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Godardの贈り物       Elie Faure Histoire de l'art

大学生の頃にGodardの「勝手にしやがれ」と「気狂いピエロ」がリバイバルで有楽町の映画館(名前は失念してしまったが、近くにパチンコ屋があったような)で上映されていた。何となくフランスにかぶれかけていた当時の自分にとってGodardは名前しか知らなかったけれど、であるが故にこの企画は是非とも押さえておかなくてはならない作品として劇場に足を運んだ。

「勝手にしやがれ」はすでに名前とある程度の情報はあったが「気狂いピエロ」は全く知らなかったし、その題名からもあまり期待はせずにスクリーンに向かっていた。しかし、冒頭のアルファベットの羅列から始まるショットですでに目が釘付けになり、当時興味を持ち始めていたランボーやボードレールの詩が引用されたり、その鮮やかな風景を切り取ったショットなど鮮烈な印象を与えてくれ、結果この作品はそれ以降20回は見ているはずだ。

そのスノビュシュな青年にとって忘れられないシーンが冒頭浴槽でジャンポールベルモントが読む本の一説であった。             「ベラスケスは50歳を越えると、もはや決して対象を明確な輪郭線で描くことはなかった。彼は空気や黄昏とともに対象のまわりを彷徨い、背景の透明感と影のなかに色調のきらめきを不意にとらえ、この眼には見えないきらめきを核として静かな交響曲を奏でた。」(エリフォール近代美術史)   何度目かにこの名前を覚えて、著作を探したが見つからなかったが、後年国書観光会より「美術史」全7巻として上梓され、幸いにも手にすることができた。

Godardからは多くの贈り物をもらった。

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