過ごしました。

 ゲームは主にMarvelのヒーロー達を3人チームに編成して出撃させる戦闘パートと、魔女狩りの地としておなじみセイラムに存在する拠点でヒーロー達の育成や交流を行う待機パートの繰り返しです。

 まず戦闘パートが非常によくできていて、カードゲームのようなデッキを出撃前に構築し、そこから引いた手札を選んでマップ上のユニットを動かしていくターン制のバトルなのですが、例えば

・アイアンマンはワガママな性格を象徴するように「引き直し」(基本毎ターン2回、特定のカードを使えば増やせる)というチーム共用のリソースを消費して自身のカードを強化できる

・キャプテン・アメリカは自身の防御力アップやターゲット集中の効果があるカードが豊富で、まさしくチームの盾になる

・ブレイドは「出血」(いわゆるスリップダメージ)状態の敵ユニットからのライフ吸収などハーフ吸血鬼らしい特性を持つ

・ゴーストライダーは全体的に火力が高いものの、自身のライフがコストの攻撃カードが多い(なので先述のキャップはチームメイトとしての相性がいい)

など、どのユニットも各ヒーローの特色を活かした性能付けになっています。また攻撃カードの他にもノックバックによる追加ダメージ(ザコ敵が多い時はとても有効)や、マップ上に落ちている岩を投げつける、電柱を倒すなどのオブジェクト利用攻撃といったダメージ源があり、敵味方のマップ上の配置を見ながら効果的なものを選んでいく戦術性の高い戦闘システムです。

補助的な効果のカードが強いドクター・ストレンジ。こうしたサポート役を一人選ぶとチームがグッと強くなります。
鉄柱を倒すオブジェクト攻撃。スパイダーマンなんかはオブジェクトをうまく利用すると原作らしい立ち回りができ、操作がとても楽しくなります。

 もう一方の待機パートは、ゲームオリジナルの主人公「ハンター」との関りが深いセイラムの大聖堂をヒーローチーム「ミッドナイト・サンズ」の拠点として歩き回り、デッキの強化や各ヒーローとの交流による好感度向上を行います。
 古くからヨーロッパに建っていたものをアメリカ入植の際に魔術でワープさせたとされる大聖堂は周りの豊かな野山を囲い込んだ庭園とともに、その設定に説得力を持たせる重厚なモデリングが行われています。一方リビングには画面の大きなテレビやゲーム機が置かれ、ニコ・ミノルやマジック=イリアナ・ラスプーティナなど若いメンバーがスマホを注視して過ごしていたり、アイアンマン=トニー・スタークが持ち込んだハイテク機器が岩壁むき出しのエリアに置かれていたりと、現代・未来的な要素が混在したギャップ感も楽しめる、非常に見応えのあるフィールドになっています。

後にうっすら見えるのが大聖堂。あの構内までシームレスに移動できる作りこまれたフィールド。
魔術と科学の融合を体現したビジュアルが見事な大聖堂構内の施設、「錬魔炉」。ここでデッキ構築に使う新たなカードを獲得したりします。

 ここでデッキの構築や各ヒーローのパラメータ上昇にも繋がる好感度稼ぎをしていくのですが、元々ミッドナイト・サンズとして活動していた若者中心のメンバーと、そこに後から参入する事になったアベンジャーズの年長者たちはまず対立状態となり(というかほとんどトニー・スタークが嫌われる格好なのですが)、ハンターが両者をまとめ上げるリーダーへと就任するのがストーリー序盤の山場となります。そんな経緯から全ヒーローがハンターへと全幅の信頼を寄せているため、交流を行うとべた褒めしてくれます。そこそこ自由度の高い外見のメイキングができるので、自身の投影を重視するプレイヤーはめっちゃいい気分になれるかと思われます。
 また大聖堂およびその周りの野山には探索要素があり、この地の歴史に関わるアイテムを収集することで、ハンターの能力を強化したり、オリジナルキャラクター達の背景を深堀りできます(ハンターの母にしてラスボス的存在、リリスが闇堕ちする経緯とか)。「魔女狩りの犠牲者の血が染み込んだ土には魔力があるのでそれを集めろ」などのすげー辛気臭い段階を踏んだりもして、たびたび出撃する先のきらびやかなニューヨークなどとは対照的な雰囲気に浸れます。

いかにもおじさんっぽいSNSの使い方で嫌われるトニー。僕もこういう側の中年なのでつらい。
とにかくハンパない好意を主人公のハンターへと向けてくれるヒーロー達。
魔女狩りにあった人たちの骨とか拾えます。陰鬱!

 しかしこのゲーム、冒頭にも書いた通りとても現代らしい大作ゲームといった印象なのですが、どこか遠い記憶に由来するデジャヴがある……ノックバックを駆使して効率よく敵を減らす戦闘……主人公をべた褒めしてくれるチームメイト……魔女狩りのような歴史的事件がオリジナルキャラの造形やストーリーに関係する伝奇要素……東京魔人學園じゃん!

 という訳で25年近く前に初代PSで発売されカルト的人気を博した、個人的にも大変思い入れの深いゲーム「東京魔人學園剣風帖」を連想したところで、より個人的な感想を書いていく次回の記事に続きたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?