note用ミリオン1巻mockup

絶版になった単行本の続きを漫画家個人で自家製出版してみます

11/25のコミティアで、自著「ミリオンドール」の単行本を自分で企画・編集して出版することになりました。

一度商業媒体に掲載し、出版社から本の出た作品を、絶版をきっかけに自分でもう一度出版することになった経緯をまとめておきたいと思い、ここに記事をアップします。(特に後ろ向きな理由やネガな告発はないのでそういうものを期待されてる方には面白いものはないかも)

きっかけ

この本の再出版に関しては、既に別の出版社の方からお声がけいただいていて、以前出版頂いていたアーススター社ではすでに断裁処理されていること(絶版扱い)を確認頂いたり、今後の企画や展開のお話しも頂いていたのですが、出版を取り巻く色々な情勢の中、最終的に企画が通らずにお話が浮いてしまいました。
このことに関しては、結論として私の作家としての力不足だと思っているので、特に不満などはなかったですし、お話をいただいて駄目になってしまうことはフリーランスにはよくあることなので、より今後の仕事を頑張ろうと奮起していました。

そんな中、別著作「ヲタ夫婦 2巻」の出版が決まり、そちらのプロモーションに手を尽くしているなかで、ミリオンドールの本も欲しいので旧単行本をマーケットプレイスで買ったよという読者の方の声をいただくことが何回かありました。
ミリオンドールは今現在、ミリオンドールcitybeatという続編の連載を展開しているのですが、前作である「ミリオンドール」をWEB上で公開しているにも関わらず、前の話も続きの本はいつ出るの?という声や、citybeatを読むと前の作品も紙で読みたいという声を多くいただくようになりました。

一度紙で出版された本の読者さんは、例えWEBですべてが無料で読めるとしても、紙の本を楽しみに待っているということに気づき、WEB媒体を主戦場にしている作家である私の中では目から鱗な気持ちでいっぱいでした。
古本屋やマーケットプレイスでわざわざ探して買ってくれるほどコンテンツに還元したいという気持ちを持ってくれているのに、そういった読者の方たちの善意も投資も、絶版となってしまった以上私に還元されることはありません。

「なんだ同人誌か」と言われないために

漫画家が今、紙で単行本を出したいと思った時に、「商業出版社から声がかかるのを待つ」「同人誌などで自費出版する」という二択しか現在カードがありません。出版社に持ち込んだりお声がけを待つとなると、それこそ年単位で時間をかけて取り組まなければいけません。
なので、自分の中ではミリオンドールを同人誌として作り直そうと思い、以前声をかけて頂いた編集さんにも相談して個人で編集を進めていましたが、マネージャーや夫から、同人誌でもいいけどもう少し読者の方に喜んでもらえるような本気感を出したいよね、とアドバイスをいただき、一緒に尽力していただいた結果、ISBN・書籍JANコードの取得、WEB媒体で掲載が難しくなった作中での歌詞の掲載(JASRAC許諾)をすることができ、同人誌でありながら書店の発注やAmazonでの直販ができるようになりました。

また、編集作業もInDesignで行い、奥付や目次のデザインも商業出版物と同じクオリティを目指し、表紙のロゴデザインをデザイナーさんに発注するなど、本気感が伝わる本づくりを目指しました。

このへんの事務作業は、漫画家一人ですべてをこなすにはかなりの気力と時間が必要な作業でしたが、協力してくれる人達が私の負担を一緒に解消してくれて、とても感謝しています。

WEBアプリ出身の漫画家の苦境

私はWEBのマンガアプリで連載デビューして本を出し、それからWEB媒体を中心に作品を発表して書籍化を経験してきたいわゆる「WEB漫画家(紙もちょっとだけやってる)」です。
twitterなど作家から直接SNSでバズらせて完全に自前でマンガを書籍化するような強い作家さんも沢山いますが、私の周りのマンガアプリの同期や、同じポジションでがんばっている漫画家さんの状況を見ると、紙の雑誌でデビューした作家さんと違って、マンガアプリの企業は出版機能をもっていないので、1巻が出せるかの保証もないし、1巻を出せても出版社の点数合わせになってしまい、すぐに絶版するということも良く聞きますし、私も実際にそうでした。
そういう状況なので、出版社との仕事の仕方がわからないWEB漫画家さんや、紙の本を出したいけど出せないマンガアプリの漫画家さんがたくさんいることを、肌身にしみて感じています。私もその一人です。

絶版漫画や自費出版のイメージが変わるといいな

私は周りの人と協力して、こういう形で自分の漫画を再出版してみることで、漫画家が自分の作品を自分で盛り上げるためにこういう形もあるよと世の中に問いかけてみて、挑戦しようと考えました。

このミリオンドールの新単行本を、販売するための方法や、色々な企画を今まさに仕込んでいる最中ですが、本当にこれでよかったのか、売り上げだけで印刷代を補填して協力者の方にちゃんと還元できる収支がたつのか(勿論赤字になったら自腹を切って払います)、キャッシュフローがまだ不鮮明という部分での不安もありますが、まずはこういう活動をしてるということを、1巻で沢山の人に知ってもらえたらと思ってこの記事をまとめました。
1巻だけですべての経費をペイできないとは思うので、2巻、3巻と続く展開の中で、気を緩めずに、まずは自分のこだわりのままに、作品を紙の本にして読者のかたに届けることに集中したいと思います。

同人誌と同じようにコミティア(商業誌も申請すればOK)で販売するけど、それだけでなく読者の方に喜んでもらえる初回特典や、アイドルフェスを企画主催して本を販売するプランを現在進行させています。

同人誌として、ISBNを取得した書籍として、そしてアイドル作品ならではの販路を開拓して、より楽しい企画を沢山考えていきたいと思います。

ミリオンドールの本は自分で出すけど、出版社とも仕事はしていく

今回はタイミングや巡りあわせがあって、自分で本を出して戦略的に販売することを考えましたが、私はWEB媒体の編集部だけでなく、現在も紙の出版社とは仕事をしているので、出版社に依存せず独自路線をとる漫画家さんとは少し毛色が違うのかもしれません。
ミリオンドールも今後お声がかかったら出版社によって展開することもあるかもしれませんが、今はこの状況を前向きに楽しみたいと思っています。

私のこの挑戦がうまくいくのかどうか、これからもnoteに続報をアップしていきたいと思っています。引き続き見守っててくださると嬉しいです。

通販はここから
https://indigoproducts.booth.pm/items/1072545

参考にした資料

最後に、この取り組みのために、先人の方がまとめてくれた色々なネット上の資料を掲載しておきます。

ミリオンドールを楽しんでくれた方、これから応援したい方からの投げ銭支援を承っております。いただいたサポートは全て制作費に使用させていただきます。