みるきーうぇいの『ドンガラガッシャンバーン』のプロデューサーが、実は亀田誠治だった話

ちょうど3年前。

当時のベース、しょうこうくんが

みるきーうぇいを脱退した。


彼は私が十代のときに知り合ったベーシストで、初期みるきーうぇいを支えてくれた大事な存在だ。

しかし、どうにも行き違いが増え、私は私で彼にイライラをぶつけてしまうことも増えて、話し合いを重ねた結果、脱退という結論に。

しょうこうありがとうな…

メンバーは脱退したが、私は一人で「みるきーうぇい」を続けていくと決意表明。

私は最強のベーシストを探す旅に出たのである…!ゴゴゴゴ…

大阪時代、沢山のサポートベーシストにお世話になった。主にみーくん、ふーじー、よしや、ノリさん。

それぞれに味があって面白かったしそれぞれ良いベーシストで楽しかった。

味をしめた私は、さらに色んなベーシストと合わせたい!!まだまだ色んなミュージシャンに出会いたい!と強く感じるようになった。

そこで、みるきーうぇいは

いろんな男を乗り回して強くなる、音楽的ビッチという形を取ろうと思った。

いろんな男に磨かれていくビッチのように…特定のメンバーだけでなく、いろんなサポートミュージシャンを迎えることで、自分の音楽を研磨したいと思ったのだ。

そして今のレーベルに所属することになったタイミングで私は、大阪から上京した。

東京に来たので、早速レコーディングしよう!という話になり。私の音楽をより広げてくれるアレンジャーと作業することになった。

私は我ながら素晴らしい歌詞とメロのセンスだけど(自分で言う)アレンジに関しては、私より更に得意な人がいるだろう、そういう人と作業がしたいとは前々から思っていたのだ。

以前からライブでよくやっていた「ドンガラガッシャンバーン」をアルバムのリード曲にすることが決まり。

レーベルのスタッフさんたちと、アレンジャー誰が良いだろうねー…という話になったとき。

私はノリで言った。

「亀田誠治さんとか?」

ほぼ全人類が知ってると思うけど説明しておこう。亀田誠治さんとは日本を代表するベーシスト、プロデューサーの一人であり、椎名林檎さんに師匠と慕われる存在だ。椎名林檎さんの楽曲アレンジを手掛け、ヒットを連発。椎名林檎さんと「東京事変」というバンドを組み、一度活動を終了したが、今年1月1日に奇跡の復活。



すなわち、神である。

神が神であることや世間の高い評価は置いといても。私は神の美しいベースラインが、神の手掛けた曲たちが、神のアーティストとしての存在感が、大好きだ。東京事変のコピバンをしたこともある。(グダグダだったけど)

その亀田誠治さんがアレンジャーがいいなー、なんて、ダメ元で名前を出してみたが、事務所のボスは言った。

「そしたら、亀田さんに聞いてみるね。」

…え!?聞いてみるの!?聞けるんや!?

なんでもボスは他のアーティストのお仕事でご一緒していたようで交流があるそうだ。なので聞けるらしい。ボスすげーな…。

そして後日、スタッフと打ち合わせ中。元カレの愚痴とか、元カレの悪口とかを談笑してたときだったと思う。スタッフさんが、今日のランチを食べるお店が決まった、みたいなテンションで言った。

「あ、香織ちゃん。亀田さん、いけました」

「…ん?何が?」

「亀田さんプロデュース、いけました」

…いけたんや!?

てかノリ軽いな!?

夢が叶うときって意外とアッサリしているみたいだ。

そしてあれよあれよと言う間に、亀田さんとの顔合わせ。待ち合わせ場所を間違えてギリギリについた。まじで危なかった。「亀田誠治との打ち合わせに遅刻していった女」みたいな最悪の第一印象まじでいらねえ。

走りすぎて汗だくのボロボロで亀田さんに対面した。

亀田さんは、なんだか大きかった。

もちろん、身体が、とかじゃなくて

とてもおおらかで、丁寧で、マウントを取っても誰も怒らない経歴なのに、マウントを取ろうという素振りは一切なかった。

軽く世間話をした後、こんな小娘に、亀田さんは言った。

「デモ聴きました!良かったです、歌詞が面白い!」

私はそのとき

うおおおおおおおおおおおおと思いました。

つまり、推しの前で語彙力が無くなるオタクとなりました。

だってよ、亀田様が私の歌聴いたってよ。良かったってよ。歌詞が面白いってよ。推しが目の前で私に向かって喋ってるんだよ…語彙力なくなるわそんなん…

語彙力喪失中の私に亀田さんは言った。

「歌詞はいじらない方が良いよね。良い歌詞だし…。鍵盤もいらないかなと思って。」

神対応やんけ…言わんでも私の言いたいこと全部伝わってるやん…

その時点でもう、わりと安心した私は

「なんか、バーン!って感じにしたいんですよ!」というアホそうな意見を放り投げる。うんうんそうだよね。と聴いてくれる亀田さん。尊い…

一通り曲の意見を交換して、最後は握手をして亀田さんと別れた。推しと握手…。

握手しながら「ファンです。」と言った。今から一緒に曲作るのにどうかと思うけどファンだし。仕方ない。

そして後日、亀田さんから、結構すぐアレンジ案が送られてきた。お仕事が早い。

私は緊張しながらそのアレンジデータファイルを開いた。確か、電車に乗っていて、ヘッドフォンでそのデータを聴いた。


私は電車の中で泣いた。


自分の曲が彩られている。歌詞もメロと変えないでいてくれて、私が送ったギターパートやギターソロもそのまま使ってくれている。でも確実に曲の幅が広がっている。

凄いと思った。職人技だと思ったし、なにより音楽への愛を感じた。

データと一緒に、亀田さんからのメッセージも添えられていた。

「香織さんへ。ドンガラガッシャンバーンのデモです。大好きです。」

大好きです。

その言葉が、このアレンジデモから伝わってきた。

凄い人に凄いと思ってもらいたくて音楽をしているわけではない。

でも、亀田さんが大好きですと言ってくれたその言葉に私は、今までの音楽人生が報われたと思った。

そしてまた顔合わせしてスタジオでデモを聴きあって、意見を交換し合い、私の要望も柔軟に聞き入れてくれた。(なんかノイズ入れたい、という、私のアホそうな要望を…)

「このアレンジめっちゃ好きです、ポップやけど、凛としてて。」と私が言うと、

亀田さんは凄く真っ直ぐな優しい目で

これを凛としてる、と言える、君の感性は本当に素晴らしい。」

と言った。言ってくれた。

私は、自分の芯を褒められるという感覚を、初めて経験した気がした。

そしてレコーディング当日。

私は当初、後からギターを重ねる予定だったけど、当日の朝、亀田さんから連絡が。

「皆で、せーので録音しちゃおうと思うんだけどどうだろう」

えっ…推しと一緒に音鳴らせるの…マジで…。

緊張はあったけど私は、是非!と即答した。

その日のレコーディングメンバーは

ベースは亀田誠治さん、リードギターは西川進さん、ドラムは伊藤大地さん。日本の音楽シーンを作ってきた素晴らしいミュージシャンだらけ。

勿論、緊張するけど、そんな人たちと音を鳴らすのは私にとって計り知れない経験値になると思った。てか、やっぱ推しと音鳴らしたいし…

そして、スタジオで、せーのでこの4人で一緒に音を鳴らして、レコーディングした。

あの高揚感と、全能感と、何にも変え難い幸せを私は忘れないと思う。音楽の喜びを丸ごと録音できたと思う。

ドンガラガッシャンバーン。弾けて飛んで光ってなくなれ。

その歌詞を体現したような感覚が身体を駆け巡っていた。大御所との音合わせ。

緊張したけど、それ以上に私は、たまらなく、楽しかった。

歌レックも亀田さんが沢山褒めてくれるので良い歌が録れた。亀田さんマジのせ上手…。

あとギターソロは私が弾きたいって言ったのですが、それもあっさり承諾してくれて嬉しかったな。西川進さんを差し置いてリードギター弾きたがる私、何…。西川さんも伊藤さんも素晴らしいプレイヤーだった。

すべて録り終えたミックスのとき。亀田さんは言った。

「手応えを感じるね。新しい感じがする。でもこの新しい感じは香織さんが出してくれてる。香織さんのギターのラフな感じが、この曲の新しさを出してると思う。」

ミックスを終えて、最後、亀田さんとまた握手した。

亀田さんは笑顔で言った。

「良いことがありますように。」

なんだか本当に良いことが起きる気がして、やっぱり亀田さんは私の推しだと思ったし

そして、そのレコーディングのとき

亀田さんはきっと、私の素敵なバンドメンバーだった。

ベースが抜けたときは悲しかったし、これからどうしようかと思っていたけど。

最強のベーシストを探していたら、まさかの亀田誠治さんに辿り着いた。

亀田さんという素晴らしいミュージシャンに出会えた。

当時のベースのしょうこうも、亀田さんは大好きなベーシストだから。知ったら「マジで!?!?あの神が!?」って言うだろな。笑

ほんとに人生、何が起こるか分からない。

どん底から這い上がれないとき、このnoteをたまに思い出してくれたら嬉しいです。

病んだだけでは終わらない、アッパー系メンヘラの話。

どん底でも辞めずに続けてたら、推しと音を鳴らすことが出来た女の話。


それでは聴いてください。

ドンガラガッシャンバーン!!!


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記念写真!

◇「ドンガラガッシャンバーン」サブスクはこちら

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