失われた薄い名作を求めて「削ぎ落された文体が光る悪徳警察小説『夜の終る時』」
先日、米澤穂信さんが「初の警察小説」(版元曰くだが)を発表された。それを知って、本来第2回には里見弴の本でも紹介しようかと思っていたのだが、急遽、同じ「警察小説」の括りで、結城昌治の『夜の終る時』はどうかな、と思った。
というのも、本書は、国内ミステリ史においてきわめて淡泊でクールな足跡を残す結城昌治の「初の警察小説」だったからだ。警察小説というジャンルは、そもそも私立探偵小説のリアリティを補足するために生まれたという経緯がある。エド・マクベインの87分署シリーズなどが